13 二人きりのダンス
最終回です。
二人の中年男性が部屋から退室したのを確認して、恐る恐るロゼリンダが女主人二人に声をかけた。
「お母様、おば様からのお手紙って?」
「母上?」
「だから、レオがボーッとロゼちゃんに見惚れている間に、キャルと連絡を取ってるって言ったでしょう」
「レオちゃん、ロゼちゃん。わたくしたちも覚悟をすると言ったでしょう」
「お母様! おば様! ありがとう!」
ロゼリンダが後ろから二人に抱きついた。二人はロゼリンダの頭をナデナデしていたのを、ランレーリオは少し震えて見ていた。
『奥さんは怒らせない方がいい』これは誰の気持ちだろうか……
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翌朝、公爵邸両家から2台の馬車がそれぞれの領地へむけて出発した。
二人と入れ違うように、クレメンティのガットゥーゾ公爵家からクレメンティとロゼリンダの縁談について断りの手紙が届いた。
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ランレーリオとロゼリンダは1週間学園を休み、今までの時間を埋めるかのように話をした。
父親たちからの連絡はまだないが、自分たちの気持ちをしっかりと確認した。
それでも今できることはないので、学園へ戻り、ランレーリオは『宰相になる』ため、勉強に打ち込むことにした。
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学園に戻った朝、ランレーリオとロゼリンダはクラスのみんなに謝った。
「あの時は、みんなに心配をかけてすまなかった」
ランレーリオとロゼリンダが頭を下げた。みんながザワザワとした。半数以上が下位貴族の者なのだ。最高位の公爵子女が頭を下げていい場所ではなかった。
「今は、まさに『爵位を関係ない交友』ということで、気にしないでもらいたい」
ランレーリオにそう言われれば、みなは頷くしかない。みんなの顔が強ばる。
「すべての問題が解決したわけではないが、僕とロゼリンダ嬢の中では、はっきりとした。書類上はまだだが、僕とロゼリンダ嬢は婚約することにした。残りの学園生活もよろしく頼みたい」
二人はもう一度頭を下げた。
「「「おめでとう!」」」
「「「よかったなぁ!」」」
クラス中が、祝福した。
「あ! この席どうぞっ!」
ランレーリオの隣の席だった男子生徒が窓側に移る。その姿が少しだけ笑いを誘い、クラスはとても良い雰囲気だった。
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その日の昼休み、ランレーリオはロゼリンダの婚約話で迷惑をかけてしまった5人をランチに誘った。
学園長に許可を得て、特別執務室のソファーセットを借りることにした。ランレーリオとロゼリンダを含めて、7人でテーブルについた。
ベルティナは初めは同席を遠慮した。ロゼリンダとランレーリオがどういうつもりであるかは、容易に想像ができ、個人的なそこに男爵令嬢である自分はいるべきではないと考えたようだ。
「すべてをみてきたベルティナ様ですもの、なんの問題もありませんわ。それに先程もレオが言いましたように『爵位に関係ない交友』を今からでも是非お願いしたいですわ」
と、ロゼリンダは笑顔でベルティナにお願いした。
「なら僕も子爵家だから、やめておこう」
とエリオにも言われてしまい、ベルティナは渋々同席してくれた。
着席して、すぐにロゼリンダが切り出した。
「セリナージェ様、クレメンティ様。あなたたちを傷つけてしまって、ごめんなさい。確かに、クレメンティ様のガットゥーゾ公爵家から断りのお手紙をいただいておりましたわ。わたくしの浅はかな行動でご迷惑をかけてしまって、本当にごめんなさい」
ロゼリンダはきちんと頭を下げた。
「それはもういいです」
セリナージェがロゼリンダの腕をさすり頭をあげてくれるように頼んだ。ロゼリンダはランレーリオに目で確認する。ランレーリオは頷いた。ロゼリンダは困った顔で少し笑い頭を上げた。
「それより、ロゼリンダ様はご納得できる結果になったのですか?」
セリナージェはロゼリンダのこと気にしてくれた。ランレーリオがロゼリンダの代わりに現状を説明した。
「正直に言ってまだなんだ。
だけど、僕たち二人の気持ちはもう決まったからね。二人でそれを確認できたら、家でできることはこれ以上ないかなって。
それより、しっかり勉強して、キチンと宰相、というかまずは高官にならないとね。ロゼにカッコつけたのにできませんでしたってわけにはいかないさ」
ランレーリオがロゼリンダをチラリと見て、笑顔を見せた。ロゼリンダが照れたように微笑む。ベルティナとセリナージェはロゼリンダのその笑顔がすべてだと感じた。
「そうか、いい方向に決断できてよかったね。おめでとう!」
エリオも同じことを感じたに違いない。
