表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏唄  作者: 幼井 睦
1/1

祭囃子

─昭和32年 初夏



 夏の夕暮れ。空は、ほんのりと夜の色へと染まってゆく。


時折、吹く風は昼間のような熱さはなく、ただ、生ぬるい。


一人とぼとぼと歩く、でこぼこした畦道には、ヒョロリとした電柱が数本立っているだけで、人が通る気配はまるでない。

辺りはすでに暗く、見上げた空に月が浮かんでいた。


足下を見てみると、長く伸びた自分の影が夜の闇へと溶け込んでいる。

踏み出す自分の一歩先は、別世界へと繋がっているんじゃないのかとか、変な事を考えてしまう。


頼りの電柱は、夜道に薄気味悪いスポットライトをつくり、時々、ジジっと音を立てながら点いたり、消えたりを繰り返している。


それは逆に恐怖心を煽るだけで、何の役にも立たない。

はぁ…、と溜め息をつきながら、足早に、その場を立ち去る。


もちろん、いつもはこんな道を通ったりなんかしない。

今日は特別だった。

急いでいたから、近道をしたのだ。


なにせ今日は、年に一度の夏祭り。


もう少し進んで行くと、きっと祭囃子や、太鼓の音、人々の楽しげな声が、聞こえてくるだろう。


それに、遅刻した自分を待っている友人たちがいるはずだ。


だから私は急がなければならない。

少しでも早く、彼らに合いたいから。


遅刻した言い訳を考えながら、走りだす。


暗くて怖い、この道を。





残された宵闇に、寂しそうにひぐらしがカナカナ…と鳴いていた。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