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プロローグ

 やわらかな陽光が、窓辺のマーガレットにふりそそぐ麗らかな季節。

にもかかわらず、今日も今日とて不況のカラっ風吹きすさぶこのさびれた地方都市、S県蓮華市の港湾地区にあるシャッター商店街のはずれ。

港からの湿った風に乗って、JRのバラストの匂いが漂う埃っぽい飲み屋街の雑居ビル最上階(といっても4Fだけど)がアタシのオフィス。

 ここのところロクに仕事の依頼もないけれど、8:00AMには出勤して、オフィスに灯を入れることは怠らない。生活のリズムってヤツを崩したくはないからね。

 こう見えてもアタシ、元捜査4課の刑事。俗に言うマル暴だったの。

それなりに辣腕で鳴らしたモノよ。ヤーさん達だけでなく、同僚にまで『オニの鬼塚。人呼んで“オニヅカ”』なんて畏れられたものよ。

それがなぜ、こんな寂れた街のしみったれた私立探偵やってるのかなんて、今は大して重要なことじゃないの。またの機会に話すことにするわ。


 かつては坪単価三桁を誇った、わずか数百メートルのこの街のメインストリート『常楽町商店街』

今では往時を偲ぶことすら困難な廃れよう。……だがしかし、そんなんでも生まれ育った街の復興を心に誓い、どっこい生きてるしたたかな商店主達。

 こんなシケた世の中でも、そんなプリティでチャーミーなオヤジ達のフン張る姿に活力を貰いながら、アタシも頑張れるのよ。「今日も一日生き抜こう!」とね。

更に申すならば、アタシの恩師である、あのヒトの一助となれるのであれば、アタシのカラダなどいくらでも捧げよう。「命預けます!」ともね。


 マーガレットに水を遣りながら、窓の向こう、常楽町商店街に視線を向ける。

なぜかしら、あのヒトの息づかいを感じて下腹部に甘酸っぱい痛みが走る。

 それは儚く淡い幻想。というか妄想。許されぬ恋。……決して叶わぬ、胸に秘めた思い。……

 はっ! いけない。それこそどうでもいいわね、そんなこと。……あのヒトを想うとつい、アタシの中のオンナが目覚めてしまう。

恥ずかしいところをお見せしちゃったわ。忘れて頂戴。


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