第二章 少年期解決編 ④
非番だった土曜日、何もしていないというのが本当なら、その時点での疑いは強くなかった。事件と明確に認知し、動いたのは昨日の日曜日の午後以降。まだ、半日も経過していない。
ほとんど進展していないといっても、本当に分かっていないのか。それとも、掴んでいることを隠しながら話していたのか。確かに、捜査はまだ、始まったところなのかもしれないが、時間・労力と結果は必ずしも比例するとは限らない。ミスをしていれば、昨日の今日でということもなくはない。
「ほかに不審に思っていることや何か聞きたいことはありますか。些細なことでも構いませんので。」
僕は教頭先生、校長先生の順に顔を見て、もう一度教頭先生の顔を見た。
二人とも特にはなかったらしい。
「佐藤先生も何か思い出したことがありましたら」
そう言って、名刺を三枚机の上に置いた。
急に名前を呼ばれたので、びっくりしてしまった。
気まずくなって、その名刺を凝視するも、シンプルすぎる名刺はもう見るところがなくなってしまった。
「それでは、沖田家に向かいます。お忙しい中ありがとうございました。また、話を伺いに来ると思いますのでその時は」
そう言って、きれいなお辞儀をすると、送ることもできないまま去って行った。
三人とも立ち上がって、お辞儀をするので精いっぱいだった。
ドアが閉まると、すぐに腰を下ろした。身体だけでなく空気までもが弛緩していくような気がした。
一口だけ飲んだ、お茶はそのほとんどを残したまま氷だけが消えていた。
あれだけ話して、まだ十時にもなっていない。
次に立ちあがるタイミングを失ってしまった。
しばらくの沈黙の後、
「とりあえず、職員会議だ。三時半、五限終わり生徒を帰し次第始める。」
校長先生の言葉に教頭先生は力なくうなずいた。その顔は明らかに嫌そうだった。こんな時、話の進行はいつも教頭先生が行っている。校長先生はといえば、話がほとんど終着したころに、我が物顔でゴーサインを出すのみだ。自分のせいで、だなんてとてもではないが言えないが、元凶だけれど、さすがに申し訳なく思う自分がいた。
ストレスと疲労で立場が分からなくなりそうだ。
「教頭先生、もちろん悪いのは誘拐犯ですが、僕にも大きな落ち度があったはずです。何でも手伝わせてください。」
そう大きな声ではっきりと伝えた。
そして、重たくなった腰を上げた。




