ブロンズセイント
ーー目覚めたら、パイプ椅子に縛り付けられていた。
(パイプ椅子とは、随分ナメられたもんだわね……)
朦朧とするアタシをまたしても痛みが襲う。
屈強な男達が思い切り振り下ろした特殊警棒が鎖骨と大腿骨をへし折った。
全身をアドレナリンが駆け巡り、瞳孔が全開状態になる。
もはや使い物にならない程にひん曲がった特殊警棒を見て男達は感嘆の呻き声を洩らしている。
「ひゅ〜。流石ですなぁ。意識が飛んでねぇとは……怖いねぇ、強い女ってのは」
ニヤケた梶木の顔にラブレスのブレードの輝きが映える。
アタシの足許にかがみ込み、ブレードでフトモモを撫でくりながら恍惚の表情を浮かべている。マジで無理。生理的に無理! 骨折の痛みよりもこの生き物と同じ部屋の空気を吸っている事の方が辛いわ。
ブレードの峰を膝裏に差し入れると、我慢しきれないカオでひるがえし、スピーディに引き出す。
「ああぁっ!」
ひかがみの靭帯が切れた音が頭蓋骨の中に響き渡る。
後頭部を思い切り張り飛ばされたような衝撃がはしり、思わず声が漏れてしまった。
「ほぅ、良い声が出たねぇ。……鬼塚サン。乱暴を赦してくれよ。アンタにゃこのくらいしとかんと、こちとら安心出来ないんでね。まだまだ殺しゃしねぇから安心してくれや」
打って変わってデカい態度で梶木はそう言いながら、リモコンのボタンを押す。
大型の液晶画面に映し出されたのは5年前の、あのミッションのクライマックスシーンを魅力的に編集した映像だった。
監視カメラのデータが見つからなかったのはコイツが回収していたからか……
益々もって自分自身のセンサーの鋭さに、自らをして驚愕する。
「どうだい、鬼塚元警部! すげぇ迫力だろぅ? そりゃそうだ。全編モノホンのSATとゲリラ兵のよる殺戮現場だもんなぁ! コイツのおかげでオレぁ、組織の幹部にまで成り上がれたんだ。アンタらにゃ感謝してもしきれねぇよ! ヒャハハハハハ!!!!!!」
「よくこんなもの回収出来たわね。あの状況で」
「あの日俺は警備室で監視カメラのモニタリングをしていたのさ。そしたらガスマスク外してゲロっちゃってる間抜けな腰抜けヤローがいるじゃねーの。
俺ぁ閃いちまったね、こりゃチャンスだぜってな。警備室にゃガスマスクも武器も備えてあったからな。奴さんにはサクっとあの世に逝ってもらって、暫く入れ替わらせて頂いたってワケさ。
いやぁ、あんときゃチョースリルだったぜぇ。……しかし、こうも俺の描いたシナリオ通りに事が進んでくると、逆に恐ぇな。自分の才能がよ! ヒャハハハハハ!!!」
全能感に浸る梶木の止めどない自慢を聞きながらじっと見据える。
殺意は無理矢理押し殺しておく。
「アナタ、本性むきだしの、今のキャラの方がダンゼン良いわよ」
「はっ! こりゃどうも。鬼のオニヅカさんのお墨付きをいただき恭悦至極だぜ。あ、そうそう、あの時あんたらに情報タレ込んだのは俺の兄貴分だ。今はもう故人だけどな……」
わざとらしく十字を切り、祈りを捧げる真似事をする梶木。
「で、アンタ、今のポスト以上に何が狙いなの?」
「勿論ルシャス。ていうかスージーだな。あの娘はきっと世界が認めるアーティストになるぜ。あの娘をスターダムにのし上げて、世界のショーヴィズを席巻してやる。俺の指先一つで世界のエンターテインメントをコントロールしてやるのさ」
「やけに純粋な事……」
「勿論スージーは俺のモノにするぜ」
……イタ過ぎる。気持ち悪くなって来た……
「アタシをダシにする意味が無いわね」
アタシの言葉には耳を貸す気はない様子で梶木は続ける。
「しかし、もっと魅力的なのは……」
そういうと梶木は映像を早送りして、ハルオさん達の姿を捉えたシーンを見せる。出会う直前の彼らの映像。さすがにこれはアタシも初見だ。惚れ惚れするような立ち回り。人智を超えた身体能力。
「どうよ! このオッサン達の動き! まるで神。いや、アニメだぜ。マジに人間超越しちゃってるよ。ハハッ……まったく、編集に苦労したぜ。そんで思い付いちゃったわけ。このオッサン達を従える事が出来れば、俺は業界どころか、世界の、否、地球の王者だぜ! 何だって思いのままだ。そして、コイツラのケツを上げさせる『キー』は鬼塚アザミ。お前さんだ」
「……やっぱツマンネーヤロー……」
「黙れ! この牝豚!」
梶木の青白いゲンコツがアタシの左目を打った。だが、殴った側のヤツが右手を抱え痛みに苛まれている。
「いってぇーーーー! 痛ぇなチクショウ! ……ふん、まずはオニの鬼塚サンのレイプ画像をあのオッサン共に送りつけてやる」
「あのヒト達にそんなもん通用しないわよ」
「そうかい。それならそれで構わねぇよ。こりゃ、俺個人の楽しみでもあるんでね。御心配なく」
梶木はマッチョな秘書に命じ、カメラを回させる。
残り3人に服を脱ぐように命ずると、アタシの一張羅、トップバリュのスーツをラブレスで切り刻み、ブラウスを引き千切った。
マッチョ達は、良く焼けたカラダにうっすら汗ばみながら懸命にイチモツをしごいている。皆勃っていなくてもかなりのサイズだ。
「このマッチョ達に犯されながら、指を一本ずつ切り落とされて行くってのはどうだ? へっへっへ。オニの鬼塚がヒィヒィ泣き叫ぶ声だけでイッちまうかもなぁ。俺ぁ」
マッチョ共は揃いも揃ってペニスもマッチョだが、きっとこの、カジキのイチモツはチンカス臭ぇ包茎なのだろう。
「アタシの小指と間違えてテメェの粗チン切り落とさねぇように気をつけな」
梶木の笑みが一瞬にして凍り付き、醜い深海魚のような表情になった。
今度は右のフトモモに激痛が走る。
「はぁあっ!」
梶木のラブレスがヒルトまで刺さっていた。
「たぁまぁんねぇえええ。その声! 最後は五体バラバラにしてXXX抉り取ってやるからな。牝豚が!」
蹴り倒され口の中を切った。先ほどのコーヒーに盛られたテトロドトキシンはほとんど浄化されたようだが、いかんせんダメージが大き過ぎてか、力が入らない。
「そんじゃ、てめぇら、早速3穴にブチ込んだれや!」
梶木の指示に初めて異を唱えるマッチョ共。
「イ、イキナリっすか?」
「ぶっ壊れちまいますよ!?」
この状況でおっ勃てているわりに、まともな意見に可笑みが湧いてしまう。
そして更に、この状況でグッショリ濡れているアタシの性器を確認した時のコイツらの顔ったらなかったわね。ホント、好い顔してたわぁ。
「バカか、テメェら! 牝豚相手に気ィつかってどうすんだ! ヤレっつったらとっととヤレよ、このウスノロがっ!」
梶木はヒステリー症の女みたいにわめき、虚空に向かいラブレスを投げつけた。




