◆24-① クライマックスフェイズ ロバート艦長「《サンダーヘブンハンマー》使っていいって言ってんだよぉ! こっちはぁ!」
ついに、最終局面を迎え、三度目のブリーフィングに呼び出されたベアハッグ小隊。
どんな指令が下されるのか。
―――それは、神のみぞ知る。
【クライマックスシーン:ブリーフィング三度】
GM:じゃあ、これから、クライマックスシーンを始めるけど。
一同:はーい!
GM:全員出ることは確定しているから、最初にエーテリックのプロットをしていいですよ。
でも、チャージできるのは、このシーンか、この後の戦闘シーンで1枚ですからね。
一同:了解!
最後のプロットを行う一同。
その顔は真剣そのものである。
ある者は、勇敢に。
またある者は、慎重に。
そして、ある者は秩序立って。
GM:みんなプロットは終わった?
じゃあ、行くよー!
一同:おおーーー!
GM:では……。
ブリーフィングルームには、いつもの顔なじみとなったグエン・バンバック……以外に、見慣れない人物がいるよ。
アミー:えー!?
モーゼル:誰、誰、誰?
GM:厳しい顔つきをした壮年の男性。
眼鏡の奥には、知性と強い意志を宿した瞳。
……バハムートの艦長であるロバート・フランシス大竜将、その人だよ。
モーゼル:わぉーーーーー!!
アミー:何とぉーーーーー!
何でー?
ジーノ:きっと、悪いことしに来たんだ。
カトレーン:何でよー? (笑)
ジーノ:だから、
「お前たち全員に死んでもらいたい」
とか?
ってハッキリ言い過ぎだよー!
カトレーン:それじゃ、意味わかんないけど?
じゃあ、緊張して。
「何だろう……?
わざわざ……」
GM:「俺たち、薄汚れた傭兵様のところによぉー」
みたいな?
カトレーン:うん。まあ、そういう感じ。
GM:で、その艦長の脇にはもう一人。
モーゼル:ドキドキ。
GM:ブルブル震えたコレットが。
ジーノ:お? 何でコレットが。
アミー:どうしたんだー? コレットー。
何で震えてるのー?
GM:ほら、軍事機密とかバラしちゃったから、軍法会議にかけられて……。
ジーノ:マジで! そういうことなの!? (笑)
アミー:きっと、コレットはさ。
自分でバラしちゃったんだね。
さすが、アミー。
コレットの“親友”と自称するだけのことはある。
コレットの特性を良く理解した発言であると言える。
ただのストーカーではないことが判明した瞬間である。
つまり、“親友的ストーカー”。
感心、感心。
……なのか?
アミー:で、コレットは、自己申告したの?
ジーノ:ってことは……、
「まさか、この中にコイツから秘密を聞いた者が……!」
「違います! 聞いてません!」(ブルブルブル)
みたいなことか!?
……じゃあ、コレットの方を見るけど。
GM:カチ、カチ(過緊張気味な仕草)。
カトレーン:「ウム。緊張している
かわいそうに」
と心の中で。
ジーノ:「只今、応召しました!」
あ、えっと。自分のことは何て言うの?
「ジーノ準竜士」とか?
GM:いや、「準竜士」は、あくまでもバハムート内での待遇だから、そう言わないよ。
あなた方は、傭兵団ナーガロンドの団員ですから。
だから、まあ、普通に名前を名乗る感じだね。
ジーノ:なるほど。
「ジーノ・ガリバルディ、只今、応召しました!」
あ、違った。
「ベアハッグ小隊」が応召したんだった。
GM:そうだね。
ジーノ:じゃあ、カトレーン隊長、頼むよー。
カトレーン:うん。
「ベアハッグ小隊、揃いました!」
GM/グエン:「これが、先ほどお話しをしていました、うちのベアハッグです」
GM:すると、ロバート艦長の方は、少し打ち解けた笑いを漏らして、
GM/ロバート:「小隊、と言っているが、バラバラに切り離しても充分に働いてくれると聞いている」
アミー:(ヒソヒソ)あ、さっきのアレ(バハムート防空戦)のことかな?
