3 尚
「草間くんお昼一緒どう?」「草間くん部活ついてっていい?」「草間くん。あ、トイレ?」「明日暇?草間くん」「草間くん」「草間くん」「草間くん」「草間くん」……………………………………………………………………
「あっのー、先輩?」
「なんだい?」
「正直言って迷惑です。お帰りください」
「おぉー」
「えぇ?」
なぜか先輩は感心したようにわらう。
「君は正直だねぇ……」
「……どうも」
ははっ、と先輩はまた笑う。その様子に寂しさは感じられない。
「良いと思う。自分の気持ち正直に言えるのは強いよ?」
「そうすか、ね」
あれ。オレなんの話してたんだっけ。
「じゃあ頃合い見ながら……う〜ん一日一回?」
「……多くないすか」
「部活のときだけ、的な」
「だったらまぁ……」
「おっけー。部活てあれ?美術室?」
「いや……自由なんで外とか廊下とか」
けど、最近寒いんだよなあ……。やっぱ美術室のがいいか?
「え、すご画家みたい」
先輩にしては珍しく目を丸くしている。得も言われぬ感情になる。初めて得も言われぬ、とか思ったかも。
「じゃあさ、放課後掃除終わったら行くから待ってて」
「……行くって、オレの教室に?」
「迷惑?」
「いや……ヘンな噂立てられても知りませんよ」
「いいんだよ私は、ってやさしーね草間くん」
「…………その『草間くん』ての辞めてもらえませんかね」
ずっと引っかかっていた。なんかなぁ。思い出すんだよなぁ。
「え?じゃあ尚?」
「まさかのいきなり下の名前」
「え?違うの?」
「違うでしょ」
なんか感覚が違う……。けど、それが逆に楽しいと思ってしまった自分に驚く。
「まあいいや、それで」
「そ?じゃあまた放課後ー」
「うい」
ようやく静かになる。そして自分の口角が上がっていることに驚いた。オレ、いつもどんな顔してたっけ。