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誘拐から  作者: 高束奏多
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第二章 少年期解決編 ⑫

「どこか他の違う場所に監禁しているとかは。」

「もちろんその可能性の方が高いとは考えています。現在はその方向で鋭意捜査中です。」

いろいろと含みがある言い方だ、つまり、警察としては宇都宮先生が他の場所にかくまっていると考えているが、碓井刑事は違うらしい。

やはり食えない。

「宇都宮先生は何と言っているのですか。」

「「知らない。」の一点張りです。」

まぁそりゃそうだろう。

「ただね、宇都宮容疑者、ずっとおかしなことを言っているんですよ。」

「おかしなこと?」

「はい。「自分は誘拐していない。沖田ネルが誘拐されるところを目撃してしまったから、つい出来心で犯人のふりをして、身代金を要求してしまった。だから、居場所も何も知らない」と。もちろん、警察としては言い逃れの嘘を言っていると思っていますけどね。」

まただ。今、「警察としては」という不自然な主語を置いた。つまり、碓井刑事はそうは思っていない。宇都宮先生の言う真犯人別に存在説を信じているのだ。ふと視線をやると、碓井刑事は僕を見てニヤついたような気がした。

「じゃあ、どうして、宇都宮先生が犯人ということになっているのですか。」

「きっかけは、身代金要求の電話です。声紋鑑定というものはご存知ですか。最近はドラマなどでも当たり前になっているのですが。」

 うなずいた。

 「それと一致したので。初めて、佐藤先生と会った日、偶然、宇都宮容疑者がお茶を運んでくれたでしょ。その時の音声と鑑定した結果、同一人物の者でした。それで連行したあと、家宅捜査をするとね、いろいろわかってきました。宇都宮先生が小児性愛者ってご存知でしたか。」

 「ロリコンですか。」

 「はい、正確には小児性愛ペドフィリアという精神医学での言葉で、いろいろ違いはあるみたいですけど、ここでは、そういう認識でかまいません。押収したパソコンからも、そういう嗜好のものがでてきて、決定的だったのはその関連フォルダの中に、沖田ネルの画像が何枚も保存されていたんですよ。物証も動機も揃っているので、その方針で捜査することが決定しました。もっとも電話に関してはいろいろ不自然なところも多いのですが。」

 そう言って、電話の内容を簡単に教えてくれた。

 宇都宮先生がロリコンだなんて知らなかった。しかし、驚くのはそこではい。なぜ、声紋鑑定をしたのかだ。まさか、あの時点でお茶を持ってきた宇都宮先生を疑っていたはずがない。あの場にいた三人、校長先生、教頭先生、僕とを鑑定するのが目的だったのだ。その時点で、少なくとも三人のうち誰かは疑われていた。なぜだ。疑われるようなことは_それ以前にあの時は初対面。まただ、碓井刑事は僕を見てニヤついている気がした。疑われている?さっき言っていた共犯ということか。まずい、もし僕が家宅捜査をされようものなら一発だ。

「どうかされましたか」

「いえ、宇都宮先生がロリ_ペドフィリアですか、て知らなくて。沖田さんの画像が出てきたということは、そういう対象として見ていたということですかね。」

精一杯の普通を装った返事。この人はどこまで本気なのだろう。

「宇都宮容疑者が自宅以外の場所で匿っていそうなところなどに心当たりはありませんか。」

「いえ、ありません。実際、仕事帰りに呑んだことがあるくらいのものでしたので、家に行ったこともありませんし、プライベートなことまで全く。」

「そうですか。」

「お力になれず、すみません。」

「いえ、ありがとうございました。では、これで終わりにします。また、思い出したことなど何でも構いませんので、何かありましたら、電話ください。」

「はい。」

「では、部屋の前に立っている刑事の案内に従ってください。」

挨拶も適当に済ませ部屋を出た。

先ほど、この部屋へ通した刑事、名前は聞いていないから知らないが、書類を持って近づいてきた。名簿なのだろう。次は瀬田先生をお願いします。それだけ言うと、もう用はなくなったようで、定位置なのか三つの部屋の真ん中あたりのドア向かい壁に背を持たれかけた。

時間にして二十分ほど。

情報としてはいろいろなことが分かった。

警察の目的、今回の聴取の焦点は、沖田さんの救出だ。

犯人の確保より、人質救出の方が優先度は高い。沖田さんが発見されない限り、捜査はいつまでも終わらないだろう。

すなわち、結局のところ、宇都宮先生が逮捕されたからといって、それで終わるわけではない。そのことを当たり前ながらに痛感した。


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