GM:うん。
GM/ロバート:「先ほどの防空戦では、各方面から様々な感謝の声が届いている」
カトレーン:「は! ありがとうございます!」(敬礼)
一同:「ありがとうございます!」(敬礼)
GM/ロバート:「多少の軍規の乱れは……」
ジーノ:(ヒソヒソ)シクラメンのこと言ってんだな。
GM:そこかよ!
ちっちゃいポイントだな!?
GM/ロバート:「……傭兵団ということもあり、私の方からあれこれ言うことはない」
GM:と言うと、コレットの方が、「カクカクカク……」と頭をガクガクさせています。
アミー:「どうしたんだろう?」
と心の中で(笑)。
カトレーン:「まさか、私のシクラメンがバレたのではあるまいな?」
と心の中で。
ジーノ:「え? メシ、誘っちゃいけなかったの?」
とか、心の中で。
モーゼル:どんだけだよー。
GM/ロバート:「それでは、君たちに依頼したい任務だが……」
一同:(ドキドキ)
GM/ロバート:「……君たちの、その作戦遂行能力を買い、この任に当たれるのはベアハッグ小隊しかないもの……と作戦本部は判断した」
GM:と言いますが。
アミー:そう!?
モーゼル:(ヒソヒソ)え? どういうこと?
ジーノ:(ヒソヒソ)そこそこ使えて、かつ使い捨てにしてもいい部隊ってどれ?ってこと?
カトレーン:プククク………。
GM:そばにいた秘書官とかが、「ピッ」という感じにスクリーンに大型のMISTを映しますが。
一同:大型MIST!?
GM:“コマンダー級”ですね。
ジーノ:“コマンダー級”ってスゴイ強いんでしょ?
モーゼル:“ソルジャー級”より強いんだよね?
確か、“ソルジャー級”はドラゴンアームズといい勝負なんだっけ?
GM:はい。
でも、“コマンダー級”相手に、ドラゴンアームズ単体では歯が立ちません。
ジーノ:どのくらい強いの?
結構?
GM:うん、結構。
モーゼル:2体とか3体でいい勝負?
GM:いや、もっと強い。
一同:いぃぃぃーーー!?
GM:そのために、君たちには……。
『OERS』の力があるだろう!?
エーテリックがぁ!
そのために今まで溜め込んできたんだろうがぁ!
ジーノ:え?
そうやって言うの?
ロバート艦長が。
「『OERS』があんだろぉ!? 『OERS』がぁ!?」
GM/ロバート?:「《サンダーヘブンハンマー》使っていいって言ってんだよぉ! こっちはぁ!!」(ばんばん)
GM:って、どんだけ態度悪いんだよ、ロバート艦長!?
一同:………(あっけに取られている)
GM/ロバート?:「命令で『こっちが死んで来い』って言ったら、死んでくりゃあ、いいんだよ! 死んでくりゃあ!」
GM:オイオイ、それじゃあ、ロバート艦長、最低じゃねえかよ!
一同:………(全員、やや放心気味)
とかいう、GMの一人ノリツッコミはともかく。
えーと。
全国のロバート・フランシス艦長ファンの方々。
本当のロバート艦長は、絶対にこんなこと言いません。
そう、僕たちの勝手な妄想に生きているロバート艦長が暴走してしまったのです。
だから、悪いのは、僕たちの妄想の中のロバート艦長であって……(以下略)
ジーノ:ハイ! 質問です。
GM:はい、どうぞ。
ジーノ:これは、真面目な質問なんだけど。
“コマンダー級”相手に、PCのドラゴンアームズやレギュレートアームズが4体くらいで、普通に戦えるものなんですか?
