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Ⅳ エロ種族とお風呂での一幕

 しっかりしたお姉ちゃんは優秀だった。

 種族って何? と聞けば、『この世界には人間以外も居ますから、外見的特徴が少なくても分かるようにしているんですよ』と答えてくれる。


 体質? 痩せやすいとか太りやすいとか? と聞いてみれば、『個人差の問題ではなく、特異な能力などです』と答えてくれる。そういえば、経歴にも似たような事が書いてあったね。特異な能力が云々って。


 姫能ってどんなの? と聞いてみれば、『私がさっき床を壊したのは〝魔眼〟の力なんですけど、これは姫章持ち特有のものだったりします。姫章持ちの不思議な力を姫能と呼んでいますね』との事。

 つまり、姫章持ち=姫能持ちってことかな。


 では、種族行きましょう!

 といっても、フィリスのは普通だね。問題は私の方だから。その名も〝シンキュヴィア〟だよ。まあ、分からないよね?


 これは、ヴァンパイア、サキュバス、インキュバスの合成種族、みたいな。私がやってたゲームのシステムだと、転職ならぬ転種が出来てね。インキュバスは男キャラじゃないとダメだったから、ちょっとした裏技でレベル上げしないといけないんだけど……最終的には三種族合わせた最強の〝エロ種族〟が出来上がりましたとさ。


 年齢制限で〝不適切〟なスキルがあっても使えなかったし、基礎ステータスが上がった以外は意味なかったね。でも、戦闘スキル自体は元のやつが使えたからそうでもないかな?


 で、それがどうしたのかって?


 この世界では年齢制限なんてありません。


 という事が言いたいだけだよ?

 あのね、スキル自体は使えない。それは現実だから仕方ないと思う。ただ、その代わりに体質が面白い事になってる。


『種族···シンキュヴィア。

 体質···体が触れた状態で――と、相手の―の――が本人の望んだ―――になり、元が――故に―でも感覚を与え、――もハッキリ残る。――を増やす――――は――を飲ませる事で発動する。―としての――が高まった際、―――が――の部分に現れる。―――が消えることは無い。女に――――を使えば――を―――に変えられるようになる。―――によって基礎性能が少し上がる』


 虫食い多すぎてワケワカメ。

 エロ種族だからロクな事は書いてないと思うけど。最後のとか、エッチだったりしない? 実際ありそうで怖……やっぱり楽しみかも。


 姫能は、読んでもちょっとよく分からないから保留。お風呂行こ、お風呂。……というわけで移動中だよ。


「女王様にこの格好で会うわけにはいかないよね」


「格好の前に、アリスは血まみれだもの」


「そういうフィリスだって……」


「これはアリスの血でしょ?」


「あ、そういえばそうだった」


 完全論破。ダンガ○ロンパ!

 あれは面白かった。グロいようでグロくないから。まあ、耐性が全く無い人からしたらグロ以外の何ものでもないだろうけどさ。

 VRのホラーゲームは本気でやばい。自分の体が貪り食われる瞬間が見えるとか普通にあって……今は14歳の女の子だから、あんなの見たら聖水ちびっちゃう。精神はある程度肉体に引っ張られるっぽいし。


 え? 聖水? 素材の名前です。

 作成方法が、ね。うん……18歳以上じゃないと作れなかったって所で察して。男性プレイヤーがあれを飲もうとする事件が多発して、すぐに飲めなくされてたよ。あと、飲めなくなったからって現実の方で『私の聖水』っていうのを出した女子高生が居てね、飛ぶように売れたって。

 ゲームニュースで見た時は大爆笑。


 男って馬鹿なのかしら? ってフィリスに聞かれた時は、もう笑って誤魔化すしかなかったです。買ってはないけど、買ってないんだけどっ! 気持ちは分かるからさぁ……庇いたくなるのは仕方ないね!!


