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◆4 プリプレイ 運命は扉を叩く

 「キャラのイメージが湧かないから技能が割り振れない」などと言い出す不届き者(全員)に対し、劇辛党は額の汗を拭いつつ、厳かとも言える重々しい声で宣言する。



 「……まず『ライフパス』から決めよう」



 劇辛党の宣言に、グリップダイスの面々もダイスを握り締めたまま黙って頷く。

 彼らのキャラクター(名前未定)の運命はこれから決まるのだ……。




劇辛党:じゃあ、『ライフパス』決めてくよー。


一同:はーい。




 『ライフパス』は『出自』『境遇』『人物』の項目に分かれる。


 『出自』は、そのキャラクターの親が何をしていたのか。政治家だったり、貧乏だったり。


 『境遇』は、今までの人生で、何を経験し、誰と出会い、何を思ったのか。恋愛したり、策謀に巻き込まれたり。


 『人物』は、今までに誰と出会い、どのような関係を築いたか。ルールブックに載っている有名人(“巨竜艦”バハムートに乗っている人が多い)の中から。


 ダイスを振って決めてもいいし、選んでもいい。

 それを『ROCロール・オア・チョイス』という。

 まあ、しっかりとキャラが決まっていないのが普通なので、取りあえずみんなダイスを振り出す。




劇辛党:じゃあ、誰から行く?


下げ友:じゃあ、俺から行くよ。


劇辛党:了解。ダイスを1個ずつ振ってー。まず『出自』から。


下げ友:わかった。(コロコロ)


劇辛党:ん。えーと……「軍人家系」だね。

    「有名な軍人を排出する家系に生まれた」だって。

    で、『一般技能』として〈知識:軍事学〉を1レベル取得。


下げ友:おお。何か良かった。


一同:いいなー(拍手)。


劇辛党:じゃあ、『境遇』。


下げ友:(コロコロ)


劇辛党:「親友」。「あなたには親友がいる。ルールブック内の人物でもいいし、オリジナルでも構わない」だって。取得感情は「友情」。


下げ友:「親友」。いいね。ユウジョウ!!

    でも、(ルールブックを確認)誰にしたらいいのか……。


劇辛党:とりあえず先に進むよ。

    『人物』を。


下げ友:(コロコロ)


劇辛党:『レイナ・フォーサイス』だね。

    バハムートにいるカレドア連邦出身の整備士。25歳。女性。

    (イラストを見せる。なかなかいい感じに親しみのある美人)


下げ友:やったね!!


劇辛党:あ、『感情』を決めなきゃいけないので、ダイス振って。


下げ友:「恋愛」来い! 「恋愛」来い!(コロコロ)


劇辛党:「尊敬」だね。「あなたは相手を尊敬しています」。


下げ友:「尊敬」……。

    恋人同士みたいな感じかな?


劇辛党:明らかに違います。


下げ友:しかし、「尊敬」から始まるモノがあるかもッッ!!


腹黒演劇乙女:ガンバレー(棒)。




 ※ちなみに「恋愛」の項目はありません。

  なお、『感情』は相手をどう思っているかで、相手からどう思われているかではありません。危うくストーカー。




劇辛党:で、「親友」はどうする?


下げ友:じゃあ、カレドア連邦出身がいないから、そこ出身の戦友ってことで。

    名前は……。


劇辛党:「キャラクター命名表」があるよ。国別の。


下げ友:(コロコロ)では、『伊佐治颯馬いさじ・そうま』で。


劇辛党:じゃあ、こんな感じでどんどん行きましょう。

    あ、そろそろ自分の名前も決めておいてね。


時間をかける少女:どんな名前でもいいの?


劇辛党:自分の出身に合った名前ならね。


一同:はーい。




 こうして、次々とキャラクターのライフパスが決められていくことに。




劇辛党:じゃあ、次は?


寝落ちリア充:僕で。(コロコロ)


劇辛党:『出自』は……「犯罪者」。

    「あなたの親は犯罪者だった。実際に犯罪を犯したか、冤罪だったかは自由に決めて良い」だって。

    取得技能は〈隠密〉1レベル。


腹黒演劇乙女:「犯罪者」なんてのもあるの!?


