◆23-② ミドルフェイズ 『バハムート防空戦』---瞬間、期待、重ねて---
自らの任務に成功し、調子に乗るジーノ。
そんなジーノの態度が鼻につく中……。
ダイスに念を込め終わったモーゼルが高らかに宣言した。
「じゃあ、次は僕が!」
そして、モーゼルが、ゆっくりと言葉を選んで確認する。
モーゼル:『イベントクラフト』のダイス目。
高い方がいいんだよね。これ。
GM:いや、そうとは限らない。
何が起きるのかは、数字の高い、低いは関係ないから。
モーゼル:そっか。
大きい数字が出るように念を込めちゃったよ。
GM:じゃあ、ダイスを振ってー。
モーゼル:(コロコロ)……6!
アミー:「6」! 来たね!
極端だなあ。
カトレーン:ホントだ。ある意味、スゴイかも。
GM:了解!
「バハムートの最外壁。
その部分には、大量のレギュレートアームズが置かれていて、激しい射撃―――防空戦を行っている。
君もその一員に加わって、外壁目掛けて迫り来るMISTを撃ちまくり、乗り越えてきたMISTは切りまくる。
もしここを抜かれれば3ポイント分のダメージが発生」
モーゼル:3ポイント!?
ジーノ:デカイなー。それは。(←自分は成功しているので気楽)
GM:激戦区ですからね。
逆に言えば、ここを突破されなければ……。
モーゼル:戦況が有利になって、3ポイントもらえるんだね。
GM:そのとおりです。
アミー:ヤダー、これ。
3点も減っちゃうかもしれないんでしょ!?
私、こんなイベントやりたくない。絶対。
GM:ちなみにモーゼルの最も得意な攻撃能力。
それは何でしょう?
モーゼル:〈近接攻撃〉!
GM:修正は?
……+6か。
了解! 目標値は13!
アミー:たかっ!
GM:どうぞ。
ジーノ:頑張れ!
これは、いざとなったらエーテリックを使うしかないなー。
モーゼル:(チャージしたエーテリックを選んでいる)どれが何点だっけ?
ジーノ:絵札が+2。
エースなら+5。
普通の数字なら+1。
モーゼル:よし!
じゃあ……。
アミー:振って振って。
まずダイス振って。
モーゼル:そっか。
アームズが、いっぱい置かれた場所を守るんだよね?
ジーノ:イヤ、多分、それは意味が違うと思うぞ?
GM:壁、壁(笑)。
外壁を守るんですよ。
モーゼル:そっか(照)。
アミー:侵入されたら大変だよ。
モーゼル:「ここは通さんぞ!
人々の安全のために!」(キリッ!)
GM:なるほど。
MISTを斬りまくるんですね。
モーゼル:うん。
お願いしまーす!
GM:そしてファンブル振っちゃう……とか?
モーゼル:ファンブル振るとエーテリックって足せない?
GM:そう。ファンブルの時はエーテリックを使えない。
カトレーン:そういうこと言われると……。
モーゼル:うぅぅぅぅーーーー(緊張気味)。
アミー:頑張れー!
モーゼル:…………(念を込めている)。
(コロコロ)……7。
モーゼルの達成値……13。成功!
ただ、今回は念を込めた割に平均値であった。
でも、成功したからOK。
むしろファンブルを回避した! Great!
モーゼル:あ、成功だ! (グッと拳を握る)
GM:了解。
では、あなたはMISTを斬って斬って斬りまくります。
モーゼルたちの見事な攻防に、この方面のMISTはすべて撤退していきます。
モーゼル:よし!
GM:勝利ポイント3点奪取。
一同:やったー!
モーゼル:もう5点になった!
ジーノ:そういえば、これって何点まで取れば勝利になるの?
GM:全員が判定して、2点キープしないとダメ。
アミー:次、私。
でも勝利ポイントは、多い方がいいんでしょ?
全員が終わった後の最終的なポイント。
GM:それはもちろん。
アミー:やっぱり!
じゃあ、行くよー!
GM:どうぞー。
モーゼル:頑張れー!
アミー:はぁぁぁぁーーーー!
(コロコロ)……2。
GM:えと。
あなたが配置されたところは……。
「何てことだ!
あなたは単身……」
アミー:え、ちょっとヤダ!
何かヤダ! 単身て。
何で、私だけ一人なの!?
GM:いや、みんな単身……バラバラのところに行かされているんだよ。
ジーノ:おかしいじゃん(笑)。
だいたい、今まで、俺たちが一人でやってたの、見てたでしょ?
アミー:う、うん……。
GM:じゃあ、もう一度。
「何てことだ!
あなたは、単身、市街地の中にいます。
あなたに与えられたのは、囮任務。
装甲が厚すぎて、まともには撃破できない重装MIST、
これを急造のトラップ―――地雷原に誘い込む、という任務です。」
モーゼル:サイアクだー!
アミー:私、あんまり向いてないな。
ジーノ:いや、向いてるでしょ?