「アリス、着きましたよ?」


「あ、ホントだ」


 どうして聖水に話が飛んだんだっけ? 完全論破ってとこから? 変わりすぎてびっくり。


「フィリスさんは露天と室内のどちらがいいですか?」


「露天風呂(温泉ではない)に決まってるじゃない!」


「あれ、私には聞かないの?」


「露天はのんびりするのが用途なので、シャンプーやボディーソープが置いてないんです。(そしてメイドに洗ってもらうんですよ)」


 最後だけ小声で言うスタイル。

 女神のような微笑みが恐ろしくなってくるね。ごめん嘘、ホントはキュンキュン来てる。可愛いんだもん。ドキがムネムネって感じ。


「へぇ? 私は少し血を流すだけだから気にしなくていいわね。それじゃ、後で会いましょ」


「はい。タオルや着替えは(メイドが)準備しておきますから、心置き無くゆっくりして下さいね」


「……頑張って、フィリス」


 友人の無事を祈って、黙祷……


「私達も行きましょう」


「うん、行こっか」


 脱衣所にて。服を脱ぐ……んだけど、いいのかな? これは本当に許されるものなのかな?


「どうかしました……?」


「え、えっと、一応男でもあるわけだし、お姉ちゃんとお風呂に入るのは……やめた方が」


「もう、アリスは照れ屋さんなんですからっ♪」


 違う、そうだけどそうじゃないの!

 あっ!? 強引に脱がさないでー!!


「うぅ……」


 お姉ちゃんを直視出来ない。

 タオルは巻いてるよ? でも、タオル一枚程度じゃ溢れ出る魅力が抑えられてないわけで。下を見れば自分の体があって、けど自分の体とは思えないから恥ずかしいし。


「ここに座って下さいねー」


「……まさか、お姉ちゃんが洗うとか言わないよね?」


「? 当たり前じゃないですか」


「当たり前じゃないからっ! ホント、自分で洗えるし、恥ずかしいから! ねっ?」


 少し考え込むお姉ちゃん。いや、悩む余地はなかったはずなんだけど、色々ズレてるこの人。これがこの世界での常識とか言わない?


「お断りします」


「考えた上でかぁ……」


「大人しくして下さい、悪いようにはしませんから」


「それ悪役のセリフじゃない? 大丈夫?」


「ちょっと意識してみましたっ!」


 ちょっとダメになるお姉ちゃんが可愛いんだよね。なんか、お姉ちゃん無しでは生きられない体にされそう。……あれ? 割とご褒美かもしれない。綺麗で優しい、ついでにおっぱいも大きいお姉ちゃんとか、世界を敵に回してもいいくらい。


「はわぁ……」


 頭を洗う指使いもいいし。


「痒いところはございませんかー?」


「大丈夫でーす」


 目を閉じると、頭からお湯がかけられて泡が流される。うむ、苦しゅうない。的な事を言いたくなるね。

 言ってもニコニコされるだけだろうから言わないけど。ツッコミを入れてくれるフィリスとかじゃないと。


「体も洗いますね」


「え゛……さすがに、それは」


「動いちゃダメですよ?」


「ひゃんっ!?」


 浮かせかけた腰に冷たくてヌルッとした手が……え? もしかして、ボディーソープは直接なの?

 それは刺激が強すぎるんじゃないでしょうかっ!


「そ、そういえば、話し言葉とか文字が一緒なのは何でか分かる?」


「はい。確証はありませんけど、過去の異世界人の方が『平行世界かそれに近い何かなのではないか』と仰っていたそうです。なので、一致するのは言語だけではないようですね」


「なるほど……」


 意識を逸らすために聞いたのに、結構大事な話が出てきちゃった。そっか、パラレルワールドみたいなものだとしたら……ある程度似たようなところがあってもおかしくない、のかな?


