◆8 プリプレイは続くよ、どこまでも(完結編)
というわけで、いよいよキャラクターの名前を決めないといけない時間がやって来た。
名前が決まらないと始められない。
あと、よくわかんないけど『所属』も決めなきゃいけないぜ!
劇辛党:っていうわけで、早く名前決めてー。
一同:はーい。
下げ友:もしかして『キサラギ』とか『チハヤ』って名前にしたら、何かいいことある?
劇辛党:ほー、やってみろや(凄笑)。
下げ友:イヤ、イイデス、スミマセン。
寝落ちリア充:謝るの、はやっっ!!
劇辛党:で、名前決めるの困ってる人いるー?
一同:はーい!
劇辛党:全員かよ!
まあ、そんな時にはコレですよ。コレ。
『キャラクター命名表』。(ルールブックを開いて見せる)
一同:おお!
劇辛党:出身国別に名字と名前が載っているから、ダイス振って決めてもいいし、自分で選んでもいい『RoC』で決めれば?
腹黒演劇乙女:これはすごーい!
寝落ちリア充:これなら、決められるね。
下げ友:そうだな。……多分。
「劇辛党の愛する『チハヤ・キサラギ』の名前の一部でも拝借すれば、殺されにくくなるかもしれない」
と考えた下げ友だったが、どちらかというと殊更にヘイトを上げたうえ、名前も決まらないという状況に陥ってしまった。
しかし! 『キャラクター命名表』のチカラによってみんなの名前が無事に決まりそうである。グゥレィト!
というか、ダイスを振って、何となく気に入らない並びだと振り直す。
そんな感じだった。
部屋の中にダイスを転がす音が響き渡る。
そんな中、ただ一人、ダイスを握りしめ、テーブルを睨んでいる者がいた。
時間をかける少女:あのさぁ、私、『アバター』なんだけど、どこの国の『キャラクター命名表』から選ぶといいの?
劇辛党:んー、『アバター』なら『アルトクラン王国』かなー。
“石英の格子”を崇めている国だから。
まあ、別に好きな名前でいいんじゃないかな?
時間をかける少女:えーと、『ミルキー』とか?
そう、彼女が睨んでいたのは、不二家のミルキー。
テーブルの上には、時間をかける少女が愛してやまない不二家のミルキーがあったのだった。
正確にはミルキーの包み紙の山が。っていうか、みんなの分がなくなってるよ!?
劇辛党:や、『好きな名前』っていうのは、『好きなお菓子の名前』という意味じゃない(キッパリ)。
時間をかける少女:そっか。そうだね。じゃあ、やっぱりやめようっと。
何にしようかなー。
腹黒演劇乙女:お花の名前とかは?
時間をかける少女:そうだね! それがいいね!
劇辛党:『ラフレシア』とか?
時間をかける少女:ちょっと! その花、すごく臭いんでしょ!?
下げ友:『ドリアン』とか?
時間をかける少女:ちょっと! それって花じゃないし! しかも臭いし!
寝落ちリア充:『メロン』!
時間をかける少女:オイ! いや、好きだけどね。って花じゃないじゃん!
劇辛党:『アマランサス』は? かわいいよ?
時間をかける少女:あ、その名前いいね! それにしようっと。
下げ友:でも、何か呼びづらくないか?
時間をかける少女:んー。そうだね……。確かに。かわいいけど。
……あ、じゃあ、名前は『アマランサス』だけど、みんなからは『アミー』って呼ばれてるってことで。
傭兵団の団長さんの『ジューリア・ブライツヘッド』さんにつけてもらったんだよ。きっと。
劇辛党:いいんじゃないですか? それ。
で、他のみんなは?
寝落ちリア充:僕は、『モーゼル・ルーカス』にしたよ。
腹黒演劇乙女:私は、『カトレーン・バウアー』。軍人ぽいよね。
下げ友:俺は、『ジーノ・ガリバルディ』。『ジーノ』って呼んでくれ。
腹黒演劇乙女:え、と。『ジーノ……』何だっけ?
あ、『ガンバルディ』?
下げ友:違うわ! 何だよ、そのいかにも頑張らなきゃいけません的な名前は?
腹黒演劇乙女:えー? じゃあ、何?
