52 いや、まさか
「草間くん、結構待った?」
スニーカーの足元が見える。オレはスマホから顔を上げた。
思ったよりスポーティというかカジュアルというか、似合う服装をしていた。いつも下ろしている髪も結んでいる。
「いや、全然」
年末最後の活動日。河原さんと待ち合わせの日。
オレは午前だけ部活をして、北門でスマホを触りながら待っていた。
「制服?部活してたの?」
「うん」
「そっか。忙しいんだ。ごめんね」
「いや平気平気」
「そう?じゃあ……どこ食べに行く?」
「あー」
デートみたい。
オレのような奴が青春まがいなイベントに入っている今現在。同じような状況は先輩とよくあったが、先輩だからか、なぜか感覚が違う。
今、河原さんと一緒にいるほうが、世間一般のデートで、先輩とは……なんと言えばいいのか。先輩との関係性の違いから生まれる、自分の中でのちょっとした分類の差、だろうか。
そう、隣にいる河原さんを見て思った。
お昼は学校近くのモ○バーガーに行くことにした。歩いて10分ぐらいの距離。
「……なんか、変な感じ」
「普段学校でしか会わないもんな」
「ね」
彼女は一体どんなつもりで今日オレを誘ったんだろう。隣をバレない程度に見る。……先輩よりは背が高い気がする。
「草間くんはさ」
「ん、なに?」
「いや、後で話すね」
「え?あぁそう?」
「うん」
穏やかだ。
元々穏やかな雰囲気を纏ってはいるけど、いつも以上に……。とにかく、非日常感がすごい。
「…………」
「…………」
沈黙。
当たり前の結果ではある。オレとしては若干気まずいが、河原さんはというと平然と前を向いて歩いていた。
……うん。オレも気まずいとか感じるの、やめよう。
「……着いた」
「入ろう」
先陣を切って入ってく河原さんについていく。モ○バーガー、初めてだ。ちょっと緊張する。
「なんにする?」
どうやら機械で注文するスタイルらしい。まったく、デジタル化のスピードがおそろしい。オレ、バーコード決済覚えたの最近なんだけど。
「うーん、先どうぞ」
「あ、そう?じゃあ……ホットドッグ」
慣れた手つきで操作していく。JKはこういうとこ、頻繁に来るものなのか?オレも同い年ではあるんだけど。
……とにかく何頼もう。無難にハンバーガーがいいか。せっかくだから期間限定のやつにしよう。
注文を終え、少しすると料理ができたみたいだった。
端の席を確保したオレ達はゆっくり昼ご飯を堪能する。
「……ん、おいしーい」
「お、うまい」
「ね」
なんか違和感だと思ったら、いただきますって言ってない。心の中でそう呟きながらまた一口食べる。
半分ぐらいを食べ終わり、ごくっと飲み込んでから尋ねる。
「……ところでさ、話ってなんなの?」
「んーまぁいいか。どっから話そうかな」
キョロキョロしながら彼女は独り言のように呟いた。
どっから?
そんな話す内容あるほどオレ達仲良かったか?いやいや、そんなことはないはずだ。あったらオレ、記憶喪失じゃん。
「草間くん」
「ん?……はい」
空気が変わった。普通のJK、という感じから独特な雰囲気に変わる。気の所為かもしれないが、若干声が低くなったようにすら感じる。
オレは目を逸らさず、そのまま次の言葉を待った。
「付き合ってみない?」
「…………はっ?」
その瞳はどこか、世界を見下しているような、諦めているような。どうも告白とは程遠いものに思えた。
今回字数少なくてすみません……。また更新するので、気長にお待ちください!