アミー:そうかなー?
ジーノ:だってホラ、天剣騎だから。
機動性高いじゃん。
アミー:うん、でもさー。
ジーノ:向いてないの、俺とかでしょ。魔導騎だし。
天剣騎、向いてるよね?
GM:そう。
あなたは、迷子にならなきゃいいね。
アミー:迷子!?
迷子になるか、ならないかの問題なの? これ。
GM:だって、市街地で入り組んでる路地の中だよ。
しかも、相手がバンバン撃ってくる中をかわしながら、トラップまで誘導していくんだよ?
カトレーン:ええーーー?
スゴイ大変そうなんだけど。
アミー:市街地のみんなはさ……。
避難してるよね? もちろん。
GM:一部避難できていないから、迂闊なところに誘導すると、本当に他の人をあなたが踏みつぶしたり……。
アミー:じゃあ、
「移動してー!」
とか叫びながら。
GM:そうだね。
ジーノ:「犠牲は仕方がない……」
とか言いながら。
GM:「人間て脆いんだね……」とか。
アミー:「みんな、逃げて! 逃げて!」
と言いながら走る!
ジーノ:「逃げて! 逃げて!」
って言いながら、自分の足で「ぶちゅ!」とか。
「だから言ったのにぃ!」
カトレーン:だいたいアミーの騎体は飛べるんでしょ? (笑)
GM:いや、飛べるけど、あんまり飛んじゃうと、相手がついて来れないじゃん?
カトレーン:でも、踏むことないよねー。
モーゼル:確かに。
アミー:ところで、これって何ポイント?
GM:これは、任務としては1ポイント。
ジーノ:あれ? 意外だね。
GM:えーと、このイベントは、一般技能の〈空間認識〉。
……持ってないよね?
アミー:持ってないよ。
GM:難易度は7。
だから、平目で……7を出さなきゃいけない。
ジーノ:あ、でも何かまあ。ファンブルさえ出さなければ。
エーテリックで「A」を持ってるから、成功できるね。
アミー:うん。
……てやぁ! (コロコロ)……8。
一同:おお!
アミーの達成値8。成功!
アミー:私ってさ、何か……本番に強いんだな!
ジーノ:そう? って言うか、それ……フラグじゃない?
カトレーン:ちょっと、ジーノ。
何言い出しちゃってるの?
ホントにフラグになったらどうするの?
アミー:フラグにならないからね。
GM:では、あなたは、MISTをトラップの中に誘い込みます。
向こうからは、罠に掛かった重装MISTが大爆発する音が聞こえてきますが。
アミー:「よし!」
一同:……。
カトレーン:え? 「よし!」だけ?
アミー:「被害が広まる前に……」
ジーノ:今ので被害が広がってたりして。
アミー:えー?
「被害が広がる前に、厄介なMISTが倒せて良かった!」
モーゼル:まだ倒してないんじゃないの?
GM:え? 倒したよ。
今、大爆発したじゃん。
アミー:火事! 起きてないよね?
もし、起きてたら、水で即座に「プーーーッ!」って。
GM:水で「プーーーッ!」って……。
アミー:水で消火!
GM:了解。
足元で、学徒兵とかが、
「チクショウ! 何で俺たちがこんな……!」
と泣きながら消火活動に……。
カトレーン:学徒兵かわいそう(笑)。
ジーノ:ミカゲツ……ミカヅキが……違った。
三ヶ日がいるんじゃないの?
GM:近くに見えるかも知れないけど。
ジーノ:踏みつける! とか。
GM/アミー?:「死ねぇぇぇ!!」
カトレーン:やめてー。
私の三ヶ日さんをー。
密かに流行の兆しを見せる「三ヶ日暗殺計画」。
「学徒兵はかわいそう。でも三ヶ日はかわいそうじゃない」
そんな結論が出ている雰囲気ではある。
カトレーンの叫びも、言葉ほどは感情がこもっていない。というか、ほぼ棒読み状態。本気でそう思っているのか図りかねる。
「名家出身」=「御曹司」という肩書きに対するやっかみなのか。
それとも近親憎悪なのか。
それは誰も知らない(どうでもいい)。
アミー:まあ、でも、私は成功したからねー。
カトレーン:次、私かー。
頑張るぞ!
GM:最後、無事に締められるか?
……ところで、今、何ポイント?
モーゼル:6ポイントだよ。
GM:むー(不満げ)。
モーゼル:じゃあ、もう任務失敗はないんじゃない?
ジーノ:そうかな?
油断はしない方がいいんじゃないかな?
失敗するとポイントをすべて失うとかあったら……。
カトレーン:やだよー。そんなの。
アミー:「判定失敗」=「防空失敗」っていうのもあったじゃん!
カトレーン:やめてよ! (笑)
GM:そんなもの出るわけないじゃん。
やだなぁ、もう(ニヤニヤ)。
カトレーン:じゃあ、行くよー。
ハイッ……(コロコロ)……3です。
ジーノ:何だ、結局、みんなバラバラだったよ。
GM:えーと。
「何て言うことだ!
