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天才の弟  作者:
44/81

44 フードコート

 フードコートに着くとレストラン街より賑わっていた。主に学生…………というか、ほぼうちの学校の生徒だ。そういえば今回のテスト、期間が他とズレてたんだったか。だったら尚更、うちの学校の生徒しかこの時間はいないか。その辺の一般人以外は。

「で、何食べます?」

「んーどうしよ」

「まぁ、迷いますね」

 ドーナツ、ポテト、ラーメン、たこ焼き、アイス…………いっぱいあんな。さすがにラーメンはガッツリ過ぎるな。

「何で悩んでます?」

「たこ焼き食べたいなって思ったんだけど、8個入りだよね、あれ」

「あーっぽいですね」

「ちょっとさすがに多いかなと思いまして」

「あ、じゃあたこ焼き、オレと分けます?」

「え、いいの?」

「あ、先輩がよかったらですけど」

「もちろん、もちろん。ありがとう」

「じゃ、早速行きますか」

 二人で順番待ちをする。前には二組待っている。どれくらいかかるだろうか。

「たこ焼きの味は?」

「なんでもいいすよ」

「合わせてもらってんだし、尚が決めてよ」

「……じゃ、一番普通のやつで」

 思ったより種類が多かったが、先輩も食べやすいものって考えると難しくなり、結局普通のにした。普通が何気に一番おいしかったりするし。

「ファイナルアンサー?」

「はい」

「おっけー」


 注文を終え、呼び出しベル的なものをもらった。

「どこにしようか」

「そうですねぇ……」

 辺りを見回す。どこにしようか迷うぐらいには空いている。

「あそこらへんにする?」

 先輩が片側が壁になってるテーブル席を指差す。

「そうですね」

「楽しみだね、たこ焼き」

「そうですね」

「尚、さっきからそうですね、しか言ってなくない?」

 オレ自身が思っていたことを先輩が言った。

「すみません、語彙がなくて」

「さいですか」

 そのテーブル席に腰掛け、リュックを置く。あー、一気に楽になる。中身はほぼないとはいえ、長い時間背負っていると何気に負担だったらしい。

「ちょっと疲れましたね」

「うん、今日はよく寝れそうだ」

「うん、オレも」

 なんとなくフードコートはうるさくて苦手なイメージだったけど、平日に来ると全然許容できるや。ゆっくりしてても怒られなさそうだし。


 ヴーッヴーッ


「「うわっ」」

 びっくりした。呼び出しベルのやつが突然鳴った。

「思ったより早かったですね。オレいってきます」

「あ、ありがとう」

 たこ焼き屋さんの方に行き、呼び出しベルを渡す。

「お待たせしました、たこ焼きです」

「ありがとうございます」

 わざわざトレーに入れて、渡してくれる。ありがたい。えーっと、箸、箸。

「え、草間くん?」

「え?あ、河原さん」

 すぐ横にたこ焼きを手にした河原さんがいた。まさか校外で会うとは。彼女の隣には友達と思しき女子がいる。以下、彼女の友達。あまり見覚えがない。他クラスの生徒だろうか。…………河原さんって何部だっけ。もう二学期が終わろうとしていると言うのに、未だ部活さえ知らないクラスメイトが多い。

「…………」

「…………」

 黙ったままでいると、彼女の友達は、先に席行ってるね、と去っていった。

 どうしようか。別にこれといって話すこともないんだが。

「草間くんは小平くんと来たの?」

「え、あ、いや……先輩と」

 先輩をそのまま先輩といって伝わるだろうか、と考えていると大分たどたどしくなってしまった。

「あーそうなんだ……」

「じゃ、えっと、テストお疲れ」

 そう言って立ち去ろうとすると、服の袖を握られた。

「あ……」

「えっと……どうかした?」

 たこ焼きが倒れないように気遣いながら、河原さんの方を向く。当の彼女は困惑したようにこちらを見ていた。

「あ、その……お箸!忘れてるよ」

 彼女はそう言い、立てられた箸を取ってくれた。

「そうだった。ありがと」

「ううん。じゃあ、またね」

「うん、また明日」

 河原さんと別れ、オレは席に戻った。

「おかえりー」

「ただいまです」

「……友達?」

「あ、はい。同じクラスの人です」

「そっか……あ、水取ってくるね」

 先輩が目の前からいなくなる。途端、なんだか手持ち無沙汰だ。

 なんとなく、先輩に付けてもらったクマの小さいぬいぐるみを手に取る。かわいい。

 背もたれに寄りかかると、足元に大きめの封筒が落ちているのが見えた。なんだこれ。

 拾い、興味本位で軽く中を覗く。これは、持ち主に心当たりがあるかもしれないから、その確認。そう頭の中で言い訳しながら。


「はっ?」


 全身の毛という毛が逆立つ。

 その中に入っていたのは紙切れ一枚だった。でも、ただの紙切れじゃない。


 画面いっぱいに目が描かれていた。


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