◆1 プリプレイ ロボットに乗ろうよ! っていうか、いいから乗れ!
TRPGって、始める前に結構雑談してしまって、楽しかったり、ぐだぐたになってしまったりしませんか?テーブルトークですからね。
ある夏の昼下がり。
暑苦しい部屋に集まった男3人、女1人が、冷たい飲み物を飲みながら雑談に興じていた。
一人目の男は、『劇辛党』。
本人は否定するが、取りあえず辛そうなモノは買ってしまう気質の持ち主である。買うだけならまだしも、やたらと人に勧めないで下さい。
ちなみに好きなアイドルは『如月千早』である。
ゲームサークル『グリップダイス』のGM。ついでに主宰者でもある。
マスターとしての腕は、アドリブが得意で芝居も巧いが、本人が「俺のマスタリングってゲキ甘だよね?」と聞いてくるのが困りもの。みんな答えに困っています。
飼っている猫にはゲキ甘なタイプ。猫はかわいいけど。激甘すぎる。
劇辛党:えー? 好きなロボット物?
言わなきゃいけないの?
……『重鉄騎』としておいてもらおうか。
腹黒演劇乙女:ナニソレ?
劇辛党:『重鉄騎』っていうのは、かの名機『Xbox360』のゲームで、ロボを動かすのが、いかに大変で、苦痛に満ちたモノか実感できるという……。
腹黒演劇乙女:あ、もういいです。
下げ友:あ、トイレ行ってくるわ。
劇辛党:……いつか、絶対にお前等にもやらせてやる……!
二人目の男は、『下げ友』。
本人も自認しているが、取りあえず仲間のやる気を削ぐのが得意という気質の持ち主である。
ちなみに好きな漫画家は『藤田和日郎』。最近では『ゴースト・アンド・レディ』を買いましたよ。モチロン。
ゲームサークル『グリップダイス』のPL。ついでに連絡調整役でもある。
ちなみにこれを書いている者であるため、これ以上のコメントは書けない。書きたくない。
下げ友:好きなロボット物……ね。
(やたら大声で)それならば、答えは決まっているぅ!
『天元突破グレンラガン』だ!
腹黒演劇乙女:暑苦しいね。あ、部屋が。だけど。
下げ友:……やっぱ、『ギガドリルブレイク』ってアレだよね?
生きてるうちにやってみたい技だよな。
腹黒演劇乙女:ガンバレー(棒)。
三人目の男は、『寝落ちリア充』。
真っ先に寝落ちするくせに、私生活は充実しているというゲーマーの風上にもおけない輩である。
ちなみに最近の鼻歌は『パンチライン』という変わった性癖を持つリア充。
ゲームサークル『グリップダイス』のプレイヤー。
あと、寝るのが早い。寝落ち早い。
寝落ちリア充:好きなロボット物かぁー。
じゃあ、『日常』かな。
劇辛党:『日常』? あれってロボット物だっけ?
寝落ちリア充:『はかせ』の面倒を見てる『東雲なの』。
背中にゼンマイついてるじゃん。
下げ友:確かに。っていいのかそれで!?
劇辛党:まあ、間違ってないし。いいんじゃない?
下げ友:いいのかー。
四人目の女は、『腹黒演劇乙女』。
本人は否定するが、腹黒いキャラクターを演じる時こそ真価が発揮されるタイプである。その演技力は、どんな清純なキャラクターを演じても「本当は何か企んでいるんじゃないか」とみんなに心配させるほど。さすが。
ちなみに得意な絵は『細胞』。特にゾウリムシの絵のレベルは図鑑なみである。
が、そんなに絵が得意なら、挿絵を描いてもらいたい。断られたのでここに記しておく。
ゲームサークル『グリップダイス』のプレイヤー。
真面目にやっているのに、なぜかイロモノキャラになる性質の持ち主。本人は真面目なんですよ?
腹黒演劇乙女:え? 好きなロボット物?
えーと、『エヴァンゲリオン』じゃないかな。やっぱり。
ほかのは、よくわからないし。
下げ友:やっぱり、『アスカ』だよなー。
腹黒演劇乙女:何言ってんの? 『カヲル』君に決まってるでしょ?
