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誘拐から  作者: 高束奏多
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第二章 少年期解決編 ①

6月12日(月)

大きな変化もないまま、土日が過ぎた。

過酷で退屈な土日だった。

呑み会では隣の人と会話が弾まずに、無言の地獄というのがしばしばある。それは外だからまだいい。僕たちはそれに似た時間を安息地であるはずの自宅で二日間休みなく続けた。

家に人がいるというのは想像以上に休まらない。生活自体には慣れつつあっても、環境にはまだ慣れることが出なかった。

そんな状態で新しい月曜日。

今日から一週間が始まると思っていたが、それは大きな間違いだった。

事件がついに顕在化してしまった。

スマートフォンには学校からの着信が五件。要件は分かった。折り返すと、すぐに学校へ急いだ。

そのせいで、ニュースを見ることはできなかった。いや、事件が事件だけに報道されないのではないだろうか。家に警察が来ていない時点で、犯人はまだ分かっていない_とは言い切れない。犯人の目星はすでに、ついているかもしれない。デリケートな性質の事件だから、僕の出勤を見計らって突入するのかもしれない。

 ハンドルを握る力が強くなり、アクセルを踏む力も強くなる。

 長い車の列が、今日という日が長くなることを予感させた。


学校は閑散としていた。

嵐の前の静けさとでもいうのだろうか。いつもより早いせいか、別に原因があるのか、六月だというのに普段よりも肌寒く感じた。

職員室につくなり、校長先生と教頭先生に連れられ、別室に行くよう促された。すでに普段より多くの先生が出勤していた。

一限二限は他の先生にやってもらえることになっていた。

それ以外の先生も対応のため、朝早くから駆り出されている。学校閉鎖にでもできたら幾分楽になるだろう。

別室にはすでに二人の男性が座っていた。

最初に立ち上がった刑事は祭屋総義と名乗った。服の上からでもわかるその隆々とした筋肉はただ鍛えただけのものではなく、生まれつきの恵まれた遺伝子を感じさせた。一方で、隣にいる刑事、碓井敦は小柄の痩身に眼鏡をかけ、野暮ったい服を着ていた。頼りなさそうな印象でいかにも凸凹コンビという感じだった。まだ若く、一年目らしいが、お飾り感がぬぐえない。

僕を含め、五人が自己紹介を終えた。入口から見て右真ん中に校長先生、窓側奥に左から僕と教頭先生。そして、入り口側に刑事二人が腰を下ろした。

校長先生たちもまだ警察からの詳しい話は聞いていないらしい。お茶が出る間もないまま、さっそく祭屋総義は事件についての経緯を話し出した。

「最初に警察が通報を受けたのは九日の金曜日でした。」

つまり、僕が沖田家に電話をし、家庭訪問をした日だ。もっとも、どちらも空振りだったが。

「通報をしたのは近隣の住民。近所に住む小学生をしばらく見かけないという内容で、最初は老人のたわごとも思ったのですが、聞いてみれば、あの沖田代議士の娘というではありませんか。それで、とりあえず、通報者の家に行き、話を聞いてみることにしたのです。」

 そこまで話して、ようやくお茶が運ばれてきた。一杯すすると、またおもむろに話し出した。


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