「前に行きますよー」


「…………」


「ふふっ、ここの成長は早いんですね」


「え? ……あれっ、いつの間に……! ていうかお姉ちゃん、タオルの意味無くなってるから!」


 濡れ透けタオルとか、裸よりエッチだと思うよ。あと、成長っていうのは胸の話? 成長、するのかな……ゲームキャラが成長したらどうなるのか気になるかも。


「アリスに見られても気にしませんから」


「私が気にするのっ!」


「女の子同士じゃないですか。アリスが私の事をそういう目で見てしまうのだとしても、お姉ちゃんとしてしっかり受け止めてあげますからね」


 それは果たしてお姉ちゃんの枠に収まるんでしょうか。あーもー、胸を押し付けるのはちょっと……抑えられなくなりそう。お姉ちゃんが喘いでる姿を見たくなってきた。


「っっ!?」


 お姉ちゃんが硬直したと同時にそれは来た。


『キーワード解放。

 体質···男としての性欲が高まった際、男性器が陰核の部分に現れる。女性器が消えることは無い。』


「ほえ……?」


 男性器? ふむふむ……ちょっと落ち着いて下を見てみよう。そうしよう。じーっ…………あっ。


「あ、あのねお姉ちゃん、とりあえずこれ読んで」


 どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしようっ……!? そそり立つ色白なアレが生えてるっ!!

 お姉ちゃん、出来れば嫌わないで……!


「アリス……」


「な、なにかな?」


「どうしたら、気持ちよくさせてあげられますか……?」


 ごめん、その質問は予想の斜め上過ぎるよ。

 違うじゃん。普通、「キャァ」とか叫んで逃げる所じゃん。なんで、〝気持ちよくする〟前提なの?


「気持ち悪くない? それにほら、これってお姉ちゃんに欲情してるって事でもあるし、怒るとか逃げるとか軽蔑とか……しない?」


「そんな事しませんっ。アリスは私の妹になったんですよ? ちょっと男の人と同じものが付いているくらいで、ちょっとお姉ちゃんをエッチな目で見るくらいで嫌いになったり出来ません」


「嫌いになる理由としては十分だと思うよ、普通は……」


「それなら、私が普通じゃないんですね。いえ、普通じゃなくてよかったんですよ。妹に悲しい思いをさせずに済みましたから」


 やっぱり、それは妹じゃないと思う。

 義理の妹……ううん、むしろお姉ちゃんと呼んでるだけの相手にそこまでするかな? そんなのフィクションの中にしか……フィクション?


「お姉ちゃん、姉妹を見た事は?」


「? ……街で見かける程度でしょうか」


「うーん、何で妹が欲しいの?」


「ええと……最初は、歳下の女の子から姉妹愛を題材にした小説を渡されたんです。そのお話がとても素晴らしいものだったので、それから様々な小説を読んでいましたね。いつの間にか、『妹が欲しい』って思うようになりました」


「い、一応聞くけど……そのお話、血は繋がってる?」


 頬が引き攣って来た。嫌な予感しかしないもん。

 お願い、間違いであって欲しい。


「え? もちろん、始まりは他人やお友達からですけど……」


「あぁ、やっぱり……?」


 妹、妹って何かがズレてるな、とは思っててね。でもさ、それ、妹は妹でも〝お姉様〟的な? 家族じゃなくて愛し合う関係だよね?

 歳下の女の子、お姉様になって欲しかったんじゃない? そういうことだと私は思うよ。


「……最終確認。お姉ちゃんが言ってる姉妹って、家族になりたいとかそういう意味?」


「家族……将来的には、なりたいですね……」


「結婚なのかぁ……」


「当たり前じゃないですかっ」


 この世界だと、女の子同士って結婚出来るんだ?

 ……あれだね、お姉ちゃんが天然だったのが良くなかった。そういう意味なら最初からハッキリ言って欲しかった。この人、お姉様的な雰囲気がないでしょ? 分からないに決まってるよぉ……!


「何で、私を妹に?」


「それは、その……見た目が可愛らしいのはありますけど、フィリスさんを命懸けで守っている姿にハートを鷲掴みされてしまいました……」


 ……全然嫌じゃないからいい、かな。

 嬉しいに決まってるよね。だって、元男だもの。美少女に好きだって言われて、もうこっちはオーケーしてるみたいな状況なわけでしょ?


「なら、お姉ちゃん……」


「はい、何でも言ってください」


 これはもう、して貰うしかないっ!

次回、ほんわか女王様。

本来はエロが入るので、ノクターンとは少しズレます。話は分からなくならないようにしてますが。

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