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天才の弟  作者:
46/81

46 テスト返し

 兄のものと思われる絵は、サービスカウンターで店員に渡してオレ達は帰ることにした。見たのはたったの数分だろうに、あの絵は鮮明に記憶に残っている。

「次のバス、何時だろ」

「そうですねぇ……って、あれバス来てるんじゃないですか?」

「えっまじだ。走ろ!」

 先輩はオレの服の袖を軽く引っ張り、走り出す。なんだ、その行動。かわいいって。

 オレも置いていかれないように走る。

 冷たい空気が顔の表面温度を下げていく。あぁ、めちゃくちゃ冬の空気だ。



 なんとか間に合ったが、めっちゃ息切れする。幸い、後ろから二番目の席が空いていて、オレ達は腰掛けた。

「あー疲れた」

「さすがに疲れたなぁ……」

 二人で息を吐き出す。

「……でも、楽しかった」

 先輩は意外だ、とでも言いたげに目を丸くし、笑った。

「私も楽しかった」

「……なら、よかったです」

 どう返すべきかわからなくてありきたりな返答しかできなかった。

 でも、いいや。この楽しいという感情がここにあるなら。きっと、なんでも。



「じゃ、また明日」

「はい、また明日。気をつけて帰ってくださいね」

「うん。尚も」

 先輩と別れて、また冷たい空気の外に出る。寒い。

 …………あっ。

 振り返ったときには電車がもう走り始めていた。まぁ、どっちみち時間は足りてなかっただろうけど。

 連絡先、知らないんだよなぁ。

 あんだけ時間共有してたのに、なんでか忘れてた。連絡先聞いて連絡をするかと言われたら、用事ないとできない気もするけど。

 まぁ、また今度聞こう。

「あーさむ……」



「テスト返すから机の上、片付けてー」

 タダヒトシの声で、みんながガチャガチャとあらゆるものを片付け始める。このテスト返しという儀式も、これでひとまず二学期は最後。もうここまで来ると、どうってことない、というか、よくわからん自信が出てくる。

 歴史……だけどまぁ、一周回って逆に良いとか。ワンチャンはある。

「くさま」

「あ、そうま、です」

 さらっとまた名前を間違えられる。もう訂正すんの、慣れてきた……というか、飽きてきた?そろそろちゃんと覚えてくれい。

 ちなみに点数は……おお。なかなか深刻。38点。全然良くなかったわ。ははは。

「おい草間、どうだった」

「小平。ほれ」

 テストを小平の方に向ける。同時に小平もこちらに自分のテストを向ける。41点。

「草間やべーじゃん!」

「いや、おまえも大概だろが。オレと3点しか変わらんぞ」

「いや、俺は40点の壁を越えたんだ……」

「化学以外、他の教科オレが勝ってるし」

「言うな、それを」

 ちなみにオレの他の教科は大体平均ちょい上ぐらいだ。化学はちょい下だったけど。

 まぁ、歴史はいいんだ。オレの興味に全く持って掠ってないんだから。これは諦めた方がいい。

 テストが返し終わり、オレと小平も席に着いた。

 改めて解答用紙を見る。酷ぇな、こりゃ。ピンだらけだ。欠点じゃなくてよかったー。

「くさまぁ!」

「え、起きてます起きてます」

 寝かけていたが嘘じゃない。ギリ起きてる。

 …………オレ、明らかに問題児じゃね?



「草間くん、テストどうだった?」

 前の席である河原さんがちょっとにやっとしながら聞いてきた。

「ん?38」

 オレは歴史に対してプライドとかいうものは持ち合わせてないから、そのまま包み隠さず言う。

「うわ深刻」

「欠点回避してるからそんなことはない」

「歴史嫌いなん?」

「うん」

「即答ー」

「大丈夫、今年で歴史と縁切りますので」

「あ、理系ですか」

 河原さんは嬉しそうにそう言った。もしかして河原さんも理系で、同じなのが嬉しいとか?オレの自意識過剰かもしれないが。

「うん。河原さんは?」

「私も理系ー」

「そっか」

「草間くんはてっきり美専行くのかと思ってた」

「え?行かない行かない」

 うちの学校には美術専門コースーー通称、美専がある。 文系に在籍しながら、2年生のときは世界史の時間に、3年生のときはあらゆる時間に美術の授業をする。デッサンとかいろいろ。よくは知らない。

 …………オレは入れないなって。

 今年は何人入るのだろうか。例年、4人ぐらいだけど。

「じゃ、来年も同じクラスかもね」

「だねぇ」

 …………クラス替えか。割とこのクラスは気に入っている。なんか、ほどほどに頑張ってる感じが。

 友達作りを一からしないかんのが嫌だ。めんどくさい。

 …………来年。先輩は3年生になるのか。

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