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大人。
「先生、好きだよ。」
私がそう言うたびに、先生は困った顔をする。
そして少し間をあけていつもこう言う。
「お前なぁ、大人をからかうなよ…。」
先生は私を廊下に残して職員室へ戻ろうとした。
「私が子供だからですか。」
先生はドアにかけた手を止めてこっちを見た。
「その通りだ。わかってるなら教室戻んな。」
「私が、大人ならいいの。」
先生はまた困った顔をした。
「そうだな、お前が大人なら考えてもいいな。」
先生はそう言って職員室へと入って行った。
次の日、先生は入籍したらしく左手の薬指にシルバーの指輪をつけていた。