住宅地に向けて、大量のミサイルが発射されました!」
モーゼル:何てことなんだ! (驚)
アミー:フフフフフフ…………。
ジーノ:いや、別におかしくはないよ?
つーか、何で笑ってんの?
モーゼル:何か、コワイし。
ジーノ:……えーと。
それって、全部撃ち落とすしかないよ。
GM:そう。
すべてを撃ち落とす必要があります。
カトレーン:えーーー!?
モーゼル:〈射撃攻撃〉持ってて良かったね。
GM:カトレーン。
カトレーン:ハイ!
GM:〈射撃攻撃〉を持っていますか?
カトレーン:ハイ! (敬礼)
GM:了解。
では、簡単なハズだ。
モーゼル:良かったねー。
アミー:ホントにピッタリだね。ホントにホント。
GM:うーん……。
モーゼル:ポイントは? ポイント。
GM:ポイントは……(防空戦チャート確認中)……これは1ポイント。
アミー:えー!?
アハハハハハ!
モーゼル:かなしー!
アミー:失敗しても失うのは1ポイントだけ?
GM:うん。
ジーン:でもさ、簡単なのは、〈射撃攻撃〉の技能を持ってるからだよね。
カトレーン:そうだよ。
だって、技能がない人が当たったら大変だよね、コレ……。
GM:えーと、〈射撃攻撃〉の修正値はいくつ?
カトレーン:〈射撃攻撃〉はね……+6。
GM:いいなー!
難易度、たったの「9」ですよ?
どうぞ。
ジーノ:え? 難易度が9かー。
2D6で3出せば成功か。
アミー:ファンブらなければいいってことかー!
うー……ヤバーイ!
※ファンブ[−る]……ファンブルの動詞的活用形。
反対語「クリティカ[−る]」。
こうして書いてみると、まったく略してもいないことが判明。
でも、よく使っている。
ちなみに否定語は……
「ファンブ[−らない]」
「クリティカ[−らない]」
である。
広辞苑に載っている(かもしれない)。
モーゼル:でもそう言う時ってさー……。
アミー:よく出るよね。ファンブル。
カトレーン:なになに?
結局いくつ出せばいいの?
ジーノ:いや、もう考えなくていいから。
サクッと振って。何も考えずに。
アミー:そうそう。
早く振って。
カトレーン:え? え?
ジーノ:いいからいいから。
カトレーン:一体、いくつ以上を出せばいいの?
ジーノ:2だよ2。
アミー:それじゃファンブル。
ジーノ:違った。3だ。3以上。
カトレーン:目標値いくつだっけ?
モーゼル:9だよ。9。
ジーノ:3さえ出せばいいんだ。
つまり1と2。
アミー:頑張ってよー。
カトレーン:ちょっと待って。
アミー:みんな「9出ろ」って願ってなきゃ!
ジーノ:いや、9はいらないって。
アミー:(手拍子)きゅう、出ろ! きゅう、出ろ!
ハイ、みんなも!
カトレーン(こと腹黒演劇乙女)のダイス目は、ここぞと言う時に限って炸裂する。
それをみんなが恐れているのだ。
恐れすぎて、ちょっとテンションがアレな感じになっているだけである。
全員正常な反応である(断言)。
ちなみに、アミーが連呼する「9」は、残念ながら関係なかった。
「3」で足りるから。
カトレーン:じゃあ、「ギンッ」って睨んで。
「私の前に、ミサイル攻撃なんて……ね!」
フッ! ハァッ! ……(コロコロ)……1と6。7?
カトレーンの達成値13。成功!
アミー:あー、良かったー(安堵)。
モーゼル:ふー。
カトレーン:はぁー、あぶなー。
コワイコワイコワイコワイ……。
GM:すっげえ、期待したのにー。
アミー:私もめっちゃ(※「めちゃくちゃ」の意)期待……あ、何でもない。
ジーノ:しっかし、すげえなー。
カトレーン:何がすごいんだよー。
ジーノ:1とか出しちゃって。
GM:百発百中。あなたは、すべてのミサイルを撃ち落とします。
1ポイント奪取!
合計7ポイント。
カトレーン:良かったー。ホント。
何だかんだで、何とかすべての任務に成功し、MISTを撃退したベアハッグ小隊の面々。
心配されたカトレーン隊長(こと腹黒演劇乙女)のダイス目も炸裂することはなかった。
−−−そう、炸裂することはなかったのだ。
それは、いいこと……のはずなのに、どこか残念な気持ちな自分がいることに気づいてしまった。
あるよね、「こうなったら大変!」ってわかってるのに「もしかしたら……」と期待する気持ち。
人とは何と業深き生き物なのか。
うーん、やっぱりエッセイっぽいな。
TRPGエッセイ。イイネ!




