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あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


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第28話 決意表明

 私はずっと気がかりだったことがあった。


「河内さんのお父さんは今どこにいるのでしょうか」


 河内さんはウィスキーのグラスを傾けながら口を開いた。


「子会社で社長をやってる」


「子会社にいるんですね」


「俺が追い出したからな」


 私が行方をくらませた三年で、河内さんは復讐の鬼となり社長に上りつめ、お父さんを排除した。


「私たちが結婚することはご両親に言ってないんですよね?」


「ああ、何も言ってない」


「私、河内さんのお母さんのこと、まだ何も知らなくて……」


 河内さんは目を伏せた。


「母は学生の時に病気で亡くなっている」


「そうだったんですね……」


 河内さんの過去をあまり知らない。

 これからいろいろわかると思うけど、私とは全然違う人生だったんだろう。

 お母さんが亡くなった後を考えると胸が苦しくなった。


「ちなみに、お父さんの働いてる会社はどちらでしょうか?」


 河内さんに睨まれた。


「まさか……余計なこと考えてないよな?」


「は、はい!ただ気になっただけです!」


 その後、渋々その会社のホームページを見せてくれた。

 ここから割と遠いけど……

 私はどうしても、また会いたかったんだ。


 私一人の足で。


 * * *


 私は、その日、会社が終わった後その会社に向かった。

 河内さんに秘密で。

 既にアポイントは取ってあった。


 会社に着いて、受付で説明すると、会議室に案内された。

 会議室で待っていると、しばらくしてドアがゆっくり開いた。

 そこにはあの日、あの会社の社長室にいた彼より、少し雰囲気が衰えた男性が入ってきた。

 彼は私を一瞬だけ見た。


「久しぶりだね。また会えるとは思っていなかったよ」


 河内さんのお父さんは会議室の上座にゆっくり座った。


「ここに来たってことは息子のことでか?」


「はい」


 彼はため息をついた。


「君がいなくなった後の三年間、あいつは人が変わったかのように仕事に打ち込んでいたよ」


「そうだったんですね……」


 その三年間の河内さんのことを考えると、罪悪感で胸が痛む。


「そして、とうとう私は立場を失った」


 河内さんのお父さんは少し俯いていた。


「こんなことになるなら、あの時余計なことをしなければよかったと後悔しているよ」


 あの時、何も言われなかったら私はどうなっていたんだろう。

 そのまま河内さんと幸せになれていたのだろうか……。


「君はまた息子と関わっているのか」


「はい、私、彼と結婚しようと思ってます」


 あの日、この人と会った時も怖気づかず自分の気持ちを言った。

 今回は私からの挑戦状。


「そうか」


 彼は特に何も感じていないようだった。


「反対されないんですか……?」


「もう会社はあいつのものだ。立場は私の方が弱い。何も言うことはない」


 上とか下とか……

 私は河内さんの家族としての彼と話したいんだ。


「肩書は抜きにして、私はお伝えしたかったんです」


 彼はどこか遠くを見ていた。


「今更反対もないだろう。それに……あいつをここまで追い詰めたのは私だからな」


 河内さんのお父さんは立ち上がった。


「息子を幸せにしてやってくれ」


 それを告げて、彼は会議室から出て行った。


 その時、私の瞳から涙が一粒溢れた。

 嬉しいのに、切ない。

 複雑な心境だった。

 でも、ちゃんと伝えることができた。


 その後、私が会社のビルを出ると……

 やっぱり河内さんがいた。


「やっぱり来ていたな……」


「よくお分かりですね……」


 その後、車に引きずられるように乗せられた。


「なんで一人で行った」


 河内さんは怒っている。


「河内さんに言ったら絶対反対するじゃないですか!」


「当たり前だ!あの後お前いなくなっただろ!?」


 運転が荒くなる。


「でもこうしないと自分の中でちゃんと終われなかったんです!」


 あの逃避行の結末はこうしたかった。

 認められなくても、私の口で伝えたかった。


「で……どうだったんだよ」


「『息子を幸せにしてやってくれ』って言われました」


 河内さんは目を見開いた。


「そんなこと言ったのか……」


「はい、私も想定外の言葉に驚きました」


 河内さんはだんだん落ち着いてきた。


「だから、私は河内さんを幸せにしないといけないんです……」


 新たな決意表明。


「期待している」


 そう言った河内さんの表情はどこか穏やかだった。

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