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感情

 「ユーリア!逃げろ!」


エリアスがそう叫んだとたん魔物は腕を宙に伸ばし、小さなブラックホールのようなものを出した。ユーリアは逃げる間もなくブラックホールに吸い込まれてしまった。魔物は一瞬エリアスの方を見たが、気に留めずに去っていった。残されたエリアスは絶望と、自分に対する嫌悪感でいっぱいだった。


(もっと早く魔物だって気づいていれば…もっと早くユーリアを止めていれば…もっと早く引き返していれば…ユーリアは助かったかもしれないのに…僕は、僕は何も出来なかった…)


エリアスは涙を拭って孤児院へ引き返した。早く、早くヒューバートに言わないと、ヒューバートならなにか知っているかもしれない……そんなわずかな希望を持って、エリアスは孤児院へ走った。


 その頃、残された4人は静寂に包まれていた。


「……胸騒ぎがします」


マルティナが静寂を破ったが、他の三人は黙ったままだった。三人も胸騒ぎがしていた。ユーリアとエリアスに何かあったのか、そんな事が頭をよぎったが、振り払おうと必死だった。


「二人に何か……」

「黙れ」

「はい」


四人はしばらく押し黙っていたが、マルティナがまた静寂を破った。


「エリアスが戻ってきましたよ、でもユーリアが……」


三人は一斉に顔をあげ、エリアスの方に向かった。息を切らしたエリアスにエルザは魔法で水を出して飲ませた。ある程度落ち着いた頃、エリアスは


「ヒューバートを呼んでくれ、二人きりにして欲しい」


と言った。ヒューバートと二人きりになってしばらく沈黙が続いたが、やがてヒューバートは心配そうに彼に尋ねた。


「エリアス、どうしたんじゃ、ユーリアがいないようだが、ユーリアに何かあったのか」

「ユーリアは、ユーリアは…ヒューバートがこの前話してた魔物に襲われて…それで…」

「お前は襲われなかったのか?」

「うん、あいつ、僕の方を見たけど気に留めないで歩いてった」

「そうか、それでユーリアだけが……」

「ごめん、僕がもっと早く気づいてたら止められたのに…ごめんなさい…」

「エリアス、今すべきなのはわしに謝る事ではないじゃろ?ユーリアを助ける事じゃ」

「じゃあ、ユーリアを助ける方法があるの…?」

「ある。じゃが、最終的に助かられるかどうかはユーリア次第じゃ。まず、その魔物を探しにいく。魔物が見つかったら、ブラックホールを出させるんじゃ。わしが囮になる。出来るだけ耐えるから、エリアスはユーリアに呼び掛けてくれ。エリアスは何もしなくたってブラックホールに吸い込まれないからな。その時はブラックホールになるべく近づくんじゃよ、そして、ユーリアがそこから出てみんなの元に帰りたいと思うまで呼び掛ける」

「わかった。ヒューバート、耐えられなくなったら言って。無理はしないで」

「ああ、もちろんじゃよ」


ヒューバートとエリアスは、他の仲間たちを孤児院に置いていくことにした。四人がブラックホールに吸い込まれてしまったら困るからだ。

 森に着いた二人は、魔物がいた所まで急いだ。案の定、もう魔物はそこにはいなかった。


「わしらで手分けして魔物を探そう、わしは右へ行く。お前は左へ行け」

「わかった。見つかったら何か合図を送って」

「よし、わかった」


ヒューバートは歩いている間、しばらく考察をしていた。


(エリアスは、魔物が自分の事を気に留めてなかったと言っておったな…エリアスが神だと気づいていたに違いない…とすると、1000年前に…もしそうだとすれば、いち早く…)


その時だった。


(……来る)


ヒューバートは後ろから何かが来る気配をいち早く察知し、身構えた。ゆっくりと後ろを振り向くと、そこにいたのはエリアスだった。


「エリアス?まだ分かれて少ししか経っていないのに、どうしたんじゃ?まさか、見つかったのか?」

「いや、向こうの道の途中にかなり太い木が倒れてて通れそうになかったよ。ヒューバートもまだ見つけてないんだね?」

「ああ、まだ見つかっておらんよ」

「なら一緒に探そっか?」

「そうじゃな、そうするか」


二人は周囲を気にしながら魔物を探したが、全然見つからない。


(おかしい…さっきから虫の音も風の音も聞こえない…それに…エリアスにとてつもない違和感を感じる…まさか…)


ヒューバートはエリアスと少しずつ距離をとりながら恐る恐る尋ねた。


「エリアス…本当に、君が行った道は途中で通れなくなっていたんじゃろうな…?」


二人の間に緊張が走った。辺りは気が狂いそうな程静かで、回りの木々が太陽光を遮っていて暗かった。しばらくの沈黙の後、エリアスはゆっくり口を開いた。


「……気づいちゃった?」

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