血腥い惨劇
「こっ、こんにちは~」
にこっと、おじさんに笑顔で挨拶をしながら、内心では動揺しまくる私。
ど、どうしよう!このおじさん、よくお母さんと立ち話してるんだよな~。私の停学の件を知らなかったとしても『そういえばそちらのお子さん、今日遅くから登校してましたね~』なんてことをお母さんに話されたらアウトだよ!
どうしよ、う──……
「……って、ん?」
内心でこの状況の回避策を考えようとしていたら、おじさんの様子が何かおかしいことに気づく。
いつもなら、柔らかに微笑みながら挨拶するのに、挨拶が返ってこない。それに、ゆらゆらと頭と体を揺らし「ウ~ウ~……」と、小さく唸っている?ような声を出している。目も、どこ見てるかわからないし……
「……おじさん?」
大丈夫ですか?と、近づいて言おうとした時だった。
「ウウゥウウウゥウウウウウ!!!!」
おじさんは私に、がばっと抱きついてきた。
「きゃあああ!いゃあ!」
私はじたばたと暴れて、おじさんを体から引き剥がし、思いきり突き飛ばした。するとおじさんは、ドサッと後ろに倒れた。
「なに?へっ!?おじさん?なんでこんなこと……?」
後退りしながらおじさんに言う。するとおじさんはゆっくりと体を起こし、また。
「ウウゥウウウゥウウウウウ!!!!」
両腕を私に伸ばしてきて、抱きつこうとした。
「やあああ、変態!誰か助けてー!」
私はまたおじさんを突き飛ばし、その場から走って逃げた。
「なに?おじさんどうしちゃったの?急になんで……」
全力で住宅街を走っていると。
「キャアアアアアア!!!!」
私が向かっている方向から、女の人の凄い悲鳴が聞こえてきた。その悲鳴の方に行くと。
「いやああ!助けてええええ!!!!」
地べたで這いつくばりながら悲鳴を上げている女の人の体に、男の人と女の人が口を血だらけにしながら齧りついていた。
「え……え?」
這いつくばっている女の人は、齧りついてくる男の人と女の人を体から引き離そうと必死に踠く。けど、2人は構わず女の人に齧りつき、女の人の体をムシャムシャと……
「食べ……てる?」
女の人は私に気づくと。
「おね……がい、たすけて。おねがぃ……」
私に向かって手を伸ばし、泣きながら助けを求めた。その間にも、2人は女の人の体をガツガツと食べていた。
食べられている女の人の横っ腹の方から、太い紐状のナニかが出てきて、食べてる男の人がそれをずるずると引っ張り出し、クッチャクッチャと咀嚼音をたてながら食べていた。
その紐状のものが引きずり出された瞬間、助けを求めていた女の人は、グリンっと白目を向け、地面に顔を俯せ──静かに、なった。
だんだん、食べられている女の人の周りに、血の池ができていく。女の人が静かになった後も、2人はクッチャクッチャと女の人の体を貪る。
私は逃げることなく……いや、恐怖で足をすくませながら、その血腥い惨劇を見ていた……




