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あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―  作者: 七転び八起き


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第15話 貫いた想い

「優美、二人でどこかで暮らさないか」


 雪に閉ざされた夜、突然河内さんに言われた言葉――。


「えっ……ど、どうしたんですか?」


 突然の言葉に戸惑いを隠せなかった。


「……冗談だ」


 そう言いながらも、河内さんの瞳は全く冗談に見えなかった。


「寝る」


 河内さんはそのまま私に背を向けて眠ってしまった。

 その夜、私は一睡もできなかった。


『二人でどこかで暮らさないか』

 冗談って言ったけど、絶対に違う。

 河内さんの表情は真剣だった。


 でも、どういう意味なんだろう……。


 * * *


 次の日には雪は止んで、私たちは目的地に無事たどり着き、河内さんは仕事を終えた。

 出張中、河内さんは夜の言葉についてそれ以上なにも説明もなく、曖昧なまま私たちは帰ってきた。

 空港に着いた後、河内さんは私を自宅まで送ってくれた。


「ここが優美の住んでいるところか」


「はい……お恥ずかしい限りです」


 借金返済の負担にならないような物件に住んでいる。


「色々心配だ」


 少し河内さんの表情が穏やかになった。


 まずい……喉の奥まで出かかっている。

 まだ帰りたくない。

 そう思ってしまった。

 私はそれをなんとか我慢した。


「送って頂きありがとうございます」


 私が助手席から降りようとした時、


「優美」


 振り返ったら、河内さんの唇が触れた。


「おやすみ」


 河内さんは去って行った。

 何を悩んでいるのだろう。

 いつか私に打ち明けてくれるのだろうか。


 唇に残った温もりに、なぜか胸が苦しくなった。


 * * *


 その日、河内さんは一日外出予定だった。

 私は資料整理をしていた。

 そんな夕方のことだった。


 経営企画室のドアがノックされた。


「はい」


 私がドアを開けると、秘書課の女性社員が立っていた。


「藤田さん。社長がお呼びです」


「え……?」


 血の気が引いた。

 社長……?なぜ私が……?


「今すぐ来てください」


 * * *


 社長室の扉の前で、私は深呼吸をした。

 手が震えている。

 ドアを恐る恐るノックした。


「はい」


 低い声が響いた。


「藤田です」


「入れ」


 ドアを開けた瞬間、重苦しい空気に包まれた。

 大きな机の奥に座るのは、鋭い眼差しを持つ男性。

 河内さんに似た顔立ちだけど、その目は冷徹で揺らぎがない。


「君が……藤田優美さんか」


「はい……」


 机の上に一枚の写真が置かれているのが見えた。

 それを見た瞬間、息が止まった。

 あの日、河内さんに送られてきた私たちの写真。

 どうして……この写真が……?

 まさか……これを河内さんに送ったのって……。


「借金を抱え、うちの会社の職員でありながら夜の店で働いていた。そして息子と恋人関係にある」


 社長の声は氷のように冷たかった。


「全部、知っている」


 全身に冷や汗が流れた。

 全部……知られてしまっている。

 全部見られていたんだ。

 たまに感じていた視線は気のせいじゃなかった。


「息子は将来この会社を背負う立場だ。君のような女性と付き合うのは息子の経歴に傷がつく」


 傷……。

 その言葉が胸に刺さった。


「君が息子のことを本当に想っているなら、どうするべきだと思う」


 その冷たい視線に心が挫けそうになる。


 でも私は決めたんだ。

 河内さんの気持ちを聞いたあの日、二人の未来を勝手に決めないと。

 私は顔を上げて、社長の目をまっすぐ見た。


「副社長の将来を決めるのは、彼自身です」


 社長の眉がピクリと動いた。


「そして、私の将来も、私が決めます」


 一瞬の沈黙が流れた。

 社長の目が細められる。


「……君の考えはわかった」


 社長はしばらく私を見つめていたが、やがて立ち上がった。


「もういい。下がれ」


「失礼いたします」


 社長室を出た瞬間、膝が震えた。

 でも胸の奥では、確かな何かが灯っていた。

 私は諦めない。


 * * *


 仕事の帰り、オフィスビルから出ようとすると河内さんから着信があった。


「お疲れ様です……どうされましたか?」


「優美、今すぐ俺の部屋に来い」


 なんとなく声のトーンがいつもより低い。


「何かあったんですか?」


「……父に会ったんだろう」


 やっぱり知っていた。


「はい……」


「すぐに来てくれ。話がある」


 電話が切れた。


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