2 焦燥感
特に思い入れがある訳ではないけど、唐突に聴きたくなる曲がある。なんでだろう。意味のない疑問が頭をかすめ、消えていく。
あれ、なに考えてたっけ。まぁいいや。
スマホで『大学』と検索する。……エリアを、偏差値を検索?そんなのが無いから、大学なんて曖昧に検索してんじゃん。もういいや。スマホをベットの方に投げる。ゴトッ。あ、ごめんよ、壁。悪気は無いんだ。
そういやあの先輩、何だったんだろう。名前はたしか……忘れた。なんだっけ。てかさ、おかしくない?このタイミングで、絵に惚れましたー、なんてさ。飾られ始めたのは、文化祭が終わったあとで、しかもその場所は、誰もが通る廊下だぞ?気づかないはずない。……でもなぁ、あの先輩自体おかしかったしな。はは。わっかんねー。
理由も無く、ぼんやりと腕を天井に伸ばす。
届かない。当たり前か。オレの腕長くねーもんな。なんか非現実的なこと起きないかなぁ。田舎なせいで派手な事件なんか起きようがないし。せいぜい、宴会してたおっさんがどーたらこーたらで、パトカーがきて、え、なに。何があったん?てなるだけ。おもろ。いや、おもんないわ。なに言ってんだオレ。いや言ってはない。まあ、そんなんどうでもよくて。
…………あー。
突然焦燥感に駆られる。何にあせってんだろ。逃げたい。何から?知らない遠くに行きたい。どこに?そんな度胸ねーくせに。オレには『石橋を叩いて渡る』そのコトバこそしっくりくる。安全に整備された道しか歩いてこなかったんだから。キレイなレールを歩いて間違いかけて結局戻った、みたいな。なんなんだろうな、オレは。
「……ははっ」
乾いた笑いが漏れた。