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Ⅴ ほんわか女王様

 現在、微妙な空気で湯船に浸かっている私達。


「頭が痛い……ダルいよぉ……」


「ごめんなさい、私があんな事をしたから……」


 あんな事って言われても、気持ちよかったから別にいいんだけどね。頭が痛いのとダルいのは、マナがほとんど残ってないせいらしいし。二回出しただけで無くなるなんて……量がすごかったもんねっ。


「こっちこそ、焦らすみたいな終わり方になってごめんね」


 お姉ちゃんの肩に寄りかかってすーりすーり。片手は恋人繋ぎっ! 気分は賢者モードだけど、お姉ちゃんが居るから幸せで満たされる……


「ダメです」


「えっ」


 驚いて顔を上げると、ちょっとハァハァしたお姉ちゃんが居た。


「最後までして下さらないと、許してあげません。ずっと、切ないままなんですよ……?」


 繋いだ手をぐいっと引っ張られて、お姉ちゃんのおっぱいに顔からダイブする。どうなんだろうこの大きさ、少なくともFはありそう?


「お姉ちゃ――んむっ!?」


 どうしたの? と言うつもりが、その前にお姉ちゃんの唇で塞がれてしまった。勢いよく押し付けられた唇が歯とサンドイッチされてかなり痛かったけど、今は柔らかくて気持ちいい……


 何より、唇を割って入る舌に考えている余裕を奪われた。


「ふぁぁっ……♡」


 歯や歯茎を滑っていく舌。

 ゾクゾクして声を漏らしていると、いつの間にか舌を伸ばしていたみたいでお姉ちゃんの舌と触れ合った。

 されるがままにぼーっと受け入れていた私の口に、位置的な理由でお姉ちゃんの唾液が流れ込む。


「ん……」


 甘い気がするけどそんなことは無いはず。でも、実際には甘くて美味しいと感じてる。

 もっと欲しい。その衝動を抑えきれなくて、唾液が欲しいと自分から舌を動かしてみた。


 やがて息苦しくなり顔を離すと、銀の糸は私達が離れるのを阻もうとしていた。それが途切れ、寂しく思った私はダメかもしれない。


「初めてなのに……エッチなキス、されちゃった」


「嫌、でしたか……?」


「ううん、気持ちよかった」


 ――誰にも渡したくないと思うくらいに。


 なんて重いセリフは言えないけどね?

 それにしても、私ってちょろかったんだ。お姉ちゃんが欲しくてたまらないし、愛しい気持ちが溢れて壊れちゃいそう。


「ねぇ、もう一回だけ……しよ?」


 ああ、自分だけのものになってくれればいいのに……


 ◇◇◇


 こほんっ……お風呂場での私はおかしかったんだよ。きっと、お姉ちゃんの魅力にやられたんだね。わぁ、王女様ってば魔性の女! ということだから、いいね? 私は重い女の子じゃないんだから……誰に言ってるのか分からないけど。


『キーワード解放。

 体質···眷属を増やす性魔契約は精液を飲ませる事で発動する。性行為によって基礎性能が少し上がる。女に性魔契約を使えば陰核を男性器に変えられるようになる。


 備考···性行為による基礎性能上昇は、相手が強者であるほど効果も上昇する。眷属には二割の効果がある。』


 これだけは言わせて。


 ……正に性魔だよっ!?


「どうしてアリスまで頭を抱えてるのよ」


「う、うん、ちょっとね……」


 お風呂から上がってすぐに、「全然ゆっくり出来ないじゃないのっ!」ってフィリスが怒ってた。体の隅々まで洗われて大変だったらしいけど、私も色々と問題がね?


 現状、お姉ちゃんも眷属になってるんですよ。つまり、あれが生えちゃう訳でして。王女様がそれは良くないんじゃないって聞いてみたら、「バレなければ良いも悪いもありませんから」と某這いよる混沌さんみたいな事を言い出すお姉ちゃん。


 ……ふたなりお姉ちゃん。

 あ、これ私が大変なことになる未来しか見えない。


 そうそう、服を着る時も大変だったよ。さっきまで着てたやつは洗濯に出しちゃって、用意されてた服があったの。でね、それがふりふりのワンピースとレースをあしらった真っ白なパンツで……ちょっと無理って駄々をこね、お姉ちゃんに穿かされて興奮した。仕方ないよ、うん。


