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腐敗JK ─ ゾンビだらけの世界で女子高生は無双する ─  作者: 徳田タクト卍
ゾンビだらけになる前の、JKの平和な日常
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詰み。


「はぁ~……飽きた」


 ベッドでゴロゴロしながら読んでいた漫画をベッドの端にぽいっと投げ、スマホから流れてくる大音量の音楽を止めると、耳からイヤホンをはずしそれもベッドの端に投げた。


 停学になって1ヶ月。お風呂やトイレ以外はほとんど部屋に籠り、漫画を読んだりYouTubeで動画を見たりしていた。最初の頃は『超長期休暇だ~!漫画もYouTubeも見放題だ!』と、アホな私は呑気に思っていたけど……1ヶ月もすると、それら全てに飽きていた。


「あ~!コンビニ行きたい!本屋行って漫画買いたい!ゲーセン行ってゾンビ倒すゲーやりたーーい!!」


 クッションに顔を埋めながら、わーわーと1人叫ぶ。外に出たいけど『停学中は外出禁止!』と、お母さんに強く言われたから出られない。

 普段から私は引きこもりで、学校に行く以外は面倒くさくてあまり外に出ない(本当は、学校も面倒くさいんだけども)。だから、私にとって外出禁止は、天国のようなものと思っていた。

 けど……なんて言うか、自分から引きこもるのと、誰かに言われて引きこもらないといけないのとでは、心持ちが違うというか。閉じ込められている感じがして、息苦しいというか。



 ヤモリ女が嘘のいじめを告白した後、学校にお母さんが呼び出された。もちろん、お母さんにも動画のことや、私の方がイジメのターゲットにされかけていたことを説明したけど……お母さんも信じてくれなかった。

 お母さんまでもが、私の話を信じてくれなかったのはちょっとショックだったけど……まあ、あんな動画どっからどう見ても、私がヤモリ女の机に変なものを入れてる、いじめの決定的瞬間にしか見えないし。だからしかたないのかなって思うけど。

 

 因みに、ヤモリ女たちと揉めた時のことや、古木田さんのいじめの件は、先生やお母さんたちに話していない。

 あの日、ヤモリ女たちがトイレから出ていった後『いじめが酷くなったら怖いから、いじめのことは誰にも言わないでほしい』と、古木田さんは震えながら言った。だから、あの日のことは話さなかった。


「あ~あ、やっぱり古木田さんがいじめられてることを話せばよかった。てか、その方が古木田さんにとっても良かったんじゃないのかな?あーもー!あのヤモリ女たちのせいで、めちゃくちゃだわ!」


 クッションをぼすぼすと殴ったり蹴ったりし、ばったんばったんとベッドの上でしばらく暴れた。



 ばすんっ!



 クッションを部屋の壁に叩きつけると、ベッドいっぱいに大の字に寝転がり、はああと大きなため息を吐いた。


「……古木田さん、大丈夫かな。またアイツらにいじめられてないかな?って、いい人ぶんなよ私……」


 目を瞑り、手の甲を両目の上に乗せると、深呼吸をするようにしながらため息を吐いた。



 暫くして。


「……そうだ、学校に行こう!先生や他の同級生たちに見つからないように、隠れながら校内を歩くのもスリルがあって楽しそう!」


 ばっと、ベッドで半身を起こしてそう言うと、ベッドから降りて学校に行く準備をする。


「お母さんは仕事でいないし、こっそり外に出るのは今のうちだからね。コンビニとか本屋は、近所の人に見られてお母さんに報告される可能性があるし、この時間だと警察に補導される可能性があるし。まあ、学校だって危険だけども。とにかく、ちょっと外の空気吸わないと頭おかしくなりそう……」


 とりあえず制服に着替え、スクールバッグには教科書とかではなく、お菓子やジュースなどを詰めこむと。


「いってきま~……す」


 かちゃっ……と、玄関のドアをそろ~……っと開け、外の音に耳を澄ませる。


「……今、外には誰もいなさそうだね」


 誰もいないことを確認すると、エレベーターではなく外階段を使用し、足早に下に降りた。



 ─────────……



 サアアア……と、心地よい風が私の頬を撫で過ぎてゆく。久しぶりの外。空気。体内が浄化されていくような気がした。


「んん~久々のシャバの空気!気持ちいい~っ。やっぱ人間は外に出て、風や太陽に当たったりしないといけないんだね~」


 両腕をぐっと伸ばし。


「……さて、学校にこっそり潜入してきますか!その前に、ご近所さんに見つからないようにしなきゃね。ふふ、なんかゲームみたいでワクワクしてきた」


 マンションの外階段傍でひとりごちていると。



 かさっ…



「え?」


 後ろから物音がして、ばっと振り向く。するとそこには、このマンションの住人が……しかも、よりによって隣の部屋のおじさんが、ゆらゆらと立っていた。



 ……いや、さっそく詰んでどうすんのよ私!?



 私は内心で叫んだ。





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