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あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


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第19話 繋がってた想い

 私たちを見た通行人が驚いて、チラチラと視線を送りながら通り過ぎていく。

 河内さんは私を離すと、スマホを取り出した。


「今夜ここに来い」


 画面に表示されたのは、この近辺の高級ホテルのホームページ。

 今この人と二人になるのは怖い。

 でも、ちゃんとまた話したい。


 私が俯くと――


「待っている」


 河内さんはそのまま背を向けて去っていく。


 今夜会うのは怖い。

 でも、また再び彼の姿を見ることができて、嬉しいと思う自分もいた。


 * * *


 アパートに帰った私は、できるだけフォーマルな服に着替えて家を出た。

 バスに揺られながら、胸の鼓動が止まらない。

 ホテルのロビーで待っていると、河内さんが現れた。


「ちゃんと来たな」


 私は小さく頷いた。

 気まずい沈黙の中、私は彼について客室に向かった。

 ドアが静かに閉まると、外の世界から完全に遮断されたような気がした。

 河内さんはソファに座り、隣を指した。


「ここに座れ」


 私は少し距離を置いて腰を下ろす。

 河内さんはウィスキーのボトルとグラスを持ってきて、私の前に置いた。


「注げ」


 久しぶりに感じる、あの日々。

 私はグラスにお酒を注いで差し出した。

 河内さんはそれを一気に飲み干す。

 そして静かに口を開いた。


「なぜあの日、消えた」


 来ると思っていた質問。

 ちゃんと言わないといけない。


「……限界だったんです」


 河内さんの表情が変わった。


「限界?」


「頑張ろうとしていました。でも、もうこれ以上は精神的に無理だって……あの日気づいてしまったんです」


 あんなに大切に想っていたのに。

 この人と一緒に歩む未来を切り開こうとしたのに。


「自分が壊れてしまうと思って……逃げました」


 暫く重い沈黙が続いた。


 河内さんの手が、私の髪に触れた。

 優しい手つきで。


「逃げて行ったくせに、毎月毎月金を振り込んできて……それが俺の唯一の支えだった」


「振込が来るたび、お前が無事でいることがわかって安心した」


 河内さんが私を見つめる。


「でも返済が終わるのが怖かった。繋がりが完全になくなってしまうから」


 河内さんは立ち上がって窓の外を見た。


「この三年間、俺はずっとお前の気持ちを考えようとしていた」


 胸が詰まった。


「部屋に残されたお前のドレスや着物を見るたび、あの時のお前の表情を思い出した」


 河内さんの横顔が、あの時より遠く感じる。


「なぜお前が俺から逃げたのか、ずっと考えていた」


 私の方を見た。


「あまり変わってなくて安心した」


 その優しい表情を見ると、胸が苦しくなった。


「ごめんなさい……」


「茶道も続けてるんだな。俺への未練か?」


 図星だった。


「俺が今日までどんな思いをしていたか、わかるか?」


 河内さんの声が震える。


「お前のことを恨んだよ。信じていたのに、突然いなくなって」


 私も苦しかった。

 でも、それを言う資格はない。


「でも……やっとわかった」


 河内さんが私の前に座った。


「俺がお前を追い詰めていたんだ」


 その言葉に、私は息を呑んだ。


「お前が限界だったって言葉を聞いて、やっと気づいた」


 河内さんの目に、深い後悔の色が浮かんだ。


「俺は自分の気持ちばかり押し付けて、お前の心の状態を見ていなかった」


 私の頬が、そっと包み込まれた。


「もう追い詰めない。今度は、お前の気持ちを一番に考える」


 河内さんの優しさに涙が溢れそうになった。


「でも……河内さんは私のこと、許してないですよね」


 河内さんが私を見つめる。


「お前を愛してるなら、お前が幸せでいることが一番大事だろ」


 河内さんは、会えなかった時間を埋めるかのように私を優しく抱きしめた。

 許してもらおうとは思ってない。


 ただ、これ以上もう傷つけたくなかった。

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