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誘拐から  作者: 高束奏多
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第一章 少年期事件編 ⑫

6月5日(月)


僕は本当に後悔していた。百人に聞けば、百人がこの状況を犯罪だと答えるに違いない。

 取り返しのつかないことをしてしまった。

 もしばれたらどうしよう。

 自首するべきだろうか。

 いや、家出してきたところを保護したという設定にすれば_無理だ。手錠で繋がれている以上そんな言い訳が通用するはずがない。かといって手錠を外せば、逃げられて通報される。

 ため息。

 それにしても、思い返せば昨日の沖田さんの様子は変だった。確かに、あんなに話したのは初めてだが、そういうことではない。話を積極的に進めて、僕のご機嫌を取ろうとしているというか、そういう感じだった。二日目にロープから脱出したという例がある以上、また逃げ出される可能性がある。そう思うと、通勤路はすでに気が気ではない。一刻も早く家に帰りたい。

もう一つ気がかりなことがある。もう事件から今日で四日がたつ。沖田さんの親が警察に届けているに違いない。警察に届ける前には学校に連絡しているはずだ。今日まで学校から連絡が来なかったことは不思議だが、きっと学校側で何かしらの対処をしているのだろう。そして、その報告を受けて、いろいろ聞かれるに違いない。ニュースを見ている限りではまだ事件にはなっていないように思うが、それでも、学校ではかなりの騒ぎだろう。生徒がいなくなって、剰え、その生徒の親はあの沖田代議士その人なのだから。そのことを考えるだけで鬱だ。自分で蒔いた種だが、おなかが痛くて仕方がない。まさに、自縄自縛だ。帰りたい。


 こんなにも居心地が悪いのに、街の様子はいつもと変わらない。車窓から見える楽しげな学生たちを見ると、思わずため息がこぼれる。赤信号で止まる回数が少なかったにもかかわらず、いつもよりも時間がかかった。ようやく校門の前についた。見慣れているはずの門がいかめしいオーラを放っていた。その横に座る守衛さんが警察官のように見えて、横を通るとき緊張した。挨拶が裏返っていたような気もした。

 ガレージのいつもの定位置に車を止めて、八つ当たりするかのごとく、ドアを強く閉めた。だんだん強さを増す日差しが不快だった。時計を確認してから歩き出す。一歩一歩、玄関を通るたび、廊下を歩いて、角を曲がり、階段を上り、踏み出す足はどんどん重くなる。


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