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誘拐から  作者: 高束奏多
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第二章 少年期解決編 ⑦

「とりあえず、物証が欲しいんで、さっきの音声も一緒に送信しておきますね。一応思ったことをあとでお話しします。」

 「犯人が分かったんですか。誰ですか。ネルは無事なんですか。」

 強い言葉に、沖田陸は抑えていた感情を顕にした。

 「まだ、証拠も何もないですし、こんなただの予想をお話しするわけにはいきませんので。」

 推理などと大層な言葉を使わず、予想と控えめなのは評価できるが、それでも被害者家族の前で言うことではない。

 「引き続き、鋭意捜査致しますので。」

 そう言うしかなかった。

沖田ネルについてや人間関係など、もう少し聞きたいことはあったのだが、そういう空気ではなくなってしまった。電話と逆探知等機材の設置も終わっているようだ。刑事二名を置いて、一端、沖田家を後にすることにした。


 ため息。

 まぁ、終わったことだしいいか。それより、

 「あれだけ言ったんだし、聞かせてくれるな。」

 「はい。さっきも言いましたように予想でしかないので、鑑定待ちですけど。」

 そう言いながら、車を走らせた。来た道のりを引き返しているように見える。

 「先輩はお子さんいましたよね。」

 「ああ。上が小二で下が年中だが、それが何か関係あるのか。」

 「なら、連絡帳って普通に馴染みのある物ですか。」

 「ああ。」

 そういえば、小学校でも佐藤先生に連絡帳について聞いていたな。その時は何とも思わなかったが。

 「俺は連絡帳って知りませんでした。もちろん存在くらいは知っていましたけど、欠席とかそういうのも電話ではなく、連絡帳で伝えるという慣習的なことについては全く。まぁ、俺が無知なだけかもしれないですけど。あと、電話の内容覚えていますか。犯人は二回目の電話で学校に連絡帳を届けるように指示していました。それで思ったんです。犯人は子を持つ親あるいは、学校関係者ではないかと。」

 着眼点というか、そこに疑問を持つのは分からなくもないが、それだけでは弱すぎるし、全く絞りきれない。

 「それともう一つ。一回目の電話で犯人は警察にも学校にも知らせるなとも言っていました。おそらく、子供がいなくなったら普通まず、学校に電話を掛けると思うんです。子供が帰宅したかどうかを確かめるために。でも、電話で誘拐したと言ったら、わざわざ学校にも掛ける必要はもうなくなるじゃないですか。普通、警察に知らせるなと言うだけ済むんです。」

 何を言いたいかは分かっていた。どこへ向かっているのかもわかった。もう、すぐそこだ。

 「誰を疑っている。佐藤か。」

 「まぁ、それが最も可能性があるんじゃないですかね。担任だから、接点もありますし。俺の直感なんですけど_」

 「直感って」

 つい話を遮ってしまった。さっきから予想だとか直感だとか。いや、刑事は足だとか、証拠無くしてなどと固いことを言うつもりはないけれど。

 「もちろん、直感だけでどうにかしようなどとは思っていません。だから、今鑑定してもらっていますし、物証がということくらいは心得ています。」

 「それで、直感ではどう思ったんだ。佐藤のことだろ」

 「はい。動揺していました。」

 「動揺。学校を出た後、確か、緊張しすぎていたみたいなこと言っていたな。それのことか。」

 「はい。ですが、動揺とか緊張とかってよりもっと怯えてる_そういうような感じがしました。」

 「怯えているか。それは、犯人だからこその、捕まるかもしれないとかそういう類のものか。」

 「はい。あの人は弱いんです。気丈なように、普通に振る舞っていましたけど、本質的に根っからの弱者です。いじめられたとしても、抵抗できないタイプですね。だからこそその反動で吹っ切れた時、何しでかすかわからない、一番厄介な奴です。ニュースとかではよくある「近所では評判の」って言われるようなあの手のやつです。もし、同じクラスだったとしても仲良くはなれなかったと思います。」

 「お前の場合、そういうのは関係なく仲良くなれなかったんじゃないか。大概のやつと。」

 「大概とってだけです。これでも友達の一人や二人はいましたので。」

 「一人だけだったのか」

 「勝手に言葉の裏を読まないでください。」

 こいつの毒舌や偏見。これらの性格的部分が予想や直感というのを形づくっているのだろう。それが良いのか悪いのはともかくとして。

 着信音

 科警研から。

 「一致しました_?」

 なぜか、一致したにもかかわらず、自信のないか細い声。そして、

 「なぜ、疑問形。一致したんじゃないのか。」

 「はい。しましたけど、」

 全く腑に落ちていない様子の碓井。いらだたしくなって、碓井のスマートフォンを取り上げた。

 科警研からの話を聞いたが、俺もよく分からなかった。

 というか、誰だ。

まぁ行ったらわかることだ。

 「碓井、行くぞ」

 「令状は?思いつきで着てしまったんですけど_。」

 「そんなもん緊急逮捕でいい。声紋が一致したなら、逮捕状くらい後からいくらでも請求できる。」

 力強く車のドアを閉めた。

 碓井もそれに続いた。


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