戦争。
彼女は、とても優しく穏やかで純粋な人だった。
俺が名前を呼び、話しかければ花を咲かせたような笑顔でこちらを向く。
そんな人だった。
新兵の中でも人気な方だったと思う。
しかし俺は彼女と活動する部隊が違い、離れ離れとなった。
俺は後方、彼女は最前線。
次もし会う機会があったなら、また話そう。
そんな約束を交わした。
次に彼女と会ったのは六年の月日が経った時だった。
俺は久々の休みの日に、同期に会うため違う兵舎へと行っていた。
その敷地内で見かけた。
昔の姿とはかけ離れた姿の彼女を。
長い髪は短く刈られ、まだ華奢だった体は少し逞しく、暖かかった雰囲気は冷たく凍え、天使のような微笑みは欠片もなく、生き生きとしていた目はひどく凍りついていた。
自分でもよく彼女だとわかったものだ。
「あ、…おい……」
「ん?……あぁ、なんだ君か。」
声をかければ昔と変わらないものが何かあると思った。
しかしかなり変わった。
そこにいるのは初々しい新兵ではなく、いくつもの戦場を生き抜いた兵士だった。
「よ、よお…。久しぶり…。」
「うん。久しぶり。」
特徴的だったくりくりとした丸い瞳は今や伏せ目がち。
でもそれでも薄く口もどけ微笑むのは彼女だ。
「お前、だいぶ変わったな。」
そう言うと彼女はもっと冷めた目をしてこう言った。
「変わらなきゃ生きられなかった。」