下げ友:アッ、ハイ。
この4人で思い思いに雑談をしていたのだが……。
やがて、一人の男――――――劇辛党が脇に置いてあった革でできたアタッシュケースの中から、何冊かの分厚い本を取り出す。
すると劇辛党の目が(正確には眼鏡が)怪しく光りだしたので、みんなギョッとして雑談をやめました。
劇辛党は、いつもこうなのです。(天見りん子著 童話『コノとウルルの物語』より)
劇辛党:というわけで、こんなモノを手に入れたんですよ。
下げ友:お? なになに?
腹黒演劇乙女:え? 何か新しいやつなの?
寝落ちリア充:何ていうやつなの?
下げ友:『ドラゴンアームズ改』?
劇辛党:そうそう。F.E.A.R.(ファーアミューズメントリサーチ)の出しているロボット物のTRPGだよ。
『ドラゴンアームズ』というTRPGがあって、その第2版。
だから『改』。
正確には『ドラゴンアームズ改バハムートライジング』というタイトルだね。
下げ友:ロボット物? あんまりやったことがないな。
腹黒演劇乙女:ロボット物かあ。ロボット物ってよくわからないけど……。
寝落ちリア充:『ドラゴンアームズ』っていうのがロボットなの?
劇辛党:そうそう。『ドラゴンアームズ』っていうのはロボットの種類。
モビルスーツとかアーマードトルーパーってやつだね。これにPCが乗り込んで戦う。
こんな感じのロボット。
劇辛党は、ルールブック巻頭カラーの「SAMPLE CHARACTER」を広げた。
そこには、「美少年とロボット」「美少女とロボット」「少年とロボット」「青年とロボット」「おっさんとロボット」などが巧みなイラストで表現されていた。……「おっさんとロボット」!?
寝落ちリア充:へえー。
腹黒演劇乙女:かっこいいねー。
劇辛党:で、これがPCたちの乗る母艦。
劇辛党は、さらにルールブック巻頭カラーの別のページを示す。
そこには、これでもかというスケールで見開きを使って描かれた宇宙戦艦のようなイラストとゲームタイトルが。
劇辛党:これが『“巨竜艦”バハムート』。
全長3000m以上ある戦艦。
寝落ちリア充:全長が3000mもあるの? すっごく大きいね。
劇辛党:そうだね。コロニーみたいな感じだからね。
戦艦といっても、中には街もあるから。
イメージとすれば、『マクロス』とか。
腹黒演劇乙女:そっか。
『ドラゴンアームズ』っていうロボットも大きいの?
劇辛党:そうだね。大体5〜6mくらいかな。
腹黒演劇乙女:そうなんだ。
寝落ちリア充:ところで、何と戦うの?
劇辛党:MISTという謎の存在。
機械なんだけど、色々な形をしていて、人類を滅ぼそうとしているんだよ。
こんな(ルールブックのイラストを見せる)感じの。
劇辛党が誇らしげに広げたルールブックのページには、「カブトムシのような形をしたロボット」「アリのようなロボット」などが載っていた。
腹黒演劇乙女:えー、何か、ムシっぽいんだけど。
劇辛党:まあ、虫っぽいヤツだけじゃないけどね。色々なタイプのヤツがいますから。
腹黒演劇乙女:そうなんだ……。
下げ友:全体的にはいわゆる普通のロボット物のイメージでいいのかな。
劇辛党:そうだけど、『ドラゴンアームズ改』では、ちょっと違うところがある。
下げ友:違うところ?
劇辛党:ファンタジー世界のようにPCは「剣と魔法」で戦うからね。
ロボットに乗って剣と魔法と銃砲で戦うわけ。
腹黒演劇乙女:それは変わってるね。
寝落ちリア充:へえー。おもしろそうだね。
劇辛党:ほら、戦闘はシミュレーションゲームっぽいヘックス戦だよ?
