1 出会い
初めての小説投稿です。読みにくいかもしれませんが、よろしくおねがいします。
「あ、ねぇねぇ。あの絵って確かさぁ」
「え?」
「普通にうまい絵だよね、うますぎてわからんけど」
「それが!普通じゃなくってさあ」
「ん?」
「はぁ?」
「画家だったんだよ、アレ描いたの。名前はーー」
「××××」
その絵の前には一人の少年がいた。
「あ、すげー」
「…………」
「どうしたん?」
父さんの声に母さんが応える。
「見て。うちと同じ齢」
「…………」
パンをかじりながら目だけテレビに向ける。ほんまや。家族の年齢はっきり知らんけど。
『…●●の○○□□さんら家族はアパートに住んでおり、先週の日曜日父親と母親は死亡、高校生の息子は意識がある状態で搬送され……』
「へー」
時間差で母さんが返事をする。
……朝からよくテレビ見て、会話できるよな。朝のテレビは耳に響いてつらい。会話なんかしたら、「機嫌悪いん?」って言われるぐらいキツイ。つーか情報量多すぎ。マジやめてほしい。言わんけど、さすがに。
食パンを口に詰め込む。時間やべー。
歯磨きしながら定期をポケットに突っ込む。
……髪はねてる。まーいっか。
「…………いってきます」
「あーいってらっしゃい」
朝は、いってきます、しか言わない。
「はよー草間」
「おー」
チャリこいで電車に揺られれば、いや列車か。JRやし。まあ、そんな感じで平常運転になる。眠いけど。
「草間草間」
「んぁ?」
「眠そうだな、おい。ま、いーや。▲▲彼氏出来たってよ」
「……誰」
「……おまえ、こないだ話してたやん」
「名前覚えてない」
「…………」
……あれ、おかしなこと言ったか?
あんまり女子という人種に興味がない。って友達とかつて告白してきてくれた人に言ったら、わかりやすく引かれた。
「おまえ、どんな奴なら興味わくんだよ」
ケラケラ笑う小平。
「……さぁな」
オレにだってわからない。むしろ教えてほしいくらいだ。
「小平ってーー」
好きな奴いんの?って言おうとしたとき、
「草間尚!」
「……は?」
「えっ」
誰。ほんまに誰。
廊下から覗き込む彼女にまったくもって、見覚えがない。
「話がある。来て!」
教室がざわついた。
「え、美人」「知り合い?」「え、え、え、告白?」「先輩から?え?まじ?」「え、なんでアイツが?」なんか若干見下されてる感あるな、誰だっけな。
すぐそこの小平は口が半開きだ。
「え、ダレダヨ、ソウマ。ウラギリカ」
壊れてやがる。てかこっちがききたい。
まわりの視線を感じながら、とりあえず教室を出た。
「…………あのー、貴方様のこと存じ上げないんですが?」
「ふは」
「?」
「いやーごめんごめん。私は神原依。てかあんた変わってるでしょ!やばー」
ケラケラ笑う……えーと、先輩?
「えと用件は……?」
「んーなんだと思う?」
なんだ、それ。あーっと、んー……。
「じゃあ、一目惚れ」
誰かが言ってた告白を若干いじって言ってみる。わかんねーからしょうがない。
「あーあながちまちがってない?」
……え……。まじで告白なのか?
気づけば廊下に飾られた美術部の絵の前に来ていた。オレの絵もある。
「私はね、あんたの、草間尚の絵に惚れたんだよ」
その表情は、夜の静けさに似ていた。
なんと言えばいいのか、オレの絵に惚れるなんてありえない?画家の絵が、天才の絵があるんだから。喜ぶな。見知らぬ人にこんなことを言われたからって。
「繊細で優しくて淡い色使いで、寂しさと、冷酷さを持っていて」
あぁこの先の言葉がわかる気がする。
「すごく」
彼女は人差し指をこちらに向けて、薄く笑う。
「……」
『客観的』
「上手に本音を隠している」
彼女は口角はあげたまま、腕を組む。
……それはどういうことだろうか。今までにない言い回しだ。
「そんなに間違いじゃないでしょう?」
「…………」
否定はしない。
「私は、感じるのが得意なんだ」
肩につかないぐらいの髪をいじりながら、人の感情の機微とか視線の意味とか。先輩は続けて言う。
「ーー君の絵も」
にっこり笑う。その目は……なぜだか寂しそうに見えた。
「結局先輩は何を言いたいんですか。目的は?」
「そうだねぇ……私は何を言いたいんだろうか」
「…………」
何なんだこの人は。この人の方がよっぽど変わり者だろう。
「強いて言うならば、私は君という存在を確かめたかったのだろうね」
………………はあ?この人は何をいってるんだ?まじでヤバい奴かも。でもなぜか嫌な感じがしない。
「今日話して一層、君に興味もったよ。また来る」
そう言うと、軽く手をあげて去っていく。ため息をつく。なんでこんなことに……。
振り返って自分の絵を見る。自分で言うのもアレだけど、美術部の中では結構上手いほうだ。先輩が言ってたように繊細で優しくて淡い。寂しさと冷酷さ。何ひとつ間違ってない。絵に勝手に感情が入り込んでいる。アイツは……いや、いいや。
オレの絵は『作品』に過ぎないのだから。
お読みいただき、ありがとうございます。1話1話の字数は多くないですが、ちょこちょこと連載していきたいと思います。よければ、よろしくおねがいします。