劇辛党:ほかにもいろいろありますよ。

    で、どうする?


下げ友:やっぱり冤罪だろ。


寝落ちリア充:うーん……。

       本当にやっちゃった方で。


一同:マジか!!(※寝落ちリア充のリアルには関係ありません)


劇辛党:何をやっちゃったんだ?


寝落ちリア充:MISTとの戦いの最中に敵に寝返った。


一同:マジか!!(※重ねて言いますが……)


腹黒演劇乙女:それはやっちゃったね……。


下げ友:やっちゃいすぎだろ!?


劇辛党:いや、いいと思います。わかりました。

    では、『境遇』を。


寝落ちリア充:(コロコロ)


劇辛党:「好敵手」。

    「あなたは、ライバルに出会った。掲載されているNPCの中から選んでもいいし、自由に設定してもよい」だって。

    感情は「競争心」。「常に相手に勝ちたいと思っている」。

    何か主人公っぽいね。


寝落ちリア充:えーと……。(ルールブックの掲載NPCを見る)


下げ友:(横からのぞき込んで)なんか、アレだね。

    エライ人ばっかり載ってるから、この「艦長」とかライバル視することになるのかな。


劇辛党:イタすぎるでしょー。


寝落ちリア充:じゃあ、載っていない人で。

       命名表で振って決めるよ。

       同じエクスタリア王国出身で。(コロコロ)


劇辛党:『ウィリアム・アシュビー』です。


寝落ちリア充:じゃあ、お父さんの件もあるから、そいつに「エクスタリアの面汚し」って言われている。


劇辛党:了解。っていうか、スゴイ濃い設定になってきたね。

    さっきの軍人家系とか、当たり前すぎる感じ。


下げ友:まあ、寝落ちリア充が特殊すぎんだろ。


劇辛党:まあねー。じゃあ、『人物』行ってみようか。


寝落ちリア充:わかった。(コロコロ)


劇辛党:『ジョン・ローレンス・スミス』だそうです。


寝落ちリア充:誰、それ?


劇辛党:『バハムート』に搭乗している従軍記者だね。エクスタリア王国出身。

    説明を読むと「甘いマスクの飄々とした性格で人の懐に入り込む」ってあるけど……。(ルールブックのイラストを示す。ニヒルな感じの後ろ髪が長い男)


時間をかける少女:目つき、わるっっ!


劇辛党:年齢不詳だそうです。


下げ友:まあ、男だからどうでもいいんじゃないか?

    俺、『レイナ・フォーサイス』さんでホント良かったよ!


腹黒演劇乙女:ガンバレー(棒)。


劇辛党:『感情』も決めるので、ダイスを。


寝落ちリア充:(コロコロ)


劇辛党:えーと『連帯感』? 「あなたは対象を仲間であり、共通の意識で常に結ばれていると思っている」だって。

    何か、本格的にヤバイ人の雰囲気になってきたね。


寝落ちリア充:フッ。(軽い笑い)




 寝落ちリア充のキャラのライフパスは壮絶な過去を思わせるものに仕上がった。

 しかし、なぜか満足げな寝落ちリア充。




劇辛党:次の人、行ってみよう。


腹黒演劇乙女:じゃあ、私。


劇辛党:はい、『出自』。


腹黒演劇乙女:(コロコロ)


劇辛党:『医者』。「あなたの親は医療に従事していた。いざという時のため、親は簡単な治療の方法を教えてくれた」だって。

    取得技能は〈治療〉を1レベル。

    勝ち組だね。


腹黒演劇乙女:わーい。


劇辛党:じゃあ、『境遇』を。


腹黒演劇乙女:はーい。(コロコロ)


劇辛党:『敗北』。「無能な上官の無茶な命令のためにあなたの所属していた部隊は作戦に失敗し、MISTに敗北した」らしいよ。

    わかるな、そういうの。あるよね。


下げ友:わかるわー。




 やたらと上層部(おそらくリアル)に対する反感を主張し、連帯感を深める劇辛党と下げ友。

 いわゆる負け組である。




劇辛党:取得『感情』は『DAF上層部』への「反感」。

    いい感じにとんがってるねー。

    っていうか、下げ友のキャラが薄く感じるねー。


下げ友:えー? いちいち俺をディスるのやめてくんない?