 ちなみに、ブラはサイズを測らないと準備出来ないって。しなくてもいいって言ったら怒られちゃったけども。


「はぁ……今向かってるのは女王様の所だったかしら?」


「はい。恐らくお父様もいらっしゃると思いますが……」


 どうしよう、お姉様云々のせいでSMの方にしか聞こえない。

 あ、もう着いたって。……髪とか乾かしてないけどいいの? いや、お姉ちゃんとフィリスの湯上がり姿は色っぽくて眼福だけど。


 扉を開くと、謁見の間的な豪華な所じゃなくて、お風呂の前に話してた部屋っぽい。そっか、謁見するような話でもないんだね。小説だと、「魔王を倒して下さい!」なんて無茶を言われてたりするけども。


 そして、肝心の女王様。

 パッと見はお姉ちゃんとそっくり。でも、よく見るとお姉ちゃんは日本人寄りの顔立ちかな。女王様も優しそうなんだけど、彫りが深いって言うの? ザ・外国人って感じ。


 ん? なんかフィリスからつんつんされた。


「ほら、私はもう終わったから挨拶しなさい」


 いつの間に……じっくり見てたから気づかなかったよ。


「え、えっと、初めまして。アリス・ファンシアです。……フィリス、何言えばいいのっ!?」


「自分で考えなさいっ! ……そうね、女王様を褒めたり、今回の件についてお礼を言えば良いと思うわよ」


 えへへ、『自分で考えなさいっ!』とか言いつつ教えてくれるんだね。そんなフィリスが大好き。(深い意味はありません。……たぶん)


「うふふ、気にしなくていいのよ。もっと気楽に接して頂戴。夫と同郷の方かもしれないんですもの」


「「??」」


 二人揃って首を傾げる。

 どうきょう……同きょう……同郷っ!?


 またも揃って王様の方を見る。

 黒髪黒目の中年男性。顔はワイルドでかっこいい。確かに、日本人顔だけどさ……同郷?


「息ぴったりだ。だが君達、日本人か? ハーフっぽくもないんだが……」


「それが、その……ゲーム――VRMMOをプレイ中に落ちたのが原因みたいです」


「VRMMO……だと!? 君達の世界にはあるのかっ!?」


 くわっと見開いた目にフィリスが引いてる。ごめんなさい、私もちょっと引いたかもしれない。


「は、はい、それがどうかしました……?」


「そうかそうか、あるのか……僕の世界には無くてな。どうやら別の日本から来たらしい」


「別の、日本……」


 ああ、パラレルワールド説があるって言ってたもんね。王様はフルダイブ機器の無い世界から来たって事かぁ……私の世界では結構前からあったらしいけど。


「一応確認したいんだが、僕の方は西暦2018年から来た。君達はどうだ?」


「えっと、2038年……だったよね?」


「そうね。それで合ってるわ」


 話を聞くと、王様が来たのは丁度二十年前。VRMMO自体はもっと前からあったし、やっぱり違う日本だね。違かったのは残念だけど、パラレルワールドがあるのは本当みたい?


「所で……あれはどうだった?」


 それって私達に聞いてるの?

