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あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


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第3話 嫉妬

『一目惚れだった』

『付き合ってほしい』


 突然の告白に、頭が真っ白になった。


「考えておけ」


「はい……」


 私は俯いたまま答えた。


 時計を見ると、もう終電ギリギリの時間だった。


「タクシーを呼ぶ」


「ありがとうございます……」


 待っている間、重い沈黙に包まれていた。


 私は窓の外を見つめながら、胸の奥で渦巻く感情を整理しようとした。


 河内さんの横顔をちらりと見ると、その端正な顔立ちから感情は読み取れなかった。


 タクシーがマンションに着いて、乗ろうとすると。


「藤田」


 河内さんに呼ばれた。


「明日も……普通に接してくれればいい」


 私は小さく頷いて、タクシーのドアを閉めた。


 電車の中でも、家に帰ってからも、河内さんの言葉が頭の中をぐるぐると回っていた。


 一目惚れ……。


 私なんかに?


 * * *


 次の日、いつものように出勤した。


 一晩考えても、答えは出なかった。

 河内さんの気持ちは嬉しいけれど、立場も違うし、私には恋愛経験もない。

 どうしたらいいのかわからなかった。


「藤田さん、この資料のことで確認があるんだけど」


 同じ部署の田中さんが私の席にやってきた。


「はい、どちらの件でしょうか?」


「昨日のデータの件で……」


 私は田中さんと資料を確認しながら話していた。

 田中さんは二つ上の先輩で、いつも親切にしてくれる。


「ここの数字、間違ってるよね?」


「あ!本当ですね。申し訳ありません……」


「俺もたまにやるから、お互い気をつけてやってこう」


 とても優しい笑顔だった。

 私は田中さんに指摘された資料の箇所を修正していた。


 その時、ふと誰かの視線を感じて振り返った。

 でもそこには誰にもいなかった。


 * * *


 その夜はうちの部署の飲み会だった。


 つい癖でラウンジでやってたような所作をしてしまっていると……


「藤田さん、まるでホステスみたいだね」


 酔った上司に言われた。


「いえ……よく父の付き合いでお酒の席にいた時があったので……」


 嘘だ。

 私が実家から出たのは高校を卒業してからだ。


「もしかして、そういう仕事してたんじゃなくて?」


 いつも仕事を振ってくる女の先輩にチクリと言われた。


 その時、スマホに着信があった。

 河内さんからだった。


 私はお店の外に出た。


「はい、どうされましたか……」


「今日来れないか?」


「今部署の飲み会の最中で……」


 その時、部署の人が何人か店から出てきた。


「あ、藤田さん、次別のところに行こうって話になってるけど、どう?」


 田中さんに言われた。


「あ!ちょっと待ってください!」


「すみません、明日行きますので……」


 河内さんに伝えた。


「今から迎えに行く」


「え?」


 プツッと電話が切れた。


 今から来る?って私がどこにいるかも知らないのに……


「藤田さんどうする〜?」


 他の社員に聞かれた。


「あ、先に行っててください!」


 私はよくわからないまま、最寄駅で待っていた。


 暫くするとまた電話がかかってきた。


「今どこにいる?」


「会社の最寄り駅です!」


 少ししたら駅のロータリーに河内さんの車が来た。


 私が駆け寄ったら窓が開いた。


「乗って」


「はい!」


 車に乗ったら、勢いよく動いた。

 心なしか運転が荒く感じる。

 怖い……。


「あの……どうしたんですか?」


 河内さんは何も答えない。


 そのまま事故もなく無事にマンションに着いた。

 車を降りた後、足早に部屋に向かう河内さん。


「待ってください!怒ってるんですか?」


 訳がわからない。

 そのままついていくしかなかった。

 エレベーターでも無言。


 怒らせてしまったの?

 何も思い当たらない。


 そのまま部屋に入ったら、河内さんは真っ直ぐリビングに行ってソファに座った。

 恐る恐る私もリビングに入った。

 何を言っても答えてくれないんじゃ、何も言えない。


 気まずい沈黙が流れる。


「悪かった、無理やり連れてきて」


 やっと話してくれた……!


「いえ……びっくりしましたけど」


「耐えられなかった」


「え?」


「君が他の男と話してるのを見るのが」


 それは……つまり嫉妬……?

 どうすればいいかわからないけど……


「あの、何か飲みますか?」


「ああ」


 河内さんにグラスやボトルなどの場所を教えてもらって、私は注いだグラスを渡した。

 それを河内さんは少し飲んだ。


「……ちょっとここで待ってて」


 河内さんは別の部屋に行って、何かを持ってきた。


「これ、着てくれる?」


 渡されたものを見たら、とても綺麗で上品なドレスだった。


「これは……」


「今日仕事の合間に寄った場所に飾ってあったドレスだ。着てほしい」


「はい……」


 私のために……?

 よくわからないけど、別室でそれに着替えた。

 そして河内さんに見せた。


「いかがでしょうか……?」


「うん、すごい似合ってる」


 そのまま隣に座った。


 ………これでいいんだろうか。

 私は専属の嬢になる取引をしただけだから、これ以上する事もないんだけど。

 でも、昨日、一目惚れって、付き合ってほしいって言われて……


 どうしよう……!


「手に触れてもいい……?」


「え!!」


「取引以外の事はダメだったな……」


 だんだんと見ていて気の毒に思えてしまった。


「いいですよ……手なら」


 私は早速許してしまった。

 ゆっくりと河内さんの手が、私の手を包んだ。


「ありがとう。安心する」


 河内さんの手は大きくて暖かくて……だんだんと私の鼓動が速くなってきた。

 男の人と手すら繋いだ事がなかった私には刺激が強すぎる!


「もういいですかね……?」


 その時、突然抱きしめられて、唇が触れた。

 一瞬の出来事だった。


「え……?」


 頭が真っ白だった。


「すまない……」


 私は思わず、河内さんの部屋を何も告げずに飛び出した。


 壊れそうに高鳴る心臓。

 唇に残った柔らかい感触……。


 私のファーストキスは唐突に奪われた。

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