    何か、俺には責任ないよね?


劇辛党:でも事実だからねー。


腹黒演劇乙女:『DAF上層部』への「反感」って、『バハムート』の艦長とかに反感を持ってるってこと?


劇辛党:別にそういうわけじゃないよ。

    個人とかではなく、組織の上層部に対する反感ってことだね。


腹黒演劇乙女:なるほどー。


劇辛党:じゃあ、『人物』を。


腹黒演劇乙女:いくよー。(コロコロ)


劇辛党:『サラ・バニー』。『バハムート』の中にある軍食堂のおばさんだね。

    A.R.K出身の39歳。

    「24時間営業の調理場にたいていの時間立っている。血の気の多い軍人も一喝して黙らせる。豪快できっぷが良く、ざっくばらんで観察力もある。くだけた調子でさり気なく気を使う。さり気ない優しさの持ち主」らしいよ。「奇妙な材料を使うけど味は悪くない」っていうことも書いてある。


腹黒演劇乙女:カッコイイね!


劇辛党:『感情』を決めるから、ダイスを。


腹黒演劇乙女:いいのが来ますように……。いいのが来ますように……。(コロコロ)


劇辛党:「憧憬」。「あなたは対象に憧れている」って。


腹黒演劇乙女:やったー。




 それはそれとして、腹黒演劇乙女の人は「敗北」くらい漢字で書いて下さい。

 「敗ぼく」ってキャラクターシートに書いてあると、何かカッコわるいです。




劇辛党:じゃあ、最後に時間をかける少女。

    『出自』いくよー。


時間をかける少女:いっくーよー!(ダイスを握りしめる)


劇辛党:いや、あの『アバター』だから、もう決まってるんですけど……。


時間をかける少女:そっか。なにせ『アバター』、だからね。(自慢げ)


劇辛党:『出自』は『神の使徒』です。

    あなたは『石英の格子』の分身です。

    えーと、妖精? みたいな存在。


時間をかける少女:石英って水晶だよね?


劇辛党:えっと……。


下げ友:違うんじゃない? 石英の結晶みたいなものが水晶じゃないの?


時間をかける少女:石英って水晶でしょ?


劇辛党:まあ、別に間違っていないかな……。


時間をかける少女:じゃあ、水晶だね。


下げ友:いや、違うだろ。名前が違ってるんだし。


時間をかける少女:ねえ、劇辛党。水晶だよね?


劇辛党:まあ、そうだね。


下げ友:いや、おかしいだろ。甘すぎるよ!?


劇辛党:はい、じゃあ、議論は終わりでー。

    あ、『出自』で〈知識:魔導〉をレベル1ね。

    次、『境遇』を振って。


時間をかける少女:いくよー!(コロコロ)


劇辛党:えーと『大病』? 『アバター』は病気にならないからなー。

    もう1回。


時間をかける少女:(コロコロ)


劇辛党:『事故』。これならいいか。

    「あなたは事故に遭い、大怪我をしたことがある。九死に一生を得て、かろうじて助かった」?

    『アバター』の事故って?


下げ友:やっぱ、交通事故じゃないの?


劇辛党:何か安易な感じだよね。

    やっぱりもっと大事故じゃないと。


時間をかける少女:(閃いて)地震とか!!


下げ友:それは、災害だけど……。


劇辛党:じゃあ、いっそ、先に相手の方から決めようか。


時間をかける少女:そうだね。(コロコロ)


劇辛党:えーと『七瀬茉莉花ななせ・まりか』。


時間をかける少女:誰? それ?


劇辛党:(ルールブックを確認)『バハムート』に搭乗しているアイドルだね。

    「現在、特に若者の人気を集めている」らしいよ。

    あれだね、『マクロス』の歌姫『リン・ミンメイ』みたいな。


下げ友:古いよ!

    せめてそこは『ランカ・リー』か『シェリル・ノーム』だろ!?


