第二章 『乙女たちの騎士団結成』A
次の時間の授業。
学園の生徒たちは、騎士になるため訓練と座学を習得していた。
「はぁい、みなさん。入学式からはや1か月となりました」
座学の教員、エステラがやんわりとした口調で講義を始める。
「みなさんはこの騎士学園の1学年。卒業まであと2年、ということですね。あなたたちは卒業すれば晴れて騎士となります。まぁ、留年とかしちゃったらダメなんだけど」
エステラが言うと、数人の生徒が顔をうつむける。ケルベロス騎士学園はアテナ王国直属の学園であるため、成績評価もとくに厳しくなっている。そのため、少なからず留年してしまう生徒もいるのだとか。
「というわけで、1学年の皆さんはこれから騎士の集団である『騎士団』の予行演習として、『見習い騎士団』の課題を課します」
エステラは皆に羊皮紙を配る。
タケミはそれを斜め読みする。どうも『見習い騎士団』の課題の詳細が書かれているようだ。
「課題の内容は羊皮紙に書いてあるとおり、4~10人からなる、学園内の生徒による『見習い騎士団』を結成してもらって、正規の騎士団がやる依頼……に似た演習をこなしてもらう、という感じよ」
(騎士団の……予行演習ねぇ)
騎士団とはアテナ王国全土を跋扈する魔物、もしくはそれに批准する脅威から人々を護法する組織である。
卒業したらなる正規の騎士団は4~20人の集団となるそうだ。騎士団は騎士団本部、支部より伝えられる依頼を受けて活動をする。
依頼の内容はさまざま。
ドラゴンを退治してほしいだとか、スライムを駆除してほしい、オークを倒してほしい、また、山に住み着く山賊を追い払ってほしい、人探しをしてほしいなど。さらには貴族の婦人の浮気調査。不正な取引の調査、飼い猫、飼い犬を探してほしいなど、ピンキリである。
「依頼の内容はB級依頼で、『ドラゴン退治』よぉ」
「ドラゴン……」
「ドラゴンといっても、土人形製のハリボテドラゴンだけどね」
ふとタケミの脳裏に『ドラゴンを片手で締め上げた』噂話が浮かんだ。
噂通りに軽くドラゴンを倒せたなら楽だろうなぁ、とタケミは楽天的に思った。
「詳しい依頼の内容は後で話すとして、まずは『見習い騎士団』の結成の方法について説明するわね。騎士団の数はこの学年で10ほど考えているわ。その10の騎士団が同じ依頼を受けることになるの」
「同じ、ですか」ある生徒がつぶやく。
「そう。だから依頼の達成は早い者勝ちになるの。もっとも、退治するハリボテドラゴンは5体だから、複数の団が依頼をこなすことができるの。まぁ、ハリボテドラゴン1体倒すのも大変だろうから、おそらくは5団ほどが依頼を達成できると思うわ」
「依頼が達成できない場合は、どうなるんでしょうか」前列の生徒が問うた。
「成績は総合的に評価するわ。まず第一に団員が分裂したり、壊滅したりしたら大幅減点。あとは栄養失調や大怪我をした団員がいればその程度によって減点。そして依頼の達成度によって加点。依頼の達成度は、ドラゴンの棲む『凪の丘』にたどり着けたか、ドラゴンを倒せたか……って感じで評価するわ」
つまりただ依頼を達成するだけではダメだということだ。
『騎士団』の人間が全員固まって行動し、全員が怪我無く健康であらなければならない。いわゆる集団行動ができるかどうかも大きく評価されるというわけだ。そしてそのうえで“依頼”を達成できているかどうかが評価となる。
「騎士団の構成は、まずあなたたち1学年の生徒で結成してもらうんだけど」
「うっ……」
タケミは頬をひきつらせた。
タケミには同学年の友人が少ない。皆、男勝りなタケミを敬遠して、タケミに積極的に近づくのはエルクだけである。
(団員の最低人数は4人だから、エルクを頭数にしてもあと二人必要だが……)
タケミが考えあぐねていると、
「今回は特別に、魔導士科と聖術士科の生徒とも団を組めるようになっているわ」
(魔導士科と聖術士科だと……)
二つの単語に女剣士科の皆は小さく息を吸い込む。
「実際の騎士団も、魔導士と聖術士が必要になるからねぇ。とにかくできるだけ自由に騎士団を組んでいいわ。もしかしたら、これからも一緒に“騎士”として戦う仲間となるかもしれないから、慎重に選んでくださいね」
エステラは口をまげて笑顔をつくる。
「あと、騎士団は自由に作っていいと言っていたけど、団員の力のバランスは考えた方がいいわよ。団の中に一人くらい『魔導士』を入れておいた方がいいわね。回復の魔導術ができる聖術士がいれば心強いわね。そこのところもあなたたちで自由に決めてくださいね」
騎士団の結成、つまりは実戦である。
「『実戦ではなにが起こるかわからない』と、座学でさんざん私は話してきました。どうかその言葉を忘れず、備えを忘れず、課題をこなしてくださいね」
「はい!」
女剣士科の生徒たちは優雅に(若干一名勇ましく)返答した。
「エルク! いるかエルクぅ!」
授業が終わるとタケミは一目散にエルクのいる席へと向かった。
大学の講義室みたいな階段状の教室を駆け上がり、目を引く銀色の髪を見つけ、疾風のごとく駆け上がる。
「タケミさん、どうしたんですかぁ!」
エルクは突然現れたタケミを目にし、頭から蒸気を吹かした。
「お前が、必要だ!!」
「え、えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」
突然の電撃告白。
に、エルク、および1学年の学生が湧き出した。
教室中がどっと騒がしくなり、ひゅーひゅーと高い歓声がしばらく響いたのだった。