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天才の弟  作者:
1/71

1 出会い

初めての小説投稿です。読みにくいかもしれませんが、よろしくおねがいします。

「あ、ねぇねぇ。あの絵って確かさぁ」

「え?」

「普通にうまい絵だよね、うますぎてわからんけど」

「それが!普通じゃなくってさあ」

「ん?」

「はぁ?」

「画家だったんだよ、アレ描いたの。名前はーー」


「××××」


 その絵の前には一人の少年がいた。


「あ、すげー」

「…………」

「どうしたん?」

 父さんの声に母さんが応える。

「見て。うちと同じ齢」

「…………」

 パンをかじりながら目だけテレビに向ける。ほんまや。家族の年齢はっきり知らんけど。

『…●●の○○□□さんら家族はアパートに住んでおり、先週の日曜日父親と母親は死亡、高校生の息子は意識がある状態で搬送され……』

「へー」

 時間差で母さんが返事をする。

 ……朝からよくテレビ見て、会話できるよな。朝のテレビは耳に響いてつらい。会話なんかしたら、「機嫌悪いん?」って言われるぐらいキツイ。つーか情報量多すぎ。マジやめてほしい。言わんけど、さすがに。

 食パンを口に詰め込む。時間やべー。

 歯磨きしながら定期をポケットに突っ込む。

 ……髪はねてる。まーいっか。

「…………いってきます」

「あーいってらっしゃい」

 朝は、いってきます、しか言わない。


「はよー草間そうま

「おー」

 チャリこいで電車に揺られれば、いや列車か。JRやし。まあ、そんな感じで平常運転になる。眠いけど。

「草間草間」

「んぁ?」

「眠そうだな、おい。ま、いーや。▲▲彼氏出来たってよ」

「……誰」

「……おまえ、こないだ話してたやん」

「名前覚えてない」

「…………」

 ……あれ、おかしなこと言ったか?

 あんまり女子という人種に興味がない。って友達とかつて告白してきてくれた人に言ったら、わかりやすく引かれた。

「おまえ、どんな奴なら興味わくんだよ」

 ケラケラ笑う小平こだいら

「……さぁな」

 オレにだってわからない。むしろ教えてほしいくらいだ。

「小平ってーー」

 好きな奴いんの?って言おうとしたとき、

草間尚そうまひさし!」

「……は?」

「えっ」

 誰。ほんまに誰。

 廊下から覗き込む彼女にまったくもって、見覚えがない。

「話がある。来て!」

 教室がざわついた。

「え、美人」「知り合い?」「え、え、え、告白?」「先輩から?え?まじ?」「え、なんでアイツが?」なんか若干見下されてる感あるな、誰だっけな。

 すぐそこの小平は口が半開きだ。

「え、ダレダヨ、ソウマ。ウラギリカ」

 壊れてやがる。てかこっちがききたい。

 まわりの視線を感じながら、とりあえず教室を出た。


「…………あのー、貴方様のこと存じ上げないんですが?」

「ふは」

「?」

「いやーごめんごめん。私は神原依かんばらより。てかあんた変わってるでしょ!やばー」

 ケラケラ笑う……えーと、先輩?

「えと用件は……?」

「んーなんだと思う?」

 なんだ、それ。あーっと、んー……。

「じゃあ、一目惚れ」

 誰かが言ってた告白を若干いじって言ってみる。わかんねーからしょうがない。

「あーあながちまちがってない?」

 ……え……。まじで告白なのか?

 気づけば廊下に飾られた美術部の絵の前に来ていた。オレの絵もある。

「私はね、あんたの、草間尚の絵に惚れたんだよ」

 その表情は、夜の静けさに似ていた。

 なんと言えばいいのか、オレの絵に惚れるなんてありえない?画家の絵が、天才の絵があるんだから。喜ぶな。見知らぬ人にこんなことを言われたからって。

「繊細で優しくて淡い色使いで、寂しさと、冷酷さを持っていて」

 あぁこの先の言葉がわかる気がする。

「すごく」

 彼女は人差し指をこちらに向けて、薄く笑う。 

「……」

『客観的』 

「上手に本音を隠している」

 彼女は口角はあげたまま、腕を組む。

 ……それはどういうことだろうか。今までにない言い回しだ。

「そんなに間違いじゃないでしょう?」

「…………」

 否定はしない。

「私は、感じるのが得意なんだ」

 肩につかないぐらいの髪をいじりながら、人の感情の機微とか視線の意味とか。先輩は続けて言う。

「ーー君の絵も」

 にっこり笑う。その目は……なぜだか寂しそうに見えた。

「結局先輩は何を言いたいんですか。目的は?」

「そうだねぇ……私は何を言いたいんだろうか」

「…………」

 何なんだこの人は。この人の方がよっぽど変わり者だろう。

「強いて言うならば、私は君という存在を確かめたかったのだろうね」

 ………………はあ?この人は何をいってるんだ?まじでヤバい奴かも。でもなぜか嫌な感じがしない。

「今日話して一層、君に興味もったよ。また来る」

 そう言うと、軽く手をあげて去っていく。ため息をつく。なんでこんなことに……。

 振り返って自分の絵を見る。自分で言うのもアレだけど、美術部の中では結構上手いほうだ。先輩が言ってたように繊細で優しくて淡い。寂しさと冷酷さ。何ひとつ間違ってない。絵に勝手に感情が入り込んでいる。アイツは……いや、いいや。


 オレの絵は『作品』に過ぎないのだから。


お読みいただき、ありがとうございます。1話1話の字数は多くないですが、ちょこちょこと連載していきたいと思います。よければ、よろしくおねがいします。

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