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天才の弟  作者:
12/81

12 勘違い

「尚も一緒にしない?」

 自習。勉強。テストはまだちょっと先。5時20分。電車は40分。その後は11分。うん、やるか。

「しましょうか」

「いえーい」

「あ、ちょっと待って。教室に4step置いてる」

 オレはさっき閉めたばかりの教室の鍵を開ける。ちょっと早足で自分の机に向かう。あ、あったあった。また鍵を閉める。

「おーけーです」

「じゃあ、鍵だけ持っていくか」

「はい」

 リュックは教室前のイス兼棚に置き、4階から2階の職員室に向かう。

「ラウンジでするんでいいよね」

「はい。全然人気なかったし」

 ラウンジというのは、教室の近くにある勉強スペースだ。正直ほとんど使ったことがない。

「やっぱまだ1年だからかなぁ」

「ん?何がですか」

「いや、ラウンジ2年のところは普段から半分ぐらい埋まってるからさ」

「あーそうなんですね…………確かにもう10月後半だし」

「話振っておきながらだけど、やめてくれ…………」

「ははは」

 …………そうだよな。先輩はもうすぐ受験生なんだ。

 なんだかんだ一緒にいる時間が多くて、突然いなくなったら寂しいだろうな、と漠然と思った。オレは先輩のこと、ほとんど知らないくせに。名前すら今日まで認識していなかったくせに。

「尚?職員室だよー?」

「え、あ」

 気づいたら職員室に着いていた。ぱらぱらと先生の頭が見える。

「あー鍵返してきます」

「いってらっしゃーい」

 スライド式の扉を開け、中に入る。

「しつれーしまーす」

 誰もこちらを見ない。じろじろ見られるよりは全然いいんだけど、許可なく入った感じもなんか気まずい。えーっと1年2組、1年2組……あった。はよ帰ろ。

「しつれーしました」

「おかえり」

「ただいまです」

 隣に並んで歩き出す。前から人が歩いてくる。ちらっと見るが知らない人だ。知らない人と目が合ったときが一番気まずいよなぁ。まぁ関わること基本ないからいいけど。

「おつかれー」

 すぐ隣から声がしてびっくりした。一瞬混乱したが、あれか。先輩、その人と知り合いなのか。

「あ、え、おつかれー……」

 顔を上げて見ると、その人は困惑したようにオレと先輩を交互に見ている。いいのか?説明しなくて。

 先輩の方を見ると、その人に笑いかけて通り過ぎる。オレもなんとなく会釈して、先輩に並ぶ。

「いいんですか」

「何が?」

「いや……さっきの、勘違いされてません?」

「あー大丈夫でしょ。聞かれたらちゃんと言っとく…………けど、あれか。尚、好きな人とかいる?」

「え?いやいませんけど」

「勘違いされてもいい?」

 なんだ、その言い方は。いや、先輩のことだ。そういうことでもない気がする。

「まぁ、大丈夫です」

「ならほっとこー」

 先輩は視線を逸らし、オレの先に行く。腕を上げ、伸びをする。

 割とテキトーなんだ。まぁオレも真面目すぎるよりか、全然いいけど。

 そういえばこんな会話したことある気がする。なんだっけ………… 


『じゃあさ、放課後掃除終わったら行くから待ってて』

『……行くって、オレの教室に?』

『迷惑?』

『いや……ヘンな噂立てられても知りませんよ』

『いいんだよ私は、ってやさしーね草間くん』


 そうだ、まだ先輩が頻繁に来てたときだ。今でも毎日来てるけど。

「あ、これあげる」

 先輩の声で我に返った。なんだ?とりあえず手を出す。

「なんすかこれ?」

 硬い。…………磁石?

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