 あれ、あれかぁ……どれのことだろう。


「目を覚ますと、異世界召喚されたかのような出迎え……! ふっ、あれは僕が考えたものなんだ」


「お父様、その事で少しお話が……」


「ふむ、何かあったのか?」


 かくかくしかじか……


 ドヤ顔の王様は、お姉ちゃんの話を聞いている内に段々青ざめていく。青ざめたドヤ顔なんて初めて見たかも。


「あ・な・た?」


「ヒィッ!? ち、違うぞ? 僕はそんなつもりではなかったんだ! お前なら分かってくれるだろ?」


「ええ、分かっています」


 やさしそうな顔で微笑む女王様。

 しかし、よく見ると目が笑っていない。


「あなたには、お仕置きがひつよ――」


「死にたくなぁいっっ!!」


 女王様の話をぶった切って部屋を飛び出す。しかし、メイドさんへ〝いつもの部屋〟とやらに連れて行くよう命令してたのを見るに、早いか遅いかの違いしかないと思う。

 ……いつも、なんだ。


「や、やっぱりそういう事なのかしら……」


「う、うん、そうだと思うよ……?」


 二重の意味で女王様でした。

 この女王様にしてこの王女様あり、という訳なんだね。凄い納得。王様ってあの顔でMなのかぁ、人は見かけによらないってことかな。


 騎士団長と魔法師団長はクビになるそう。

 あんまり可哀想でもないけど、そんな簡単にやめさせちゃって大丈夫? うーん、王女様一人に止められる程度なら居なくても変わらないのかな。


 というか、ポーションって高価な物なの? 回復薬って言うらしいけど、作るのが大変だったりしそう。まあ、聞いてみればいっか。


「お姉ちゃん、回復薬ってそんなに高い?」


「はい。傷を一瞬で治すような回復薬には、希少な薬草と〝獣人〟の血液が必要ですから。100mlで10万ドルほどだったと思います」


「そ、そっか。普通は自然に治るのを待つものだもん、当たり前かぁ……ん? 獣人?」


 ドル。あくまで、この国ではそういう単位の通貨だってだけだから、私達の知ってるドルとはなんの関係もないからね?


「きっと、犬の耳とかが生えてるのよ」

 

 なんて冗談を口に出すフィリス。


「その通りです」


「そうよね、そんな訳――って、その通りっ!?」


 冗談にならなかったけど。

 獣耳……モフりたい。 その辺に居ないかな? 若しくは、モフりながらお喋りするお店的なの。本当にありそう。だって需要があるんだから。


 チラッと女王様を見てみると、なんだか嬉しそうなお顔。


「あらあらまあまあ……」


「お母様、どうかなさいました?」


「いいえ〜。ただ、娘が増えたみたいで嬉しいわ。〝お姉ちゃん〟だなんて……私の事も、〝お母さん〟と呼んで貰えるのかしら?」


 そ、それはさすがにダメでしょ……女王様をお母さん呼ばわりしたら、各方面から怒られそう。しかも、こんなに若いお母さんなんて……若い? お姉ちゃんを産んだ人が若いっておかしくない? 20代にしか見えないんだけど。


「むむ……見た目は似てるけど、実は……?」


「実は……」


「ま、まさかっ……!」


 フィリスもその可能性に気づいて目を見開く。

 目を閉じた女王様は、ゆっくりと口を開き……?


「――血の繋がった母なの♪」


「「ですよね〜……」」


 ノリいいね女王様。真剣な顔するから身構えちゃったじゃん。まあ、見た目が若い人は日本にも居たし……


「アリス、マナの話はしましたよね?」


「え? うん、便利な生命エネルギーみたいなやつでしょ?」


「はい。そして、保有マナには肉体の活性化という効果もあるんです。量が多ければ多いほど、老化は極端に遅くなりますね」


「私の世界の人が聞いたら発狂するね」


「全くよ……」


 凄いね、あればあるほど老化が遅くなるなんて……女王様はすごく多いんだろうけど、王様との差が激しくない?


 それはともかく、回復薬の弁償と私達が持ってる回復薬……正確にはポーションだけど、それを100本ずつ売らせてもらった。売って欲しいって言われたんだけどね。


 お詫びも兼ねて一人1200万ドルになりました。

 あ、どこから取り出したのかと言うと、装備とか回復アイテムをすぐに取り出せるようになってる拡張ポーチ、みたいなの。イメージとしては、ポーチが四次元ポ○ットになってると思って貰えばいいかな。


 そこにはまだ数千本単位で入ってたり……いや、だって、ボス戦とかで何十、何百とか使うし、大量に買い込んで置く物なんだって。タイミングが悪いと売ってない時も多いから買い溜めしてたのが、今回の件と重なって、ね?


 現金で10万――日本と大体同じ、一、五、十、五十、百までは硬貨。一万まで紙幣って感じ。

 残りはユニオンに入ってて、大体は引き落としみたいな感じで買い物が出来るんだけど、そういうのが無いお店もあるから現金も多少(10万が多少かどうかは置いといて)は持ってないといけないんだって。


 というやり取りの後は、メイドさんが入れてくれた紅茶を飲みつつ他愛のない――具体的には、何でお姉ちゃんって呼んでるのかだったり、フィリスと私がどんな関係なのかみたいな……この世界の話を聞いても、残念ながら分からりませんからねっ!


「ありがとう、今日は楽しかったわ。またお話して下さる?」


「はい!」


「私も、喜んで」


 うんうん、いい人だった。

 女王様っぽい感じはどっちの意味でもしなかったけど、スイッチが入ると全然違うのかな? 鞭を持つと豹変、とか。


 あの人がトップに居るなら、みんな安心して暮らせるね。

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