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誘拐から  作者: 高束奏多
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第二章 少年期解決編 ⑯

 「_というわけで、公開捜査に切り替えようというのが上の方針です。」

「つまり、ネルが誘拐されて、そのことが全国民に知れ渡るってことですよね。_犯人は捕まったんですよね。だったら、ちゃんと捜査して自白させてくださいよ。ネルを晒し者みたいなことにするのは反対です。」

沖田陸は声を荒らげた。

被害者家族の意思の尊重も避けては通れない。しかし、上の指示通り彼に納得してもらえるよう説得しなければならない。沖田宏子といえば、まだショックから立ち直れていないらしく、どこ吹く風だ。

「現状、捜査は行き詰っておりまして、先ほども申しました通り被疑者はすでに捕まっています。そうなると、今度は監禁の状態によっては脱水症状や最悪の場合、餓死ということも考えられます。公開して、少しでも多くの情報を集めて、一刻も早い救出をしなくてはなりません。どうか娘さんのために決断してください。」

それでも、まだ思案している。

そこで碓井が口をはさんだ。

 「実際、公開捜査によって事件解決した例もあります。例えば、埼玉県でも似たような事件が以前起きたんですか、被害者は報道によって脱出の意欲が湧いたと証言しています。この事件は無事犯人逮捕、人質が救出されています。」

「市民の意欲も高まりますし、一定の効果はあります。」

そこで、沖田陸はしぶしぶという様子で顔を上げてからうなずいた。どの言葉が琴線に触れたのかは分からないが、とりあえず承諾を得ることはできた。

「どうか、ネルをよろしくお願いします。あと、救出されたら、真っ先に私に会わせてください。」

「もちろんです。それだけはお約束します。」

 深々としたお辞儀に対し、我々は敬礼で返した。


 「丹羽警視。沖田陸より承諾得られました。」

 沖田家を出た後、まず連絡を入れた。「分かった」とそれだけで電話は切られてしまったが、丹羽警視はここからが本番だ。記者クラブとの報道協定の解除、そして、引き続き情報提供。今回は質問攻めどころではなく、いろいろ責められるだろう。

 「沖田陸の態度変でしたね。というか沖田宏子も。」 

 電話を切ったタイミングで、碓井が話しかけてきた。

 「何が変だったんだ。」

 「正直、よく分かりませんけど、沖田陸は真剣な感じがして、沖田宏子は心ここにあらずという感じでした。」

 「俺もそう思ったが、普通じゃないか。」

 「そうなんですけど、なんか」

 碓井は煮え切らないままついには答えることはなかった。

 もう二時間もすれば、記者クラブとの会見が始まるだろう。おそらくニュースになるのは明朝からだ。

 沖田陸に対し、あんな風に言ったものの、本当にこれで解決へと動くのだろうか。

 不安を抱えながら署へ車を走らせた。


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