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アンサンブル  作者: 夕顔
5/5

「おはよう」

「 お、おはよう」

「当日の朝 夜空は緊張の欠片も見せず、堂々としている」

「 最後……か」

抽選で最後を引き当ててしまったのだ

「 ラッキー」

「 何でだよ!?」

「 みんなの心に残る そういう順番だから」

「 それ 誰かが…」

「 出場者の方はこちらにお集まりください!」

「 あ、行こう」

「 うん」


「 プログラム11番の方―」

次々と演奏が終わっていく あと少しで…

「朝陽!」

発表用の衣装に着替えた夜空が戻ってきた

「よぞ…」

ドン

何が起きたかわからない ただ 体に夜空の暖かさが伝わってくる。

「 大丈夫 きっとやれる」

僕に抱きついたまま夜空が呟いた

「 …僕らならきっと」

僕もそう返した。


次、月影夜空さん、光丘朝陽くん。舞台袖までお願いします。

「 はい」

「 私たちは光と影 二人でひとつ その事を忘れないで」

僕はただうなずいた


「 プログラムー」

僕らの名前が呼ばれる

「 おい本物だぞ」

「ほんとだあの光丘朝陽だ」

客席がざわついてる

僕は絶滅危惧種扱いだな。でも、まあ 急にいなくなったんじゃ仕方ないか。

彼らのおかげ(?)で大分緊張感が無くなった。あとは 楽しむだけだ。

二人で礼をして位置につく。夜空と目が合う。少しうなずいて見せると、夜空も少しだけうなずいてくれた。

悲劇的に始まるフルートとピアノの旋律。悲しみを表すフルートの高音はウンディーネの悲鳴のように響く。

2人で作り上げてきた音楽。


届け!


突然、ピアノだけになり、ゆったりとしながらも少し悲しく優しげなメロディーが続く。

ウンディーネは裏切られ、それでも愛し続ける。ウンディーネの優しさ、悲しみが入り混じったメロディー。

どうしたらそこまで愛を貫けるのだろう。

そして、2人とも息絶えるように静かに終わる。


パチパチパチ


いつのまにか終わっていた。

この空気久しぶりだな。

2人で礼をして退場する。

「お疲れ様!」

開口一番、夜空がとびっきりの笑顔で言ってくれた。

「ああ、お疲れ様」

「すっっっごい良かったよ!別人みたいだった!」

「ありがとう」


結果は金賞。

以前は当たり前と思っていた結果が、特別に見えてくる。

「夜空、ありがとう」

「何?どうしたの?」

と、無邪気にきいてくる夜空は、可愛かった。

舞台の上での彼女は、特別かっこよかった。

なんて、口が裂けても言えない。

「さあ、帰ろ!」

そう言って、手を絡ませてきた。

「えっ!ちょっ……」

「イイじゃん、イイじゃん。頑張ったんだから」

それとは関係ないけど、嬉しかった。

顔が熱くなる。横を見ると、夜空の顔も少しだけ、赤くなっていた。

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