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天才の弟  作者:
10/81

10 あなたの名前は

「お名前、なんでしたっけ?」

「…………」

 先輩は驚いたようで、ただでさえ大きな瞳を見開く。しばらく固まった後、先輩の肩は震え始めた。

 ん?なんだその顔は。口を引き結び、力を入れているのがわかる。何かを堪えるように、オレの、その先を見ているように見える。…………まさか。

「えっと……真剣なんですけど」

「うん……あははっははっ。やばい。あははっ」

 堪えられない、というようにめちゃくちゃに笑う。…………なんで。

「な、何がそんなおもしろい……」

「え?何がって……ふふっ。あははっ」

「いや、笑いすぎですよ」

 何がおもしろいのかわからないのに、先輩が笑っているのを見ると思わず笑ってしまう。真顔ができない。

「尚の必死な顔の理由が、こんなくだらんことかって思うと……ふふっ」

 まだ笑ってる。まじか。オレ、そんな必死な顔してたか?

「だってさ、尚。こんな顔してたんだもん」

 そう言って先輩は自分の眉毛に人差し指を当てて、ハの字を作る。犬みてぇ。ていうか。

「オレ、そんな顔してませんて」

「してた!まじでしてた」

 また思い出したのか、笑い出す先輩。

「深呼吸しましょ、深呼吸。吸ってー吐いてー」

「めちゃくちゃ棒読みじゃん」

 先輩は律儀に深呼吸した後にそう言った。やっと笑いが収まってきたようだ。よかった。

「尚のせいで、腹筋筋肉痛なるよ」

「よかったですね。明日には割れてるかもしれません」

「いや割れんって」

 ナイスツッコミ、と心の中で呟く。

「で、お名前は?」

「あぁそうだった。じゃあ改めまして、神原依です」 

 にやにやした表情のまま、先輩は自己紹介する。かんばらより、か。

「かんばらって神の原?」

「そうそう。依は依存の依、ね」

 神原依。

「なんか、かっこいい苗字だ」

「え?そう?」

「自分的には」

「そうか……羨ましいだろう」

 先輩はにやっと笑って見せる。けど。

「なんか……今更感が否めない」 

「ははは。だよねぇ」

 すぐ笑う。笑顔がデフォルトみたいだ。

「まぁ、とりあえず、名前たぶん、覚えました」

「たぶん……まぁそれでいいや」

 さっき笑いすぎたせいか、先輩は目元を拭う。

「じゃあ仕切り直して同級生ごっこするか」

「同級生ごっこって長いな。まあいいか」

「うん。…………じゃあ、今日はなんかおもしろいことあった?」

「……おもしろいこと……?」

「うん。なんかどうでもいいようなこと」

「うーん……」

 先輩は簡単に言うけど、そういう類の質問が一番難しくないか?おもしろいこと、おもしろいこと、おもしろいこと、おもしろい……。

「あ」

「お?」

「おもしろいかわかんないですけど」

「あ、敬語」

「ああ。おもしろいか、わからんけど?」

「うんうん」

 敬語外すと違和感半端ねえ。普段からまともには敬語使ってる訳でもないけども。

「えっと、今日、寝た」

 おい、語彙力。


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