表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/29

第27話 指輪

 やっと借金の返済が終わって、いつも河内さんに言っていた


『借金を返したい』


 それを言う必要がなくなった。

 私は借金を抱えた残念なOLじゃなく、普通のOLになることができた。

 やっとこの人と対等な関係になれた。

 それが心から嬉しかった。


 ここからがスタートと思ってすぐ、結婚というパスをすかさず河内さんは渡し、私はそのままそれを受け止めた。

 もしかして予想してた?


「河内さん、わかってたんですか?」


 フッと上から目線で微笑んでいる。


「ここにはるばる二人で来るということは、そういうことかと思っていた。そして、それが当たった場合はすぐに結婚のことを言うつもりでいた」


 流石隙がない。

 結婚か……。

 自分で返事をして実感が湧かない。


「よし、あそこに行こう」


 河内さんはまた車を発進して次の目的地に向かった。

 そこは……高級ジュエリーショップ。

 こんなところ、ただ雑誌で見るレベルの場所だった。

 なんの迷いもなく入った河内さんに店員がついた。


 キラキラしたシャンデリアに高級な内装、高いジュエリー、圧巻だった。

 そして、応対室でカタログを見せられた。


「優美はどれがいい?」


 ぼーっとカタログの指輪の値段を見ていた私に、河内さんが質問してきた。


「え!えーと……」


 そんな、こんなお金……もったいない!!

 その時、手をそっと握られた。


「余計なことを考えないで、好きだと思うデザインをただ言えばいい」


 私はカタログを見渡して、ピンクの宝石がついた可愛い指輪を選んだ。


「じゃあこれだな」


 その後、指輪のサイズを確認して、それを河内さんが注文した。


「ちょっと待ってて」


 その後、河内さんは店員とまた話していた。


 * * *


 家に帰った後、河内さんに抱きしめられた。


「長かった……」


「はい、待たせてごめんなさい」


 その幸せを二人でずっと感じていた。


「あ、これつけておいて」


 河内さんから渡されたのは、指輪だった。


「え……?」


「婚約指輪が届くまでこれをつけておけ」


 指輪を注文したのに、指輪をまた買ってた河内さん。

 婚約指輪の前に渡される指輪って何なの!?

 プレ婚約指輪??

 私はその指輪をはめられた。


「これで余計な虫がつかないな」


 河内さんは捕まえた獲物を逃すまいと必死な獣に見える。

 束縛と独占欲と執着と重い愛……

 息苦しい時もあるけど、私はこの人といると幸せなんだ。


「うちの両親は特に何も言いませんが、河内さんのご家族は、認めてくれませんよね……」


「認めなくてもいい。俺が認めてるんだ」


 そうだ、私たちの関係が認められなくても、この人が認めればそれでいいんだ。


 これは私たちの人生なんだ。


 私の不安は自信に変わった。


 ◇


 次の出勤日、私は指輪をつけて会社に行った。


 デスクに着く前にまた秋月さんと視線があった。

 胸が少しざわついたけど、私の心に迷いはなかった。

 何もなかったかのようにまた仕事をする。


 そして、お昼休憩に同じグループの先輩たちとご飯を食べる。


「あ、秋月さん会社辞めるみたいだよ」


 え……?


「えーーー!」


 もう一人の先輩が大きな声で不満を言う。


「モチベ下がる!!」


「次の上司変な人だったらすごい嫌なんだけど……」


「なんで辞めるんだろうね」


「離婚したから?よくわからないけど」


 その時、先輩たちの視線が私の指輪に向いた。


「え、藤田さん彼氏いるの!?」


「この指輪、雑誌で見たことあるんだけど……」


「すごい羨ましい」


 その後いろいろ詮索されたけど、適当に答えた。


 私はお昼を食べ終わった後、秋月さんの退職理由が気になって仕方なかった。

 でも、聞いてしまうとまた心がざわつくかもしれないから、このままよくわからないままにすることにした。


 その時——


「藤田さん」


 振り返ると秋月さんがいた。


「ちょっと話していい?」


 私はゆっくり頷いた。


 その後、私たちはフロアの片隅で窓の外の景色を見ていた。


「俺、会社辞めるんだ」


「知らなかったのでびっくりしました」


 やっぱり辞めるのか……。


「妻と離婚が成立した後に、もう辞めようと決めていた。でも、藤田さんが現れた時、かなり迷った」


 遠くを見る秋月さんの顔はどこか寂しそうだった。


「でもやっぱりここにいると、思い出に縛られるから、決心したんだ」


 秋月さんは私の指を見た。


「彼氏と結婚が決まったの?」


「はい。気持ちが固まったんです」


「そうか……」


 秋月さんは俯いていた。


「藤田さんのこと、ちょっと押してみたけど、全然動かなくて根負けした」


 ほんの少し、心が揺らいだのは自分では認めたくないけど、本当だ。

 でも河内さんと離れる気は全くなかった。


「次の職場は決まってるんですか?」


「地元の企業で働くよ」


 じゃあこの人と会うことはもうない。


「藤田さん、幸せになってね。それが俺からのお願い」


「はい……頑張ります」


 私は幸せになりたい。

 河内さんと一緒に。


「藤田さんの笑顔もっと見たかったな」


 秋月さんは私の顔を覗き込んだ。

 少しイタズラな笑顔。


「俺といると警戒してるからさ」


「すみません」


 恋とか関係なくこの人と仲良くなれれば、きっといい関係になれたかもしれない。


「……営業スマイルならいいですよ」


 私はラウンジで培った笑顔を秋月さんに見せた。


「ああ、やっぱり“さくら”さんだ。今度指名しよ」


 その時、二人で笑った。

 それは本当の笑顔だった。


 出会いと別れを繰り返して、私はだんだんと強くなっていく。

 私はもう迷わない。


 * * *


 その日、河内さんが仕事終わりに車で迎えに来てくれた。


「お仕事大丈夫なんですか?」


「今日は特に予定がなかったから問題ない」


 会社の社長が、他の会社の平社員を迎えに来ていると考えると申し訳なかった。


「あの男とはどうなった?」


 河内さんは少し心配そうな表情をしていた。


「しっかり終わらせてきました」


「……そうか」


 何か言いたそうだったけど、その後河内さんはこのことについては何も言わなかった。

 でも、家に帰った後、私を強く求めた。


「優美……愛してる」


「私もです」


 私たちの心は強く、固く結ばれた。

 もう二度と解けることがないように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