バトルテックを思い出すね。
劇辛党はそう言うと誇らしげにルールブックの巻末に付いている戦闘マップを見せる。
そこには、「森林No.1」「都市No.1−2」などと題した地図にヘックスが印刷されていた。
ヘックスとは、六角形のマス。これが地図一面に印刷されている。
なお、「A01」とか「G08」などと記号も付されている。
下げ友:『D&D』みたいだね。
マスの形が違うけど。
寝落ちリア充:ホントだ。
全員がロボットに乗れるの?
劇辛党:もちろん。大事なのはロボット。ロボットが大事。
大事なことだから2回言いました。
ロボットの替えはきかないけど、パイロットは掃いて捨てるほどいますから。
腹黒演劇乙女:えー?
劇辛党:いえいえ、掃いて捨てるほどいるのはその他大勢の方。
あなたたちPCは、選ばれし者ですから。
下げ友:ん? どういうこと?
劇辛党:PCたちは、『ヤブンハールの波』という波動特性に目覚めた、特殊な精神の持ち主っていうわけ。
それで、この波動特性という特殊な資質を持つごく一部の者だけが乗ることができるのが『ドラゴンアームズ』。
寝落ちリア充:じゃあ、みんな『ドラゴンアームズ』で戦ってるの?
劇辛党:いえいえ。
さっき言った『ヤブンハールの波』に目覚めているのはごく一部の者だけで、たいていの人はそんな資質を持っていない。
そういう人は『レギュレートアームズ』という量産機に乗って戦っている。
ま、その『レギュレート』はそれまでの各国の主戦力でしたけどね。
下げ友:割合でいうと、どのくらい違うんだ?
劇辛党:『レギュレート』が99%、『ドラゴンアームズ』が1%くらい。
ほら、『レギュレート』は「やられ役」ですから。『ヤブンハールの波』持ってないし。
どうしてもやりたい人がいれば止めませんけど。
寝落ちリア充:『レギュレート』の方をやると、何か得することがあるの?
劇辛党:ありません。
一同:…………。
劇辛党:あ、あった。『波動特性』の代わりに技能を1つ余分にもらえるよ。
階級が上げられる。
腹黒演劇乙女:階級?
劇辛党:この世界には、「階級」があって、これが高いと自分の乗るロボットの機体や部品のレベルを上げたりできるし。
それに威張れるよ。やったね!!
下げ友:いやいや、実際、どうなの? いいの? それ?
劇辛党:え? 普通は選ばないんじゃないの。
どう考えても『ドラゴンアームズ』に乗った方がいいでしょ。
タイトルがそうなんだから。
下げ友:でも、ロボットは機体レベルが高い方が強いんだろ?
劇辛党:そうなんだけどさ。
ルールブック読むと、「自分の出身国の機体なら1つ高いレベルの機体に乗れる」んだよね。
寝落ちリア充:え、そうなの?
下げ友:いいとこないじゃん。
劇辛党:でも威張れるよ。
だから、どうしてもやりたい人がいれば『レギュレート』に乗れるよ。やったね!!
腹黒演劇乙女:あ、『ドラゴンアームズ』の方で。
寝落ちリア充:僕も『ドラゴンアームズ』で。
下げ友:俺も『ドラゴンアームズ』で。
全員、ノータイムの返答であった。
ファイナルアンサー。
劇辛党:あ、やっぱり?
下げ友:まあ、そりゃそうだろうな。
腹黒演劇乙女:えっと、みんなで1つのロボットを動かすってこと? でいいのかな?
下げ友:合体モノか!?(過剰反応)
劇辛党:いえいえ違いますよ。
それぞれが別々のロボットに乗るんです。
ロボットにはそれぞれ特徴があって、乗る機体で得意なことが全然違うから。
腹黒演劇乙女:そっか。
下げ友:どんな感じでキャラクターを作るんだ? っていうか、どんなのがあるんだ?
劇辛党:じゃあ、そのあたりから説明するよ。(と言いながらキャラクターシートのコピーを配る。あらかじめコピーしているところがニクい)
一同:お願いしまーす。
こうして気がついた時には。
『ドラゴンアームズ改バハムートライジング』のキャラクターを作成する流れになっていた。
恐るべし劇辛党。
待て! 次回!