初恋。
彼は私の初恋だった。
「あ、先輩!こっちッスよ!」
中学を卒業して3年。
もう高校も卒業する年だ。
あの頃と何ら変わらない彼は、私の一つ年下の後輩。
相変わらずの眩しい笑顔をこちらに向け、片手を上げて自分の場所を示していた。
「久しぶりだね。元気してた?」
私も演技は上手くなったと思う。
久々に会う初恋の人を前に、涼しい顔で話しかけることが出来るのだから。
「俺はいつでも元気っすよ!先輩の方はどうです?」
彼はほんとに何も変わらない。
このカフェの、私たちのこの席だけ昔のままみたい。
私も変わってないのかな。
「私は……まぁまぁかな。」
「なんすかそれ。笑」
いや、私はひとつだけ明らかに変わったところがある。
「あ、聞いてくださいよ。この前話した彼女のことなんですけど〜……」
あの頃は彼の口から出る女の子も、その名前も、その話も全て嫌だった。
でも今は
「うん、それで?」
この初恋を叶えようとしなくてよかったと思ってる。
「それで彼女が〜……」
だってもし叶えようとして振られてたなら
「って先輩、ちゃんと聞いてます?」
こうして会って話すことも出来なかったでしょ?
「うん。ちゃんと聞いてるよ。」