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天才の弟  作者:
27/81

27 いまを生きてる

「先輩ってしまでん?」

「え、あー」

 片付けを済ませ、オレたちは5階から階段を降りている。ちなみに、しまでんというのはローカル電車だ。うちの学校から、しまでん、JR、どちらの駅も徒歩10分以内で着く。

「チャリっすか」

「いや……JR」

 先輩は言いづらそうに喋る。なんか、いたずらがバレて焦ってる子どものような表情をしている。なぜ。

「え、JR?なんすか。一緒です」

 少し驚く。というのも周りにJR民が少ないからだ。ことでんのほうが学校から近いせいだろう。あとは乗り換えの駅が1本先にあるから。

「あーうん、知ってる……てかなんで?」

 なんで知ってんの?その前に答えるか。

「ずっと何で学校来てんだろうって疑問で。聞こうと思ってもタイミングが……」

「なるほど」

 最後まで言い切らなくても納得してくれた。余計な説明しなくていいの、ありがたい。

「そっちこそなんで知ってるんすか」

「朝ちょくちょく見かけるから」

「へぇ?ちなみにどっち方面すか?」

「……下り」

「一緒じゃないすか」

「うん、まぁ……」

 今の先輩はいつになく歯切れが悪い。つーか、目が合わない。

 なんで言わなかったんだろう。言う必要がないと思ったのかもしれないが。

 一階に着く。JRなら向かう方角は同じだ。

「じゃあ一緒に……ってなんでそんな顔してんすか」

 先輩を見ると嫌そうな顔とはちょっと違う。そうだな、困惑した顔、というのが一番合うだろうか。そんな顔をしていた。

「いや、えっと……」

「あ…………もしかして帰りも一緒が嫌だったからーー」

「違う!そうじゃなくて……」

 珍しく先輩から大きな声が出た。オレは口を噤む。

「………………」

「帰りまで一緒にいたら、なんか、申し訳ないっていうか……言ったら色々気ぃ、使いそうだなって……」

「ははっ」

 思わず笑いが漏れた。それを、は?とでも言いたげな顔でこっちを見る先輩。

「え。なんで」

「先輩ってへんなとこ、気にするよね。てか今さらでしょ。散々追いかけてきてたのに」

 あれはいつだったか…………いや、そんな昔じゃねぇな。

「……たしかに」

「でしょう」

 先輩は若干下を向いて考えてる。まつげ、長いな。

「つーことで、一緒にかえろ、先輩!」

「うん……って、えっ?」

 先輩の手首を握って走り出す。あーリュックが左右に揺れる。まじで走りづら。

「な、なんで走んの?」

「走ったほうが一瞬でしょう?」

「なに、その理論!」

「はははっ」

 オレはきっとこの時、すごく幸せだった。なんのしがらみからも逃れて、ただ、いまを生きてるって。そんな感じ。

 友人でも恋人でもない。そんな曖昧な関係が逆に心地よかったのだろうか。

2話編集しました。大して支障はないですが、気になる方は、見てください。

しまでん、は架空のローカル電車です。

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