GM:うん、そう。
モーゼル:あ、そうなの?
ジーノ:何か、もう、圧倒的に強いヤツを相手にする場面に出されるわけじゃないんだ。
GM:えーとねー。
ま、ぶっちゃけると。
そういうクラスのヤツもいるかも知れないけど。
まあ、そこまでのヤツじゃないだろうね。
でも“ジャガーノート級”ならムリ。
モーゼル:“ジャガーノート級”って……。
GM:もっとバカでかいヤツ。
ただし、“コマンダー級”を相手にする時のいいところは、“コマンダー級”MISTは、戦場での指揮も兼ねているので、
「“コマンダー級”さえ撃破すれば、他のすべてのMISTは沈黙する!」
ということが言えることだね。
ジーノ:“コマンダー級”さえ撃破……!
モーゼル:ボスさえ殺れば……!
でも、周りのMISTが、ちょっと邪魔そう。
GM:そうですねー。
アミー:あのさー、前にもそういうことがあったけど。
何だっけ?
…………。
確か……、GMが、
「ボスの『村長』を倒せば、この戦闘を終わらせることができる」
とか言った時があったような……。
モーゼル:あー、あったねー。
アミー:頑張って、ボスの『村長』を倒そうとしたのに、ザコが邪魔してさー。
GM:ああ、あれかー!
ジーノ:あの時はひどかったなー。
かの名作TRPG『セイグリッド・ドラグーン』をプレイした時のこと。
闇に堕ち、竜の力に飲み込まれた『村長』が、その力で村を中心に迷宮化させてしまった。
そこに挑んだ4人の竜脈使いは、様々な障害を乗り越え、ついに迷宮の主である『村長』のもとに辿り着いた。
しかし、『村長』の周りには何体もの魔物が。
その時、神は言った。
「元凶である『村長』さえ撃破すれば、迷宮が浄化されて、ほかの魔物はみんな沈黙する」
それを聞いたPCたちは決めた。
「よし、『村長』を集中的に攻撃して倒そう!」
だが―――。
ザコに阻まれ、『村長』のもとに辿り着くどころの話ではなく。
また、「ここでそれやっちゃアウトだろ!?」というタイミングで、ある乙女プレイヤーが、ファンブルを繰り出したことも影響し。
パーティは壊滅し、迷宮はさらに広大化するという負の連鎖を生んだのだった。
アミー:そうなんだよー。
何とかして『村長』を倒そうとしたのにさー。
周りのヤツが邪魔すぎて……。
GM:よく覚えていますねー。
アミー:だからねー、多分。
攻撃してくる数を減らした方がいいと思うよ。
GM:「これはマスターの罠だ!
“コマンダー級”に引きつけるための!」
という?
カトレーン:で、ザコを倒していくと、
「最初に“コマンダー級”やっちゃえば良かった、って言ったよね?」
みたいな。
GM:どんだけGMのこと、ヒドイ人間だと。
あなた方の人間不信は、一体どこから来てるんですか!?
モーゼル:わかった!
ジーノに頼んで、《サンダー・ヘブン・ハンマー》で「ボカン!」とぶち込んでもらえばいいんだよ。
ジーノ:えー?
何だよ、俺かよー。
カトレーン:じゃあ……、
(重々しく)「“コマンダー級”……ですか?」
GM/ロバート:「現在、機関の調子はどうだね?」
GM:すると、コレットが、ガクガク震えながら、
GM/コレット:「非常に順調です。
……バハムート機関の90%以上は修復されています。
しかし、先ほどの発艦後、急速なパワーダウンを確認。
思惟堆積方面に向けて放出した、バハムートの力が吸収されています」
カトレーン:どこから力が吸収されているんだっけ?