「ああ、全てはクレメンティ君の言葉のお陰だ。僕は公爵にならなければって思い込んでいた。ロゼを迎えに行くのは、僕が権力を持ってからだって思って勉強だけを必死にやっていた。公爵は家の地位だが、宰相は僕の地位だ。それを示せばいいなんて。
クレメンティ君、ありがとう」
ランレーリオはクレメンティに握手を求めて、クレメンティはとても照れながらその握手に答えてくれた。
「レムは、セリナに夢中だっただけなのにな? 人助けになってよかったな」
イルミネの冗談にエリオが『おいっ』というように肘で小突いた。イルミネが、わざと椅子から落ちた。みんなが笑った。
「どうかロゼリンダ嬢を守ってあげてほしい」
クレメンティはランレーリオの手をとったまま、そう言った。
「ああ、約束するよ」
ランレーリオはクレメンティの手をギュッと握り返した。
「ロゼリンダ様。おめでとうございます」
ベルティナも笑顔だった。
「ありがとうございます」
ロゼリンダの今まで見せたことのない笑顔に、本当に幸せなのだと5人は感じることができた。
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翌週、キャロリーナがアイマーロ公爵邸に戻ったと、ランレーリオとロゼリンダの元に連絡が入った。
二月後、ランレーリオとロゼリンダの婚約は正式なものとなった。
最後のひと押しは、祖母たちの言葉であったそうだ。
「「では、わたくしもそちらの国へとまいりましょう!」」
それを、それぞれの場所で、側で聞いていたコッラディーノとゼルジオは、さらに小さくなって戻ってきたのはナイショだ。
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新年の王城でのパーティーには、ランレーリオはパートナーをロゼリンダとし、次期公爵として、堂々と参加した。隣国からの留学生であるクレメンティもセリナージェをパートナーにして参加していた。
トラブルが起きてしまい、その新年のパーティーは、舞踏会ではなく立食のお茶会になってしまった。
ランレーリオは、ランプで明るくなっている王城の中庭にロゼリンダを誘った。王城からは、みなが安らげるようにとの国王陛下からの指示で、優雅で緩やかな曲が流れていた。
ランレーリオはロゼリンダと向かい合った。
「ロゼリンダ嬢。僕と今年最初のダンスを踊っていただけますか?」
ランレーリオがロゼリンダへ手を差し伸べた。
「ランレーリオ様。よろこんで」
ロゼリンダがランレーリオの手をとった。ゆっくりとゆっくりと、ランレーリオがステップを踏んでいく。ロゼリンダもそれに合わせる。
「ロゼと踊るのも久しぶりだね」
「ええ、10年ぶりだわ」
とてもそうは思えないほど、二人のダンスはピッタリだった。
「これからは、毎年、君の最初のダンスは、僕のものだよ、ロゼ」
ロゼリンダはにっこりと笑って、会場でのダンスだったらありえないほど、ランレーリオに体を預けた。ランレーリオもまるで抱きしめているかのようであった。
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「おかぁさまぁ。このご本 よんでくださる?」
おねだりがかわいい女の子は、現宰相補佐官の娘である。髪には少し色あせたリボンが付けられていた。女の子のお気に入りだ。
女の子の母親は大きなお腹にそのとても古い絵本をちょこんと乗せて、女の子に読んであげた。悪い魔法使いに攫われたお姫様を助ける王子様のお話。
「おとぉさまはおかぁさまをたすけにきたのでしょう! ステキねぇ」
「そうよ。悪い人(国王)に攫われたわたくしを、助けにきてくださったわ」
ロゼリンダが女の子に笑顔で答えると、少し遠くから声がかかった。
「でも、僕のお転婆お姫様は、逃げ道を探して迷子になっていたけどね」
「おとぉさまぁ! おかえりなさぁい!」
女の子はサロンに入ってきたランレーリオの元に走り抱きついた。ランレーリオは、とびきりの笑顔で女の子を持ち上げて縦抱きにし、愛しい妻の元へと歩く。
「それは、わたくしの王子様がお寝坊さんだからですわ。うふふ」
ロゼリンダはお腹をさすりながら、愛娘と愛する夫のそっくりな顔を見て、幸せを感じていた。
「おとぉさま。おねぼうさんはダメですよ」
女の子はぷぅと頬を膨らませる。
「ハハハ、そうだな。でも、もう手離したりしないから、一緒にお寝坊さんでいられるよ」
ランレーリオが女の子の頬を、手で優しくぷにっと潰せば、女の子の口から「ぷふっ」と空気が漏れて、目を合わせて笑い合う。
「私も一緒におねぼうさんするぅ」
女の子はランレーリオの首に抱きついた。
公爵邸に明るい笑い声が響いていた。
〜婚約破棄の公爵令嬢は醜聞に負けじと奮闘して迷子になる fin〜
ご意見ご感想、評価などをいただけますと嬉しいです。
明日より、「僕の夢は現らしいが全力で拒否したいと思います」の続編をスタートさせます。
是非、そちらもよろしくお願いします!
毎日、午前中に更新予定です!