劇辛党:ごめんよ〜。

    で、取得『感情』 は「嫌悪」。すごく嫌っている感じ?


下げ友:完全に妬みだな。


時間をかける少女:事故だから! 交通事故! 妬みとかないし!


腹黒演劇乙女:でも、アイドルの子が交通事故を起こして放っておくかな?


劇辛党:そこはやっぱり、事務所の運転手が事故を起こしたけど、マネージャーが「茉莉花ちゃん、大丈夫。ちゃんとやっておきましたから。早くしないとライブが……」とか何とか言いくるめてライブ会場へ行っちゃって、後は放置。みたいな感じ?


時間をかける少女:じゃあ、茉莉花ちゃんは悪くないじゃん。


劇辛党:まあ、アイドルっていうのは、その個人の話だけじゃないですからね。

    事務所とか、そういう組織も含めてアイドルという存在ですから。



 やたらと芸能事務所事情に詳しい劇辛党。

 『アイドルマスター』で培った実力は伊達じゃない!!



劇辛党:最後に『人物』を。


時間をかける少女:はいやっっ!!(コロコロ)


下げ友:気合い入りすぎなんじゃ?


劇辛党:『ジューリア・ブライヅヘッド』。

    『バハムート』に搭乗している『傭兵団ナーガロンド』の団長です。

    エクスタリア王国出身の26歳。女性です。(イラストを見せる。そこには髪の長い美人で賢そうな女性が)


下げ友:『傭兵団ナーガロンド』?


劇辛党:はい、『ドラゴンアームズ改』では、キャラクターの所属があるんだけど、普通は『DAFドラゴン・アライアンス・フォース』という対MIST組織に入るんだよね。

    ちなみに『ナーガロンド』の意味は「踊る蛇」だね。

    傭兵としてゲームに参加することもできるから、その場合は、この『傭兵団ナーガロンド』に所属するのが多いかな。

    『ジューリア・ブライヅヘッド』はそこの団長だね。


時間をかける少女:スゴイね!!


劇辛党:まあ、このライフパスの流れだと、正規軍の『DAF』に所属するよりは傭兵の方がいいのかな?


一同:いいでーす。


劇辛党:了解。でも、『感情』も決めておこうか。


時間をかける少女:いいの来い、いいの来い。……そりゃあ!!(コロコロ)


劇辛党:『好意』。「あなたは対象に好意を抱いている」。


時間をかける少女:じゃあ、あれだね。きっと、私が交通事故に遭ったところを助けてくれたんだね。

         だから、傭兵団に入ったんだよ、きっと。

         いい人だね、ジューリアさん。


劇辛党:そうかな? それだけ聞くと、大怪我しているのをいいことに『バハムート』に乗り込ませて、自分の傭兵団に入れたみたいな感じになってるけど?


腹黒演劇乙女:ホントだね。


時間をかける少女:違うよ! いい人なんだよ。ジューリアさんは。


劇辛党:わかりました。


下げ友:(イラストを確認しつつ)確かに、こんな美人がそんな悪いことを企むはずがないッッ!


腹黒演劇乙女:ソウダネー(棒)。


劇辛党:じゃあ、『ライフパス』は終了でいいかな?


一同:おっけーでーす。




 こうして、ダイスの神に(おおむね)頼った結果、『ドラゴンアームズ』に乗る予定の面々は選ばれし者であるかのごとく、数奇な運命であったことが判明した。

 そんな中、当初、勝ち組であるかのごとく感じた、下げ友の『レギュレートアームズ』乗りは、何だかごく一般的な運命であったことが浮き彫りになった。


 しかし、下げ友は思った。「これでいいのだ」と。

 なぜなら、レギュレートアームズ乗りは、数奇な運命にさらされていないからこそ、レギュレートアームズ乗りになったのだから。


 っていうか、実際、そう思わないと心が折れそうだった。

 なんだろう、この敗ぼく感……。



 こうして、下げ友の思惑をよそに、次回、ついに『ドラゴンアームズ』(と『レギュレートアームズ』)の騎体能力が明らかになるッッ!!

 ……かもしれない。




 待て! 次回!


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