GM:『思惟堆積層』。
アストラル界のことだね。
そっちの世界の方に向かって、燃料を噴出して飛ぶ、という話なんだけど。
コレットが言うには、エンジンそのものは、もう9割方直っているよ、と。
だから、本来なら、もう飛ぶこともできる。
しかし、エンジンそのものじゃなくて、エンジンから噴き出したものが、まともに作用していないよ、っていうこと。
ジーノ:なるほど。
GM:すると、ロバート艦長が、スクリーンに映っていた大型の“コマンダー級”MISTを一つ指して、
GM/ロバート:「現在、バハムートは、この未確認の大型MIST“ライトハウス”による超弩級レーザーの長距離照準を受けている」
カトレーン:超弩級!?
モーゼル:照準?
「狙われている」ってこと?
GM:うん。
GM/ロバート:「この“ライトハウス”と名付けた、超大型MISTの攻撃が行われていないのは、まだ、エネルギーの準備中だからだ」
一同:…………(ゴクリ)。
GM/ロバート:「現在、作戦行動可能なD.A.Fの全兵力を使って、この“ライトハウス”を……撃破する」
ジーノ:……これは、つまり
「他の部隊も一斉に攻撃を仕掛ける。で、俺たちは、この“コマンダー級”をやるよ」
ってこと?
GM:イヤ、違う、違う。
アミー:どういうこと?
GM:じゃあ、ぶっちゃけ話をするか。まず。
カトレーン:うん。
GM:実は、この“ライトハウス”を撃破するシナリオというのは、(ルールブックを示して)こっちに載っているシナリオです。
一同:へー。
ジーノ:あ!
表舞台じゃなくて、裏側をやるってこと?
GM:そのとおりです。
一同:へーーー(感心)。
GM:つまりロバート艦長の話では、“ライトハウス”のエネルギー充填が終了する前に、バハムートが、浮かび上がれないと超弩級レーザーにやられる。
だから、その前に“ライトハウス”をやれ、というのが、今、言ったD.A.Fのメインの作戦。
一同:ふむふむ。
GM:ここからが本題。
バハムートのエンジンは、9割、予想より早く直っていた。
だけれども、バハムートのエンジンの出力を噴出するのを阻害する、もう一体の“コマンダー級”がいる。
そういう話なんだ。
一同:えーーーーー!!(驚)
アミー:あー、そういうことかー!
GM:だから、あなた方は、D.A.Fが“ライトハウス”を撃破に向かうのと同時に、もう一体の“コマンダー級”を撃破する必要がある。
バハムートが発進して、超弩級レーザーを回避できるようにね。
一同:……。
GM/ロバート:「この未確認の“コマンダー級”MISTは……、おそらく思惟堆積層からの攻撃を仕掛けてくるタイプ……」
ジーノ:うーむ……。
GM/ロバート:「……ということは、逆に言えば、現実世界からの攻撃には、かなり無力だろうと推測される」
GM:とロバート艦長は……。
アミー:(相当食い気味に)ウソだー!
GM:言っているが……。
アミー:(さらに食い気味に)絶対、違う!
どうせ……無力なんかじゃなーーーい!
アミーの被害妄想が、北斗百裂拳ばりに炸裂。
「チガガガガガガガガガガガガガガ…………ちがーーーーう!!」(絶叫気味に)
しかし、アミーのこの発言を、果たして、単なる被害妄想と片付けていいものかどうか、他の面々には判断がつかなかった。
―――なぜなら。
「ロバート艦長の言葉を信じたい」
そう思う気持ちは確かにある。
しかし、それと同時に、
「え、ホント? マジでその話に乗っちゃって大丈夫?」
という気持ちも強く感じられたのだ。
っていうか、みんな鵜呑みにできなかったのか、GMとアミーのやり取りを静観していた。
あれ!?
関係ないけど、「アミー」と「アミバ」って一字違いじゃん!
スゲエ! (どうでもいい)
後半のあらすじ。
①コレットさんからの有難いお告げ。
②GMが喜びを隠せない様子。




