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誘拐から  作者: 高束奏多
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第二章 少年期解決編 ⑩

 九時三十分少し前。

まだまだ、この時間が続く。

 以前、なんとなく検索したことがあるのだが、警察庁の統計によれば刑法犯罪は年間九十九万件認知されている。約百万件、日本の人口は一億三千万人。単純計算で百三十人に一人。学校に例えてみても一学年に一人程度は刑法犯罪者がいるということになる。それでも、

おそらく大概の人はそうだと思う。

身近な人間で刑法犯罪者を知っているだろうか。

実際に、警察の人と話したことがあるだろうか。

ましてや、聴取あるいは取調べという、およそドラマの中でしか見たことのないようなシチュエーションを目前にして、日常でいられるはずがない。

彼ら先生たちは自分たちが悪くないということは知っている。

それでも、緊張せずにはいられない。

十時十分前。

もうそろそろいつ来てもおかしくない時刻だ。

時計を見るのは何度目だろうか。

足音が聞こえた気がした。

普段なら聞こえることはないだろう。今日ほど静かでない限り。

気のせいではなく、歩く音が聞こえる。

今度は先生全員がその音を聞いているに違いない。

宇都宮先生は警察に何を、どれだけ、どんな風に、話したのだろうか。ひょっとして、僕のやったことを知っているのだろうか。そして、話したのか。

僕が誘拐犯であるはずなのに。何も分からない。分からないということがこれだけ怖いとは。

 足音はすぐそこで止まり、ドアが叩かれた。

 祭屋刑事、その後ろから碓井刑事。昨日と違うのはその後ろに何人もの刑事がいるということ。

 二人の刑事は宇都宮先生の机の場所を尋ねたあと、手当たり次第ダンボールに詰めていった。

 祭屋刑事を中心とした挨拶は儀礼的だった。急いているように見える。

 その理由は、犯人逮捕にもかかわらず、人質が発見されていないからだろう。

 この小学校には主に保護者が来た時のために、相談室という部屋が一階保健室横に三部屋設えてある。

 既に、その相談室が三部屋とも借りられているらしい。そこで、順番に聴取していくようだ。

 この様子からして、まだ僕にはたどり着いていないような気がする。宇都宮先生は話していないのか、僕については知らないのか。それとも、無実なのか。

 三人の先生が呼び出されていった。なんだか学生のころの面接を思い出させる。初めの三人には選ばれなかった。

 まとめてやらないのは、同調や沈黙を防ぐためだろう。個人でやることで、その人しか知らないことも聞き出せうるし、秘密も保護される。

 残った先生と刑事が一人。知らない刑事だった。

 さっきまでの、お通夜のような気まずい空気がいつ終わるかと切望していたけど、この空気はさっき以上だ。

 さっきまではスマートフォンをいじっていた先生の大半は、今はじっと座って待っているだけ。

 年配の方が落ち着いたり、逆にゆとり世代の若者(かくいう僕もだが)の方が肝が据わっていたり、ということはなく、まぁそこは普通に個人の問題だった。


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