血塗れの女子高生
「……こんなところで泣いてる場合じゃない。早くお母さんを見つけなきゃ」
涙と鼻水でぐずぐずの顔を手で乱暴に拭うと、シャベルを握ってよろよろと立ち上がった。
ガガガと大きな音を立てながら、重たいシャベルを引きずってフラフラと歩く。物音なんてもうどうでもいい。私は、ゾンビを……もとは人間だった者たちをグシャグシャにした。2度と動けないくらいバラバラに……した。
「ふっ、私ってもしかして殺人鬼の才能があったのかな?そんな才能いらないけど。いや、もしその才能があるなら、今こそその才能を発揮する時だよね」
ふふふと鼻で笑いながら独り言を話す。短時間でいろいろなことがありすぎて、精神が壊れかけていた。いや、もう既に壊れているのかもしれない。
「おかーさんどこ?柊咲子さーん!あなたの娘の友加里が来ましたよー!いたら返事してー!」
シャベルを引きずりながら、大声でお母さんを呼ぶ。すると。
「ヴ~アァ~……」
「ヴぅ~……」
会議室を覗くと、ヒールをはいたOL風の女性のゾンビと片腕が食いちぎられたスーツで眼鏡の男性のゾンビ2体が、ゆらゆらと体を揺らしながら私の方に向かってきた。
「はぁ……ここにもお母さんはいないか……」
溜め息を吐きながら、シャベルを肩に担ぐ。
「……ごめんだけど、ゾンビなら手加減しないから。ハンパにやって、また後から追っかけられたくないし──ね!」
グシャァッ!!
そう言いながら、肩に担いでいたシャベルをOL風の女性のゾンビの頭部めがけて振り下ろした。
◼◼◼
「ふう……これだけやっとけば、もう追いかけてこれないでしょ」
2体のゾンビの頭部をシャベルの先で切断した後潰し、ついでに手足も切り離した。ゲームの世界では頭を吹っ飛ばせばゾンビは死ぬってパターンが多いけど、現実ではどうなのかわからない。現に、さっきオフィスルームで倒したゾンビは、頭部を切り離したのにまだ私のことを追いかけようとしていた。
「頭を壊せばいいってわけじゃないとなると、厄介だなぁ」
ガランと、血だらけのシャベルを肩に担ぎながら会議室から出る。
「おかーさん、友加里だよー!どこにいるのー?」
ガガガと血だらけのシャベルを引きずり、大声でお母さんを呼びながら探す。所々に転がる遺体や血腥さにも慣れてきた。廊下の遺体を跨ぎながら、奥へと進む。
「更衣室は……と」
『女子更衣室』と書かれた所のドアを開ける。
「……お母さ~ん……いたら返事して~……」
学校にもある、銀色で縦長のロッカーがいくつも並んでいるが、この部屋もゾンビの被害に遭ったのかロッカーが幾つか倒されていて、所々に血が飛び散っていた。
「ロッカー……そう言えばお母さん、ロッカーに隠れてるって電話で言ってたよね……」
ごくり。と唾を呑み込むと。
「お母さ~ん……いるー……?」
シャベルを引きずりながら、更衣室に入る。ひとつひとつロッカーを開けて調べるが、お母さんは居ない。
「返事もないし、ここにもいないのかな……」
入り口側に並ぶロッカー全てを調べ、今度は奥のロッカーを調べに行く──すると。
「!?お母さん!!」
そこには、倒れたロッカーの下敷きになっているお母さんのような人が倒れていた。