下げ友:『ガリバルディ』。
腹黒演劇乙女:そっか。ちょっと、みんなの名前、メモっとかないとね。
下げ友:おう、そうだ。そのとおり。
そう、TRPGをする時に大切なこと。
ほかのPCの名前をメモしておくことだ。
せっかく名前を決めたのに、仲間から「なあ、お前のキャラさー」とか言われると悲しい気分になってしまう。
『アマランサス』がどんな花なのかは知らなくても、時間をかける少女との間で、
「なあ、ロリババアの名前って『アマランサス』だったよな?」
「黙れ!」
と小粋な会話が交わせるくらいにはなっておきたい。
だから、お互いにキャラの名前はメモっておこう。メモっておこう。
大事なことだから、2回書きました。断じて打ち間違いではありません。
劇辛党:じゃあ、みんな名前も決まったんで……って、ところで、みんな何歳?
腹黒演劇乙女:何歳くらいがいいの?
劇辛党:何歳でもいいけど……。
まあ、そうだね。『MIST』襲来があった竜歴2000年よりも前に軍人になっているかどうか……を知りたいかな。
寝落ちリア充:えーと、何歳くらいから軍隊に入るの?
劇辛党:まあ、早くて15歳くらいかな?
腹黒演劇乙女:で、今は何年だっけ?
劇辛党:竜歴2005年。つまり5年前に『MIST』襲来があったわけ。
下げ友:じゃあ、23歳。15歳で軍に入って、その3年後に『MIST』の襲来があった感じかな。
寝落ちリア充:僕は21歳。入隊1年後に襲来。
腹黒演劇乙女:私は22歳。入隊2年後に襲来。
時間をかける少女:ねえ、『アバター』って何歳くらいが普通なの?
劇辛党:『アバター』の外見はせいぜい少女くらいですけど、実年齢は何歳でもいいですよ。
それこそ、0歳から2000歳でも。好きな年齢で。
下げ友:つまり、ロリババアもできるわけだ。
劇辛党:ま、できますけどね。
時間をかける少女:やらないよ! 5歳にする!
下げ友:5歳?
劇辛党:つまり、『MIST』襲来の年に目覚めたってことですね?
時間をかける少女:そう。それで、その時に団長さんのジューリアさんに名前を付けてもらったの。『アマランサス』って。
劇辛党:わかりました。
きっと、“石英の格子”も思うところがあったのかも知れませんね。
時間をかける少女:きっとそうだよ!
劇辛党:まあ、みんな、それなりに歴戦の軍人なんですね。
じゃあ、結構ハードでも大丈夫ですよね。
なにせ歴戦の強者、なんですからね。
一同:ウ……ウン。
劇辛党:じゃあ、『所属』を決めますか。
下げ友:『所属』? みんな『バハムート』に乗るんじゃないの?
劇辛党:乗るよ。
決めるのは、「みんながどんな立場で乗っているのか」なんだよ。
今のところ、考えているのは「正規軍」か「傭兵団」のどちらかを選んでもらおうかと。
「正規軍」っていうのは、『DAF』。正式名称は「Dragon Alliance Forcec」。『対MISTの切り札』って言われている。
「傭兵団」っていうのは、『傭兵団ナーガロンド』。『“巨竜艦”バハムート』に乗り込んでいる傭兵団。
時間をかける少女:あ。ジューリアさんが団長をしているところだよね。
劇辛党:そうそう。
で、この2つのうちから選んで欲しいんだけど。
下げ友:『DAF』を選ぶか『傭兵団ナーガロンド』を選ぶかで話が変わるってこと?
劇辛党:まあ、立場が変わるんで、そういうことになるかな。
傭兵は『DAF』に金で雇われているわけだしね。
寝落ちリア充:ねえ、『ナーガロンド』ってどんな意味?
劇辛党:「踊る神蛇」だね。ちなみにエンブレムは『ウロボロス』つまり「自分の尾を飲み込む蛇」だよ。
腹黒演劇乙女:1人1人別々に好きな方を選ぶの?
劇辛党:いや、シナリオが始まったら、必然的に4人で小隊を結成してもらうことになるので、同じ所属にして下さい。
腹黒演劇乙女:そっか。
っていうか、『DAF』を選ぶのが普通なんじゃないの?
劇辛党:まあ、そうなんだけどさー。
ホラ、腹黒演劇乙女サンとか寝落ちリア充クンとか、何かアレじゃん?
だから、選択肢を増やしてあげようって思ってさー。
腹黒演劇乙女:う……。
寝落ちリア充:確かに……。
腹黒演劇乙女のキャラは「DAF上層部に対する反感」。
寝落ちリア充のキャラに至っては「親が本当にやっちゃった系の犯罪者」。
これは、もういくら給料が良くても正規軍の『DAF』にいられませんよ。
下げ友:例えば、俺は軍人の家系だから、『DAF』から『ナーガロンド』へ出向する場合もあるのか?
