謎だったおかゆ
子供の頃、欧米の児童書を読む度、不思議に思っていたことがあった。作中に登場する「おかゆ」についてである。
「今日の朝ご飯は、牛乳で煮てシナモンとレーズンを入れた、甘くて美味しいおかゆよ」
こんな台詞が当たり前のように出てくるのだ。私は読んでいて疑問でならなかった。
当時の私にとって、おかゆというのは、風邪などを引いた時に母が作ってくれるものであった。既に炊いてあるご飯(母が作るおかゆは基本的に入れおかゆであった)をお湯で煮て柔らかくし、仕上げに溶き卵を入れてとろとろに仕上げる。私は梅干が苦手なので梅干はのけてもらっていたが、他の家族は梅干を入れて食べていた。
だから本の記述を眺めながら、何度も首を傾げた。水じゃなくて牛乳でおかゆを煮る? 更にはシナモンとレーズンと砂糖が入る? 想像してみようとしても全くイメージできず、混乱するだけだった。
この「おかゆ」が何なのかさっぱりわからないまま年は過ぎ、ある時、外国で過ごした人のエッセイで「ミルクご飯」というお菓子を目にした。お米とレーズンを牛乳で煮て甘みをつけ、シナモンを振るという。……もしかしてこれのことだろうか? だがこれは「デザート」だと紹介されている。子供の頃に読んだ本では食事として食べられていたし、これも微妙に違うように思えてしまった。ちなみに、このエッセイでは「日本人の口にはあわない」と書かれていたが、今ネットで検索してみると、最近は日本でもそれなりに知られて食べられつつあるようである。
もっと年を取ってインターネットをやるようになってから、ようやく真実に出会えた。私が疑問に思っていたものは、「オートミールがゆ」と呼ばれるものだったのだ。オートミールを煮込んだものが「オートミールがゆ」で、レーズンやナッツが入ることが多く、牛乳もシナモンも砂糖も当たり前のように入るのだという。母もたまにオートミールを買ったが、クッキー用でこういう使い方をしなかったので、オートミールとおかゆが私の頭の中で繋がらなかったのだ。
本当のことがわかるまで、ずいぶんと長い間かかってしまったなあ。
店先で売られているオートミールのパッケージを眺めながら、たまに昔の自分の試行錯誤を思い出して、苦笑いしてしまう私がいる。
ちなみに、私はクッキーにオートミールはあんまり入れない。ミューズリーを使っている。こっちの方がお得感があるもので。