おまけ ふたりの記憶
「昨日みたいなこと……昔もあったよね♪」
ゾーイは、花の化身のような満面の笑顔を浮かべながら……手のひらにフィンの温もりを感じながら……フィンに話し掛ける。
「ん? ん~~~!? あ!」
フィンは……記憶を探ってみるがその実、全く心当たりが無く……。
仕方ないので「あ!」トカなんトカ言って間を保ちつつ……ゾーイの笑顔からヒントを導きだそうとする。
だが……。
「あー……うん……。きっとあった!」
フィンのそのテキトーな返事に。
ゾーイの笑顔は曇天まっしぐら、ゲリラ豪雨よりも凶悪な顔でフィンに迫る。
「ちょっと! 本当に忘れてるの!? あの日も『聖域』に忍びこんで……」
そしてその実、ゾーイもそのいきさつの詳細までは覚えていない。そのくらい幼かった頃の記憶だ。
それでも、いくつかの場面は鮮明に覚えてる。
ふたりは聖域に忍びこんで……ゾーイは足をくじいて……。
日が暮れてしまい、家に戻ることも叶わず。
見つけた洞窟で夜通し、フィンはゾーイの傍らに付き添ってくれたのだ……。
ゾーイはその大切な記憶を回想して……またニコニコになった。
「そんなこと、あったかぁ?」
「あったよ! あったあった!」
ヒートアップするふたり。
そこに……神父の渋い咳払いが……。
周囲の人々の顔はにこやかだったが……。
その日の礼拝もまた、フィンとゾーイ、ともに忘れ得ぬ記憶として刻まれたのだった。
-Fin2-