劇辛党:それは充分ありえますね。
っていうか、傭兵団なんて組織には楔を打っておきたいですよね?
下げ友:ちょい待ち!
傭兵でも『サンダーヘブンハンマー』を撃ってもらえるのか?
つまり、正規軍の『DAF』にいなくても。
劇辛党:もちろん撃ってもらえますよ。
だって、『OERS』で取ってるじゃないですか。
下げ友:まー、そうなんだけどさー。ね?
下げ友からの被害妄想気味の発言であった。
やっぱり、ほら、格差社会を目の当たりにしてるじゃないですか。だから。
劇辛党:で、どうします?
時間をかける少女:私は、団長のジューリアさんがいるから『傭兵団ナーガロンド』でいいよ!
っていうか、『ナーガロンド』がいい!
腹黒演劇乙女:わかったー。
寝落ちリア充:いいよー。
下げ友:まあ、『サンダーヘブンハンマー』を撃ってもらえるなら。
劇辛党:じゃあ、『所属』は『傭兵団ナーガロンド』でいいのかな?
一同:いいでーす。
劇辛党:ちなみに全員〈階級※〉を上げていないから、『準竜士』という階級なんだけど。
これは、正規軍の『DAF』で言えば、下級士官にあたるんだよ。
一同:へー。
寝落ちリア充:じゃあ、一番下の階級なんだね。
劇辛党:いや、もっと下の階級があるから一番下じゃない。
ただ、幹部候補生では一番下になるけど。
腹黒演劇乙女:そうなんだー。
劇辛党:なんだけど、『傭兵団ナーガロンド』に所属している者には階級がありません。
一同:えー。
劇辛党:傭兵団だからね。
その代わり、『準竜士』待遇が与えられているよ。
下げ友:なるほど。
時間をかける少女:……ねえ、劇辛党。
『階級』を書く欄の下に『MIA』とか『KIA』ってのがあるんだけど? チェックできるようになってるけど、これって何?
劇辛党:ああ、やっぱり気になりますか(ニヤリ)。
『MIA』は『Missing in Action』の略で、「作戦行動中行方不明」のことを言います。
簡単に言うと、騎体が壊れたりして生死不明の状態になった時にチェックします。お楽しみに。
時間をかける少女:全然お楽しみにじゃないよ!
……あ、じゃあ『KIA』は……。
劇辛党:ご名答。
『KIA』は『Killed in Action』の略で、「死亡状態」です。
最早、どうにもなりません。
腹黒演劇乙女:ひー。
劇辛党:やだなあ、そんなことあるわけないじゃないですかー(棒)。
一同:ウ……ウン。
劇辛党:じゃあ、キャラの外見を決めてもらったら、シナリオを始める前に軽くキャラ紹介をしてもらおうかな。
一同:はーい。
寝落ちリア充:外見って自由に決めていいの?
劇辛党:まあ、一応、出身国によって違いはあるけどね。
そこら辺は、ルールブック見て、自由に決めていいよ。
一同:やったー!
というわけで、ついにキャラクターが完成したグリップダイスの面々(ただし外見を除く)。
これを読んでいらっしゃる方々の中には、
「オイオイ、キャラ作るのに2週間以上かかってるんじゃね?(リプレイ的に)」
と思っている方がいるかもしれません。っていうか、書いてて自分で思いました。
ご安心下さい。
リプレイに書くと長くなるけど、実際には2週間もかかりません。当たり前か。
ルールブックに載っているサンプルキャラに名前をつけて使うなら、シナリオ開始までの所要時間は、ルールの把握時間を入れても30分かかりません。最短10分くらい。多分。
普通にキャラを自分で作っても、ルールの把握具合によるけど、多分1〜2時間で済むのではないかと。きっと。
とは言え、こうやってグダグダとキャラを作るだけでも充分楽しめるのがTRPG。
でも、作ったら動かしたくなるのが人情ってもんですよ、ダンナ。
だから、もし、
「TRPGしたいけど、仲間をどうやって増やしたらいいんだ?」
って人は、
「とりあえず、キャラ作ってみる?」
とか言えばいいんじゃないかな? と思います。(その場合は自分がGMをやることになるけど)
というわけで、キャラ紹介を挟んで、遂にシナリオ本編に入ります!
待て! 次回!