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あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


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第17話 裏切り

 朝、目を覚ますと隣に優美がいなかった。


「優美?」


 返事がない。

 浴室を確認する。いない。

 リビングにもどこにも。


 嫌な予感がした。

 電話をかけた。


『おかけになった電話番号は現在使われておりません……』


 無機質なアナウンス。

 まさか……。


 急いで服を着て、会社に向かった。


 * * *


「藤田優美という社員について聞きたい」


 人事部の社員は、パソコンを確認してから答えた。


「藤田さんは……一身上の都合により退職届を本日提出されています」


 血の気が引いた。


「いつ提出したんだ」


「今朝一番でした。ご本人が直接……」


 嘘だ。

 俺に何も言わずに、そんなこと……。

 廊下をふらふらと歩いていると、永瀬が心配そうに声をかけてきた。


「河内さん……大丈夫ですか?」


「永瀬……」


「聞きました。藤田さんのこと」


「知っていたのか!?」


 思わず声を荒げてしまう。


「いえ、知りませんでした。ただ……」


 永瀬は困った顔をした。


「あの子は、これがあなたにとって最善だと思ったんじゃないですか?」


 最善?

 俺から離れることが?

 胸の奥に鋭い針を刺されたような痛みが走った。


 * * *


 その足で社長室に向かった。

 ドアを乱暴に開ける。


「父さん!」


「何だ、騒々しい」


 父は書類に目を通したまま答えた。


「優美に何を言った」


「ああ、あの子のことか」


 父がようやく顔を上げる。


「彼女に何をしたんですか」


「私は何もしていない」


 父は静かに言った。


「あの子は賢い子だよ。自分で判断したのだろう」


 その一言で、頭の中が真っ白になった。

 俺に何も言わず勝手に未来を決めた。


「……裏切ったのか、優美」


 拳が震えている。

 信じていた。

 この関係はもう壊れないと。


「俺は……俺は何のために」


 父を睨み据えて鋭く言い放った。


「優美を俺から奪うなら、この会社ごと潰してやる」


 父の表情が変わった。

 でも、もう知ったことじゃない。


「たとえどこにいようが、必ず探し出す」


 俺の心が黒く染まってゆく。


 その日から、俺の人生は優美を探すことだけに集中した。

 会社の経営は手を抜かず続けた。むしろ業績を上げ続けた。

 でもそれは、優美を見つけるための資金と権力を得るためだった。


 * * *


 それから一ヶ月後、俺の口座に見覚えのない振込があった。

 その次の月もまた。


 優美だ。


「まだ……繋がっていてくれるのか」


 その瞬間、胸の奥で何かが崩れた。

 優美は俺から逃げたくせに、責任だけは果たそうとしている。

 それが俺には救いでもあり、同時に拷問でもあった。


 毎月決まった日に振り込まれる返済。

 それが優美の生存確認になった。

 でも同時に、この返済が終わったら完全に縁が切れてしまう恐怖も生まれた。


「絶対に見つけ出してやる」


 俺の執念は、日に日に深くなっていった。

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