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あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


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第22話  再スタート

「結婚しよう」


 突然の言葉に、私は頭が真っ白になった。

 まさか今言われるとは思っていなかった。


「……そんな急には」


 声が震えてしまう。


「返事は今じゃなくていい」


 河内さんは静かに言った。


「ちゃんと考えてくれ」


 頷くことしかできなかった。


 * * *


 その夜、私たちはホテルに泊まった。

 河内さんは私用の客室を取ってくれていた。


「優美」


 低い声が静かな室内に響く。


「今度は、逃げるな」


 真剣な瞳がまっすぐに射抜いてくる。


「誰にも邪魔はさせない。……それでも嫌なら諦める」


 諦める……?


「私がもし断ったら河内さん諦めるんですか……?」


 河内さんは目を背けた。


「仕方ないだろ……お前の人生でもあるんだ」


 前の河内さんなら、断るなんて絶対許さないはず。


「河内さん、変わりましたね」


「お前のせいだ」


 そのまま自分の部屋に帰ってしまった。

 大きなベッドに腰を下ろして考えた。


 私の人生……


 これから河内さんの元に戻って、一緒に暮らす。

 別の場所で仕事をしながら。


 一緒に歩んでいくことは決めたけど、結婚するとなると話は別だ。

 結婚は家族も関わってくる。


「社長と平社員の結婚……」


 河内さんの家族はどう思うだろう。

 少なくともお父さんは嫌がるはず。

 もう弊害はないはずなのに、頭の中で弊害を作ってしまう私の悪い癖。

 だって、やっぱりどう考えても不釣り合い。


 お風呂の中でぼーっとしていた。

 お風呂から出ようとしたらチャイムが聞こえた。

 バスローブを着てドアの穴を覗くと、河内さんが立っている。

 私はドアを開けた。


「どうしましたか?」


 河内さんはびっくりしていた。


「そんな格好で出てくるな!」


 私たちは急いで中に戻った。


「他の奴に見られたらどうする!?」


 とても動揺している。


「河内さんがいるから大丈夫かなって」


「油断しすぎだろ……」


 呆れていた。


「あの、それより、どうされたんですか?」


 河内さんの目が泳いでいる。


「明日の予定を伝えるついでにまた来ただけだ……でも」


 そっと抱き寄せられた。


「そんな姿を見るとただの男になる」


 今更恥ずかしくなって暑くなってきた。


「……ただの男の河内さんも素敵ですよ」


 見つめ合って、ゆっくり重なった唇が熱を帯びてゆく。


「煽ってくるな」


 バスローブは床に落ちた。


 素直な河内さんの気持ちに、私はいつも揺さぶられる。


「河内さんも私がびっくりすることばかりしてくるじゃないですか」


 優しく触れる感触が心地いい。


「俺がこういう男だと分かってるのに、いちいち動揺するな」


「河内さんがやることはスケールが違うんですよ」


 温かい。


「俺にとってはこれが普通だ」


 ゆっくりと一つになっていく。


 言葉が出なくなる。


「心も素直になれ」


 頭でいろいろ考えてても、本能で河内さんを求めている。


「河内さんが……欲しいです。もっと」


 重なり合う手と手が強く握られる。

 私はこの人に何もかも染められてしまった。

 もうきっと戻れない。


 ◇


 翌朝。


 ホテルをチェックアウトして、二人でアパートに向かうと、引っ越しのトラックが停まっていた。

 どんどん搬出される荷物。

 そのトラックを見送って、今度は空港に行った。


 二人で飛行機に乗り、北の大地を見下ろした。

 思い出を胸に私はまた旅立つ。

 その時、河内さんの手が私の手を包み込んだ。


 こんなに大切にされて、私は贅沢ものだ。


 * * *


 空港に降り立ち、河内さんのタワーマンションに向かった。


 三年ぶりに見たマンションは、都会の象徴のようだ。

 そして部屋の中に入った。

 三年前とあまり変わっていなくて、少し安心した。


「こっちだ」


 案内された部屋は何も置かれていなくて、綺麗に掃除がされていた。


「ここが今日からお前の部屋だ」


 窓の外に広がる都会の街並み。


「こんなところに住めるなんて……私には勿体ないです」


 その時、肩に手を置かれた。


「自信を持て。俺の心をここまで動かせた人間はお前が初めてだ」


 河内さんは別の部屋に行ってから、あのドレスを持ってきた。


「これが似合う女はそういない」


「ありがとうございます」


 河内さんがじっと見つめてきた。


「なんですか?」


「今日からここがお前の家だ」


 怪しげな笑み。


「はい!ここが今から私の本拠地です」


「優美は頼もしいな」


 荷物が届くのは明日。

 結婚の返事はまだできない。


 でも、ここから始めてみよう。

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