7 日常茶飯事
「ーまくん、そうまくん」
「え……せんぱい?」
「授業始まってる」
「え、あぁ」
前の席の子に慌てて起こされたらしい。前を見ると先生がこっちを見てる気がする。寝起きでピントが合わん。
「くさま、やっとお目覚めか?」
「え、あ、そうまっす」
「あぁそう。じゃあ授業始めるぞ、立って」
「あ、はい」
礼
ただ義務的に頭を下げる。
一体この敬意の欠片もない、礼の意義とはなんなのだろうか。
ふわぁあ
やったところで眠いもんは眠い。もう寝よっかな、歴史だし。
顔を伏せる。
「くさまぁ!」
反射的に身体を起き上がらせる。
「え、そうまです」
「おまえ寝る気だろ、起きろ。何しに学校来てんだ、くさま!」
「え、さぁ?あと、そうまっす」
周りがくすくす笑う。てか何回このくだりすんだ?いままでもだいぶやったぞ?あー寝たい。てかオレ理系行くつもりだし、二年からもう歴史とは縁切るし…………寝させてくれ……………………
ああ。ふわふわする。ぼんやりと人が2人いるのがわかって、何も考えずに向こうに歩いていく。誰だ。まぁいいか、そんなことは。ただ、このまま、ずっと…………………………
「ーーくさまぁ!」
「うぇっ」
肩がビクッとする。まさに夢と現実の狭間で起きる現象が、先生によって引き起こされた。
やべぇ、爆睡してた。すぐ近くから低い声が聞こえる。まずい、まずいぞ、これは。
「起きろっつったよな、くさまー?」
「そう、でし、たっけ……」
目を必死に逸らす。やべぇ。くさまに対して突っ込めない。今やったらやべぇ。何もしなくてもやべぇけど。
「テストまで時間がないんだ、こんなことで時間は使いたくないんだがな」
はぁ、と先生がわざとらしくため息をついた。
「……だったら怒んなきゃいいじゃん」
「あ?なんか言ったか?」
「いえ別に」
早口で否定する。これ以上悪化させたい訳じゃない。でも、なぁ。授業寝たぐらいで怒るなよ。な。まぁいいや。それがきっと世の中ってやつ。




