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Ⅲ エルティナお姉ちゃん大暴走

「はぁ……はぁ……また、死ぬかと、思った……」


 こちょこちょされて死ぬとか。

 ちょっとこの体は敏感でさ……あ、変な意味じゃなくてね? そういう意味でも敏感なのかもしれないけど。


 笑いすぎて息が出来なかったもん。フィリスまで混ざってさぁ……途中からちょっと変な声になってたような? こう、艶っぽい? くすぐったいんじゃなくて変な感じだったし。


「さっきの声って何だったのかな? ねえ、エルティナさんとフィリスは分かる?」


「へ? ……そ、その、エルティナに聞いてあげて? お姉ちゃんなら妹に〝そういう事〟を教えるのも大事でしょ?」


「えっ……そ、それは卑怯じゃないですか?」


「任せたわよ、エルティナ」


 キリッとした顔でエルティナさんの肩に手を置く。いや、うん、そのやり取りで大体分かったけどさ、全部押し付けるのはどうなの?

 まあ、どんな説明をするのか気になるから分かったことは言わないけどね。……はい、私も同罪でした。


「エルティナさん、教えて?」


「……あの、ですね、気持ちいいと、出ちゃうんです」


「気持ちいいっていうのは、具体的にどんなタイプの?」


「ど、どんな? ……エッチな、感じですよ」


 そのくらいで赤くなること無いのに。

 だけど楽しいからやめません。凄く楽しい。


「ふーん、エルティナさんは経験ある?」


「経験っ!? それ、は……一人で、なら」


 一人エッチの経験があるそうです。

 そっか、王女様でも女の子だもんね。多感な時期だもの、仕方ないよ。うんうん。……全部小声で話してるから、フィリスはニヤニヤとエルティナさんを見てるだけ。

 これを知られたら軽蔑されそう。


 それにしても、女の子としての経験はするべき――気持ち悪っ。


「……女の子になっても、男の人としたいとは思わないや」


「あ、アリス、それって……?」


「うん、普通に女の子が好き」


「そうなんですかっ!?」


 そうなんです。ただ、知ってもなお離れないエルティナお姉様には驚き。優しいね。フィリスなんて……同じ位置だった。おかしいなぁ、危機感っていうものが無いの? 全く……。


「ありがと、フィリス、エルティナさん」


「どういたしまして? 何の話か分からないけれど……」


「………」


「えっと、エルティナさん? どうして黙ってるの?」


 じーっと見詰められて困った。

 嫌ではないんだけどね? さすがに照れるというか、チョロインな私は即落ちといいますか……


「お姉ちゃん、って呼んで貰えませんか?」


「え……それは、ちょっと恥ずかしいかな……」


「そ、そうですよね? ごめんなさい!」


 ああっ! 口調も崩れてきて心を開いてくれてるのに、悲しそうな顔を……よ、よし。やるよ、私は。


「お姉……ちゃん……」


「っっ!?」


 うぅ、思った以上に恥ずかしい……!

 どうしよ、エルティナさんを見れない。いやね、元の歳だと同い歳くらいなんだもの。恥ずかしいでしょ?

 でもなぁ、エルティナさんが喜んでるから……


「はいっ、お姉ちゃんですよっ♪」


 ほら。「私、嬉しいです!」という感情を、私に抱きつく事で示してるもん。驚きの大きさを誇る双丘に包まれる顔、やばいです。何がやばいって、やばいとしか言い様が無くなるくらいにやばい双丘で……。

 何回やばいって言ったかな?


「お、お姉ちゃん、あのね、私が女の子好きだって忘れた?」


「大丈夫、お姉ちゃんとして頑張りますから……!」


「エルティナ、落ち着きなさい。好きな人とか居るでしょ? 妹に捧げて良いわけ?」


「好きな人なんて居ません。強いて言うならアリスちゃんが大好きになりました。ええ、妹の為ならこの身を捧げて見せましょう……!」


「常識人だと思ってたのに……」


 やめたげて、フィリス。シスコン(?)を拗らせてるだけだと思うから。たぶん、妹が居なかった反動じゃない? 暫くしたら普通になる……閃いた!


(フィリス、いい事思い付いたよ)


(何でもいいから試してちょうだい)


 長年の付き合いでアイコンタクトが出来るようになっている私達は、言葉を発さず考えている事を理解し合った。


「お姉ちゃん、まだ説明することあるよね?」


「ありますけど……アリスとお話したいですし」


 そう言ってくれるのは嬉しい。

 でもね、色々と困っちゃう。私と言うより、お姉ちゃんの私生活に影響が出そう。王女様としての大事な仕事中に抜け出してきたり……わお、本当にやりそうで怖い。


 だから、


「ちゃんとしてくれないと嫌いにな――」


「そんな酷い事言わないで下さいっ! 私はアリスと一緒に居ることも許されないんですかっ!?」


「だから、ちゃんとしてくれれば……」


 足りない……何かもう一押し必要だね。

 というかさ、キャラ変わりすぎじゃない? これはこれでいいキャラしてると思うけど……


「あ、ねえねえ、お姉ちゃんがちゃんとしてくれたら、何でも一つお願いを聞いてあげるっていうのは?」


「……何でも、良いんですか?」


「まあ、お姉ちゃんが変な事をさせるとは思わないし」


 男の人と寝て下さい、とか言わないのは分かってるもん。どちらかと言えば、『男の人と話さないで下さい』なら言いそう。


「約束、出来ますか?」


「う、うん」


 その念押しは何……?


『契約が成立しました』


「ふぁ? け、契約?」


 何それ、と思いつつ開く。


『契約···エルティナが本日の役目を果たした瞬間から、アリスへの〝お願い〟が可能になる。


 ・ペナルティ···無し。

 ・お願いの制限···無し。

 ・達成条件···アリスとフィリスに説明を終えた後、浴場へ案内、アルティアとの謁見、部屋の案内、を順番に行うこと。』


「今日の予定を知ってしまった……」


「便利ね……普通に地球より発達してるじゃないの」


「ホントだねぇ……」


 遠い目をして「ふっ」と笑うフィリス。

 それと、お姉ちゃん。どうして「何でも……うふふ」って悪戯っ子の顔をしながら笑ってるの? ちょっぴり怖い。大丈夫、お姉ちゃんは酷いことなんてしないよね!


「では、ユニオンの説明から始めましょうか」


「「あ、はい」」


 切り替えは早いんだね。切り替えは。

 ダメなお姉ちゃんっていうのもありなんだけどさ……王女様はそれじゃまずいから。


「エルティナさん、この『種族』『体質』『姫能』っていうのはなに?」


「お姉ちゃんって呼んで貰えないんですか……?」


「お姉ちゃん「はいっ♪」……って言うとこうなるかなって思ったから、大事なことが終わるまではエルティナさんね」


 今度は、しょんぼりした感じで「はい……」って返事するお姉ちゃん。正直に言うと可愛い。

 それからは、最初の様にしっかり話すお姉ちゃん。きっと、妹関連で暴走するだけで、これが本来のお姉ちゃんなんだろうなぁ……。


 頑張れ、お姉ちゃん!

次回、エロ種族とお風呂での一幕。


お姉ちゃん、いつもはちゃんとしてるんです……

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