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悪魔を飼う  作者: azasel
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ALL BLACK

今まで私自身が身をもって感じてきたこと。

リアルに生々しく。

 十八時。窓の外はとっくに闇に染まっている。枕横に置いてあったスマホが鳴り、瞼を開けた。画面には嶺太と表示されている。嶺太は私の彼氏だ。

 「彩ちゃーん?おはよう。起きたー?二時間後迎えに行くねー。」

 一般人には遅めのモーニングコールで体を起こした。殺風景な部屋には似合わないハイテンポな音楽をスピーカーから流す。手元にあったタバコに火をつける。スピーカーから流れるサウンドは踊り狂っているのとは正反対に、吐き出す煙が密室の部屋に停滞する。

 タバコを吸い終わり浴室に足を運んだ。丁寧に体を洗う。服で隠れるところも隅々まで。甘ったるいボディーソープの香りがうざったらしくてたまらなくなる。浴室を出ると何も濁っていない綺麗な冷たい空気が全身を包む。何度も使い込んだバスタオルで体を拭き、派手に色づいたカラーコンタクトを入れて部屋に戻った。

 鏡に向かい、きめ細やかな肌を化粧水で作り、ファンデーションで上書きをする。長めの眉毛に濃いブラウンのアイシャドウ、太くはっきりと目立ったつり上がったアイライン、目尻長めのつけまつげ。仕上げにマットなチョコレート色の口紅。

 腰まである真っ黒で長い髪をくるくると巻く。クローゼットの中から、お尻が見えそうなくらい短いデニムのショートパンツ、胸元が大きくはだけたキャミソール、デニムのジップパーカーを選択し着替える。胸元にはだいぶ大きなタコの足のタトゥーが見える。耳元にはリサイクルショップ買ったビーツのヘッドホンが私の脳内を占領している。

 財布、スマホ、タバコ、リップをジャラジャラと様々なキーホルダーのついたハンドバッグに入れ、九センチもあるヒールを履いて部屋の全身鏡を見た。オールブラックファッションでコーディネートされた私は自信を持てる。

 三階にある私の部屋を出て玄関に向かう途中、母親がこっちを見て苛立ちを隠しもせず怒鳴っているように見えたがヘッドホンから流れるミュージックで何も聞こえずそのまま無視して玄関に向かった。二十歳にもなったのにまだ私を束縛しようとしてくる両親にはもう何も感情が湧いてこない。玄関には私の私物を置いてはいけないみたいなので、部屋で既に履いていたヒールのまま玄関のドアを開け闇の世界に飛び出した。

 

 今日が始まった。さあ、喰い散らかそう。


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