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誘拐から  作者: 高束奏多
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第二章 少年期解決編 ③

***


 「それって僕ですか。」

 心当たりに思わず口を挟んでしまった。警察の訪問日時を聞いたころから、予想はしていたがやっぱり見られていたらしい。

 「あっ、話を止めてしまってすみません。」

 「いえっ、それについて聞こうと思っていたので、気になさらず。」

そして、祭屋刑事に沖田ネルの欠席について、連絡帳、電話の不在そして家庭訪問に至ったことについて説明した。もちろん、先生という立場に則って。この演技もずいぶんと慣れてしまったものだ。

「三つよろしいでしょうか。」

高くなりつうある太陽の日差しが、眼鏡に反射したような気がした。

「はい」

おそらく僕に対しての問いだろう。それでも、教頭先生の顔を見て、それから返事をした。

「まず、連絡帳というのは何ですか。幼稚園や保育園ですとそういうのを毎日先生と保護者でやり取りしているイメージはありますけど。」

「確かに、あまり馴染みはないかもしれないですね。実際、毎日するというわけではありません。子供が持ち物などをメモして保護者に渡したり、保護者からは欠席や遅刻をするとう時は事前に書いて持参していただきます。原則、保護者からは電話しないようにということになっておりますので。佐藤先生が申していたのも、その欠席についての連絡のことでしょう。」

言葉を選んでいると、教頭先生が答えてくれた。

年の功というか、教頭先生の落ち着いた対応はさすがというしかなかった。

「では、次に。家庭訪問というのは欠席程度で先生が行くものなのですか。」

これも形式としてのものなのだろうけど、どこか不穏な嫌な質問。

「五日連続で休んでいますし、電話にも出られなかったので。」

「あくまで各先生の裁量に任せていますが、一週間というのは一つの目安として、妥当な所かと思います。」

僕の答えののち、教頭先生が口添えしてくれた。助け舟という言葉を使ってしまうと、僕のやましい気持ちが大きくなってしまうみたいで嫌だけど。碓井刑事は納得した様子でよかった。

「最後に。佐藤先生が沖田代議士の家を訪ねたとき、留守とのことでしたがどうでしたか」

「どうと言われましても、何の反応もなかったので。」

「不自然な感じは。物音がしたとか。」

「留守なのだとしか思いませんでした。体調不良ということだったので、病院に行っているのかなと、その程度で。当時は誘拐されているなんて思いもしませんし。」

「まぁ、そうでしょうね。」

「その日、職員会議で報告はしておきましたし、様子を見て、また来週_今週ですね、にでも電話してみようかなと思っていました。」

ここまでの警察の話を聞いている限り、その口ぶりではこの時点ではまだ、事件は発覚していないようだ。やはり、被害届けが出たのか。それとも_

「では、事件発覚から捜査状況について、話せる範囲で説明していきます_。とは言っても、恥ずかしい話がまだほとんど進んでいないのです。だいたいはまだこの程度でして。」

そう言って、頭を掻きながら話す仕草はその体格に全く似合っていなかった。

その後の祭屋刑事の説明を一言一句集中して聞いた。経緯よりも捜査状況の方がよっぽど大切だ。聞くときは、自分の頭で要点を要約するのではなく、言葉の真意まで理解するつもりで。

それからの流れを、頭の中で整理し直してみる。


僕が去った後、もう少し張り込んでみたが、何の変化もなかった。

その後は署に戻り、他の事件の文書作業に追われていた。

翌土曜は非番だった。

日曜日の午前、もう一度沖田家に電話をしてみたがやはり、出なかった。

そして午後、沖田陸の事務所を訪ねて本当に事件に_しかも誘拐に巻き込まれていることを知った。

そこからは、東奔西走、多事多端。警察内での捜査本部の設置。マスコミとの報道協定。そして、学校での事情聴取と今日のアポ。

沖田家での詳しい事情聴取はこの後行くらしい。


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