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第一章 少年期事件編 ⑲
発信音_
終わることのない発信音に飽きてきたころ、やっと出た女性の声はメッセージを要求してきた。
無念半分と安堵が半分。どこかほっとしてしまっている自分がいる。
沖田宏子は専業主婦であるが、専業主婦だからといって、家にいるという道理はない。買い物に行っているかもしれない。たまたま、電話に出られなかっただけかもしれない。居留守を使いたい気分だったのかもしれない。電話に出ないなんて、何もおかしなことはない。それでも、ひょっとしたら、親の身にも何か起こっているのかもしれない。などと、状況が状況なだけに悪い予想ばかりしてしまう。
気になって、放課後、家を訪ねてみた。四月の家庭訪問以来、二度目となる。僕なんかは一生住むことのなさそうな、家というよりはお屋敷と形容する方がふさわしい建物。当時はこれだけで緊張していた。
想像はしていた。呼び鈴には誰も出なかった。家の明かりもついていなかった。
生徒が一週間休むという事情を学校側に報告するかどうか迷った。あまり、過剰に心配しているようで不自然に思われてもよくない。でも、後々のことを考えると、今報告しておくほうが自然な気がする。
その日の職員会議、一応の情報は伝えておいた。




